第20話「歓喜」
翌日、決勝。
5番手グリッドから前の景色を見る。
そこにはレッドブル無限や、ダンデライアンなどのスーパーフォーミュラの強豪が集まっている。
「俺達もハマったらこんなにいいところからスタートできるのか。この調子が維持できたら…絶対楽しい。」
レッドシグナルが一つずつ灯っていく。
5つ灯って
ブラックアウト。
今まで経験したことのないような順位からのスタート。
目の前には萩原。
見慣れた選手を見て、安心を覚える。
「安心しちゃだめだよな。前のやつら全部抜く勢いだ。」
「ここだぁ!」萩原のイン側に飛び込む。
「そんなこと想定できてる。」そう言っているようにイン側を塞いでくる。
「だめか〜。じゃあ、タイヤ交換しちゃおうかな。」
「監督、ピット入ります!準備お願いします!」
『了解、準備できてる。』
アンダーカットというライバルより先にタイヤを新品にし、新品タイヤでのペースアップを狙う戦略。
逆に限界までタイヤを使ってタイヤを交換するオーバーカットもある。
『OK!タイヤの準備OK!フロントウイングは大丈夫?』
「ぶつかっていないので大丈夫だと思います。」
『了解、了解。』
ピットボックスに滑り込む。
マシンがジャッキアップする。
タイヤが交換され、マシンが地面と接地する。
瞬発的に発進する。
『作業は無事に終わりました!あとは松下くん頑張って!』
復帰時の順位
10号車 杏堂 7位
31号車 松下 6位
『今松下くんの方がペースはいいから杏堂くんに譲らなくて大丈夫です。』
「了解、了解」
前にはセルモの根岸。追い抜けば5位。
今走っている順位でも最高順位だが、一つでも上の順位を目指す。
「ダンロップシケインで抜けるか…?やるしかない!」
ジリジリとOTSで差を詰める。
運命のダンロップシケイン。
富士名物のオーバーテイクスポットの一つ。
ハードブレーキングが要求されるコーナー。
九州大会でやった過ちをまた起こすかもしれない。
「えぇい!なんで怖気付いてるんだ!いっちまえ!」
根岸のイン側に勢いよくマシンを動かす。
コンマ数秒ブレーキのタイミングを遅らせる。
これにより順位アップ。5位。
ホームストレートに戻って来る。
ミラーを確認すると根岸がピットに入っていった。イレギュラーなタイミングだ。
「後ろの根岸は?」
『今、タイヤがスローパンクチャーしてるそうで、緊急ピットです。』
スローパンクチャーとは、通常のパンクなどと違ってジワジワと空気が抜けていく。少しずつマシンのパフォーマンスが落ちていく厄介なものだ。
『これでファイナルラップです。あと1周、頑張って』
ついにファイナルラップ。この周5位を守りきれば過去最高位を獲得できる。
「後ろは…TOM'Sか。萩原か?抑えきってやる。」
距離を詰めてくるTOM'Sを抑え込みながら1周を走り切り、フィニッシュラインへ。
フィニッシュラインを通過する。
『ポジション5、ポジション5、グッジョブ!よくできました!』
「やったぁ!やっとポイントゲットだ!」コックピットで荒ぶる。
横をTOM'Sのマシンが通過する。
「あのヘルメット、やっぱり萩原か。」
パルクフェルメに戻って来る。
隣に萩原が来る。
「やったな!俺達ポイントゲットだ!」
「だな!」
2人がピョンピョン跳ねながら喜んでいた。
その時
「いやぁ、今回は負けたわ!よくやったよ松下!」
「杏堂先輩!」
決勝結果
10号車 杏堂 9位
31号車 松下 5位
ようやく2台揃ってポイントを獲得。




