第9話「新世代」
ということで中根は代表の推薦もあってWECの育成プログラムに参加することになった。
「周りはみんな大学生とか高校生っぽいな。みんな若いなぁ。」
主人公も25歳だが。
「今日からみんなにはこのマシンに乗って走りを突き詰めてもらう。」
代表がプログラムの説明を進める中で実習車両が紹介される。
シートが外されると、VITA CLUBのv.Granzが現れる。
「VITA CLUBのv.Granzだ。主にMEC120などのカテゴリーで使われている、耐久レースにもってこいの車両だ。パワフルかつ軽量であるから車両の特性もわかりやすく、技能向上に役立ってくれるだろう。」
「さっそく、技能研修…と行きたいが、まずは君たちのレースに対する知識を確認したい。座学でテストを行う。」
配られた紙には旗の意味、用語などの説明の一部がカッコ抜きされたものが書かれていた。
すべて書き終え、提出する。
「よし、全員出したな。結果は来週渡す。このあとは実習だ。パドックに集まるように。」
席を立ち上がり、パドックに向かおうとすると後ろから声をかけられた。
「もしかして、君が今年からのVERTEX racingのドライバーさん?」
「え、はい、自分がそうですけど…あなたは?」
振り返ると3人が立っていた。
「あ、ごめんなさい、つい見覚えのあるチームTシャツを見つけて。私、根岸愛、セルモから出てるの!」
「俺、永野駿、愛と一緒でセルモから出てる。」
「俺は萩原琢磨。TOM'Sから参戦してる。」
「もしかしてみんなドライバー育成の?」
「そうだよ!」
代表から以前聞いたことがある。2024年からニュージェネレーションアスリートプログラムの一環でモータースポーツ部門の3人の成績優秀生がスーパーフォーミュラへと参戦を開始したことを。
ピットに4人で談笑しながら向かう。
向かった先では10台のv.Granzが整備されていた。
「まずは、トップフォーミュラ経験者の松下、根岸、永野、萩原の4人に乗ってもらう。彼らの走りを参考にするように。」
4人がv.Granzに乗り込み、エンジンを始動させる。
このクルマはプロトタイプカーのような見た目をしており、自分の中ではお気に入りだ。
4台がピットを離れ、ホームストレートへと1周して戻って来る。
『まとまってスタートする。インディスタートで行く。』
4台の距離が接触しそうなほど接近する。
グリーンフラッグが振られる。
『レース終了、レース終了、そのままピットに戻ってきてくれ。』
「速すぎだろ…あの3人。スーパーフォーミュラでもハマれば絶対速い。」
結果、まぁまぁな差をつけられ、最下位で終わった。
ピットに戻り、3人に話しかける。
「速いね、みんな」
「えへへ〜、ありがとう。」
「みんなは去年まで何かフォーミュラとか乗ってたの?」
「俺と琢磨はFormula Regional Japanに出てた。」
「私はF4!FIA-F4!」
「F4!?パワー差がありすぎじゃ…」
「そうだね、実際、パワー差すごいよ!確か、監督が大体5倍って言ってた気が…」
F4が140〜160馬力、スーパーフォーミュラが大体550馬力、実際4倍くらいパワーに差がある。
「それでも乗れる?」
「乗れるよ、スピン多かったけど。」
「たしかに、愛、スピンしてばっかだったな。去年のテスト。」笑いながら永野が言う。
「なっ、言わなくてもいいことを…」
永野をポコポコ叩く。
「去年?もしかして鈴鹿での?6月あたりの」
「そこにはいなかったね、ちょうど外国で修行してた時期だ。私達は12月の最終戦後のもてぎでのテストに出たの。」
「外国?」
「そう、イギリスでレースやってた。」
「イギリス…すごいな…」
プロのレーサーを目指す人はレースの本場であるヨーロッパなどへ渡って経験を積み、結果を残し、日本に戻ってくることをする人が多い。
「向こうのレースはすごいよ、日本ではありえないような追い抜きをする人がたくさんいた。それのおかげもあって自分もできるようになったけどね!」
「そうなんだ、じゃあ、次のレースでは要警戒かな?」
「だね!油断してるとすぐ追い抜いちゃうぞ〜?」
「じゃあ、本気のブロックラインで応戦するわ」
「負けないぞ〜?」
楽しい時間が過ぎた。




