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VERTEX 2  作者: 銀乃矢
メインストーリー
12/23

第11話「雨」

VERTEX racing事務所。

書類仕事を進めていたが、やはり昨日の田邊の引退が頭から離れなかった。


「…き、大輝、どうした、ボケっとして。」

「あ、いや、すみません。」

止まっていた手を動かし始める。


「実はな、合同テストの話が来た。セルモ、TOM'sの2チームと合同だ。」

「まじですか!ぜひ行きたいです!」


「すでに開催は決定している。場所は鈴鹿だ。来週だから、早めに荷物準備しておくんだぞ。」

「分かりました!」




翌週の鈴鹿。


「あいにくの雨っすね〜。」

ピットの外ではシトシトと雨が降っていた。


「そうだな。そういや、何気に松下、雨のSFは初じゃないか?」

「そうですね、確かに今までの大会全部晴れか曇りでしたね。」


「じゃあ、SF初のレインコンディションでのセッションか。いつもとは挙動が違うぞ?」

「そんなにですか?」


「あぁ、ハイパワーだからな。マシンもガラッと性格が変わる。」

「分かりました。気をつけます。」


3チームのメンバーが全員集まり、挨拶を交わす。


「さぁ、早速テストやっていきましょう!」


6人がマシンに乗り込み、エンジンを始動させる。


観客のいない鈴鹿サーキットに6台のエンジン音だけが響き渡る。


「うおっ。ウォータースクリーンエグすぎだろ…前見えねぇ。」


最高時速300km/hに迫る空力の化け物が巻き上げる水しぶきは恐ろしい。

うっすら奥の方でレインランプを光らせた誰かがいるのがわかる。


ブレーキング!

マシンが少し滑る。恐怖を感じる。


「ひぇぇ。怖いよぉ。」


『松下、無線ダダ漏れだぞ。お前本音漏れまくりだ。』

「す、すいません。」


雨の中周回を重ね、6台のうち3位タイムまで上がってこれた。


その時、

ブオンッ!

エンジンの方から異音が聞こえてくる。


その瞬間マシンの加速が鈍くなる。


まさか、と思い、ギアを2速から上げてみようとする。

「やっぱり…ギアが死んだ。」


コースサイドにマシンを止める。

『松下、何があった!?』


「ミッションブローです。ギアが上がりません。多分ピットまで戻れません。すみません。」


『そうか。とりあえずエンジンを切ってマシンを降りてくれ。マーシャルと一緒にパドックまで来てくれ。』

「分かりました。」


その会話を最後にマシンから離れた。


「だぁ〜、んでギアがここぞというとこで壊れんだよ〜。最悪すぎ…」


ピットに戻って来ると5台が整備を受けていた。


「あ!大輝戻ってきた。大丈夫?」

「うん、マシンは壊れたけどね。」


「何があったん?」

「多分ミッションブローだと思う。全然加速しなくなってギアが上がらなかった。」

「そうなんだ。じゃあ、交換?」


「すまんな大輝、予備のトランスミッションは持ってきてないんだ。交換はできない。」

「そうなんですね、分かりました。じゃあ、片付けちゃっていいですか?」

「そうだな。もう走行はできないだろうからな。すまんな。」


「大丈夫です。」


トレーラーの中で着替え始める。

「はぁー、まさかギアが壊れるとはな…もっと走りたかった。雨の中。」


ドアを叩く音が聞こえる。

「はい?どうぞ?」

「あ、いた、松下、ちょっとさ、みんなの走り見てくれない?」



「ここからなら鈴鹿の前半区間が見れるから、それを見て感じたことを書き留めといてほしい。それをあとで5人に伝えてくれ。」

「分かりました」



「う〜ん、萩原はコーナーで膨らみすぎだな。もうちょっとエイペックス(コーナーの頂点)に寄れそうだな。」


「これ…楽しいぞ。」




「ただいま戻りましたー」


「ざっとこんな感じでした。」

「おうありがとうな。」


「そういえば代表、うちのチームのトレーラーあるじゃないですか。」

「あるね。」

「あれのサイドにDream racing Projectのプリント跡みたいなのがあったんすけど、あそこと何か関係あるんですか?」


「あぁ、気づいたんだ。実はこのチームはもともとDream racing Projectのスーパーフォーミュラチームだったんだ。だが、あっちが財政的に苦しくなってな、そこを譲ってもらったのがこのVERTEXなんだ。」


「そうなんですね。じゃあ、去年のDRレーシングってチーム名は?」

「それは向こうからのお願いでね、2つのチーム名を合わせたような名前にしてほしいって言われてね、DreamのDRとVERTEXracingのレーシングをとって作ったチームだ。」


「チームの歴史みたいなの知れてよかったっす。ありがとうございます。」


「おう。さぁ、切り替えて次の富士に向けて頑張るぞ!」


「おぉぉ!」ピットにいたメンバー全員で叫ぶ。


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