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第27話 風神バール

 (コア)を奪われ崩壊を始めた神樹城塞と種神兵(シードュバイター)が動きを止め堕ちていく中

風神バールの宿る神扇から吹き荒れる神の嵐と荒れ狂う神樹ジュピタの

無差別攻撃が激しくぶつかり合っていた。


「久し振りだねバール。力貸して欲しくて呼んだの。

 ほら今あんな感じだから、最後はカッコよく決めたいんだよね」


『随分と楽しそうじゃねぇか、面白そうな敵と戦いやがって』


「まぁね・・・終わったと思ったんだけどね。今回の敵が演出上手でさ

 バールの出番まで用意してくれたって訳、嬉しいでしょ!

 だからお願い力貸して」


『ははっ、相変わらずだな我が主は。主神なんだからビシッと

 命令すりゃいいんだよビシッと。カッコよく決めたいって事なら

 力貸すぜ、そのかわり後で一個だけ話聞いてくれや』


「いいわよ」


 崩壊しつつある神樹城塞の下半球部にまで到達した神樹の根が白く

泡立ち始めていた。そして、城塞が徐々に神樹の根に吸収されていく。

『ギュイン、ギュイン、ギュインッ』と脈打つ神樹。

根から徐々に神樹城塞を吸収しエネルギーに換えているようだ。


「ギャハハハッ、すべて道連れだーーー。滅べ滅べ滅べ!」


 狂った様に笑い無差別攻撃を続ける神樹はエネルギーを吸収して

大きくなっていく。


『あの敵やばそうだな、自らを喰らってやがる』


「あーやってエネルギーを取り込んでるみたいね。『六塵眼』で

 視えてるもの。早く終わりにしないとね、最後はもう決めてるから。

 行くわよバール『風道神路・神燕身』」


『高鳴るぜ、神燕となりて力を与えん』


 風神バールにより第ニ仙風刃燕老の力を解放し神燕と化したエイミーは

大きな翼を羽ばたかせると一気に神樹を通り過ぎ反対側に現れる。


「ハハハッ、凄い!でも今ので分かったわ。それじゃ戦闘開始」


『おう、防御は任せな』


 神樹ジュピタの太陽花から放たれる大陽視滅線(グランドサンブレイジュ)の乱射と宝雷花の不規則な

軌道で放たれる呪雷疾嵐瑕(ジュライトラペイン)が襲う中、神樹へと迫るエイミー。


『『吾嵐震(アランブル)』、まぁこんなもんか所詮は・・・』


「ふふふ、頼りになるー。じゃ私もあの花摘んじゃおう『風龍双波』」


 神燕エイミーが瞬間移動してるかの様な速さで天翔け回り、襲い来る神の雷を

バールの放つ嵐の拳が防ぐと狙いを定めたエイミーが二門の風龍波で次々と

神樹に咲く花を散らしていく。


『ビュイーーーン、ビュイーーーン、ビュイーーーン』


『ゴォーーーーッ、ビリバリバリッビチーーーッ』


荒れ狂う敵の攻撃を掻い潜り風龍双波を次から次へと決めて行くエイミー。


「良いわね、大分感じが掴めて来たまるで戦闘機になってる気分」


『ははっ、こんな戦闘機は地球のどこにも存在しないがな。あれ以外は・・・

 それより神樹の根もやった方が良くねえか』


「それもそうね」


 エイミーが戦闘機になった気分で神樹の周りを天翔け旋回しながら

根にも攻撃を加えていると神樹ジュピタの顔が怒りに歪む。


「ぐぉーっ、赦さん最後の最後までゴミ虫の分際でーーーっ!

徒花空果悲壮神爆(ストラグラジックムナシードゴドム)』喰らえ喰らえ消えろ」


 エイミーの攻撃によりどんどん花を散らしジュピタの暴撃が弱まっていく中、

神樹に実り出す空ろな果実。


「花散らしたら実を付けたよ・・・ジュピタの怒りの実みたい」


『ありゃやべー奴だな』


 神樹ジュピタに実った果実が一対の羽根を生やし神燕に向かって

飛び立った。


「飛んで来た!『風龍双波』」


『ピカッ・・・ドバーーーーーーン』


 エイミーが飛んで来た空果に攻撃を加えると大爆発を起こし

神燕を吞み込もうとしてくるが爆発すら置き去りにする速さで

躱してしまう。


「おのれ!飛んで飛んで喰らって消えろ『大惨果(グランムナシーダス)』」


神樹に実る空果が一斉に飛び立ち空間を埋め尽くす。


「逃げ場がない・・・」


『でどうする我が主』


『ピカーーーーッ、ドゴー・・・』


 大爆発の波に呑まれるはずが一瞬の煌めきの後に静けさを取り戻した世界。

神殿フロアを埋め尽くす様に撒き散らされた神樹の空果が爆発する瞬間、

空間を一瞬にして天翔けた神燕がすべての空果を巡り第六仙の『神風手丸』で

爆発を封じ込めたのだった。


「流石はお嬢様!お見事です」


ロイド達も結界を張り備えた様だが何事もなく安心している様子だった。


「いやー凄かった!出来るとは思ってたけど世界が止まって見える程の

 スピードだったよ」


『だろうな・・・なあ主、そろそろ遊びも終わりにしねぇか?もう十分だろ』


「うん、残念だけどここまでね。城塞部分も大分吸収されてるし外の世界への

 影響を考えるとね・・・データもかなり取れたし終わりにしよう。」


 神樹ジュピタは攻撃が不発に終わり怒りの渦に呑まれていた。

怒りと共に高まるエネルギーがもたらす衝動。


「どこまでもどこまでも、赦さん!共に死ね、うぉーーーっ。

 ()まれるぅ()まれりゅー神ぐぁ()えるぅ世界ぎゃ()えりゅー」


超神征爆滅(フォーリンイレギュラリーノバ)


「神樹ジュピタ楽しかったわ、でもサヨナラ『風塵滅羽・神鳥風燕』」


 ジュピタが最期の言葉を放つと樹上に現れた謎の魔方陣を六塵眼が捉える。

その魔方陣から落ちた一雫の神の涙がジュピタの(コア)に触れた瞬間、

世界は光に包まれたかに見えた。


「あの魔方陣何?・・・それより行けーーーっ!」


 世界が自爆の光に包まれるより早く滅びの風を纏った巨大な神鳥が

神樹を呑み込んで行く。ジュピタの全身全霊を賭けた最後の攻撃も

神鳥風燕の世界が静止するスピードの前では何もしないのと同じだった。

滅びの風が神樹ジュピタを塵と変えていく中で抗う超大な爆滅のエネルギーも

次第に極塵と化し力を弱めていき遂には塵と消えたのだった。


「ふぅーやっと終わった・・・バールありがとね。

 それに地球で2000年費やした成果も見せられたしね」


『ふふっ、主の役に立てて良かったぜ。それよりこの迷宮、今ので終わったな』


「彼奴が消滅したせいかな、みんなを回収して脱出ね」


 地下水路迷宮がグラグラと揺れる中、神燕状態のままロイド達を一瞬で掴まえて

水柱に飛び込み樹海湖を突き抜け空へと脱出したエイミー。

脱出後、迷宮はすべてを呑み込む様に収縮しこの世から消えたのだった。


「お嬢様、長き戦いお疲れ様で御座います」


「ロイドとマーラもね。ほんと長かったよ・・・夜が明けそうだよ」


「マーラはずっとお姉ちゃまと一緒で楽しかったのー」


魔樹の森に降り立ち互いを労うエイミー達であった。


『なぁ主そろそろいいか?また地球の時みてーに依代(アバター)を用意してくれねぇか』


「話聞いてほしいってそういう事?まぁいいけど・・・

 地球で使ってたので良ければあるけど」


『おぉー、それで頼むぜ』


「魔像召喚、出でよ空ろなるエドバール・ウィン」


 エイミーの召喚魔法によりエドバール・ウィンが現れると神扇よりバールから

分かれた光の珠が飛び出しウィンの体へと入っていく。そして目覚めるウィン。

ジーンズのよく似合うあの俳優そっくりなエドバールだった。


「よっし感謝するぜ我が主。享楽の地球も楽しかったが今度は久し振りのテラを

 満喫するぜ、今回は主の生み出した風拳使いとなって冒険するぜ、ははっ」


「まぁ程々にね、ふふ」


 急に現れたウィンにロイド達は最初驚いていたが久しぶりの再開に沸く三人。

そして、戦闘モードから通常モードへと戻るエイミー達だった。


「レェイゥセイアあなたに聞きたい事があるのだけどいい?」


『神なるお方の質問には何でもお答えします。あのお方も神なのですね』


「あなた神を感じる力があるみたいね。それよりも聞きたいのは

 あなたが神樹城塞ジュピタに張ってた結界あったでしょあれ何?」


『あれで御座いますか、あれは擬装結界ですね』


「擬装結界・・・何を擬装してるの?」


『宇宙の壁ですね 』


「宇宙の壁!?一体どうやって・・・そこ詳しく教えてくれない」


『ジュピタ表面に擬似的な無限領域を展開してそこに宇宙の壁を

 作り出しているのです』


「無限領域・・・って何?」


『この世界が浮かんでいる海とでも言いましょうか。要するに

 この世界は無限領域に存在する有限領域なのですね。世界が浮かぶ海を

『無限領域』とも発見の切掛に因み『マイナス十二分の一の世界』とも

 我々は呼んでいます。有限領域と無限領域の境界が宇宙の壁という事です。

 無限領域の中で有限領域は生まれては消え、また生まれては消えを

 繰り返しています。その中で生き残ったものの一つがこの世界という事ですね』


「無から生まれたんじゃないの・・・それにそういう事かやっと分かったよ」


意味深に遠くを見つめ考えに耽るエイミー。


『宇宙の壁の先を見通す事は出来ないのです。と言ってもそれだけです。

 中を覗けない様にするだけ。我々の力ではそこまででした』


「それだけでも凄いよ、教えてくれてありがとう。知ってるのと

 知らないのでは大違いだから。まだ聞きたい事あるけど帰ってから

 お願いね。それでその姿のまま一緒に帰るのもね、どうしよう」


『我々は精霊の様に姿を消せますので安心して下さい。マーラ様と

 同じですので』


「そっか、なら安心だね。よしっみんなタッカール爺さんの所へ帰るよ。

 マーラはここまでね、ありがとう」


『うん、とっても楽しかったのー。また喚んでねお姉ちゃま』


 マーラを見送った四人は魔樹の森上空に浮かび上がると道具屋へと向けて

飛び立った。


「サリアただ今ーって。えっ!何でタッカール爺さんまでいるの!?」


「あの後のぉ居ても立っても居られず冒険者ギルドに駆け込みその足で

 帰って来たところじゃ。あっちでも大変じゃったのに帰って来たら

 この有様、どういう事か説明してもらわんとの」


「本当、大変だったんだから!何がなんだか分からなくて、もうっ」


 地下水路迷宮から無事帰還したエイミーにタッカール爺さんとサリアが

説明を求めて来る。


「お嬢様の休息の時はしばらく先の様ですな」


「んっ?」


『いけない!?』


 その時だった、『ブゥオーン、ブゥオーン』と奇怪な音を唸らせ空から迫る

飛行物体。思わず空を見上げるエイミー達はタッカール爺さんの家の上空に

現れた全長100メートルはあろうかという空飛ぶ円盤を見詰めていた。


「おおーっ、あれじゃ儂が見た空飛ぶ船じゃ」


「あれが!でも何で?」


 上空に浮かぶ飛行物体から突然ビームが照射されるとそれはレェイゥセイアを

捕らえた。そのせいで姿が露わとなった結晶生命体はビームに吸い込まれる様に

消えてしまった。一連の事態に驚くタッカール爺さんとサリア。


『キャーー嫌ーっ』


「レェイゥセイア!やられた、まさか取り返しに来るなんて・・・」


空飛ぶ円盤から放たれた声が辺りに響き渡る。


「奪われた物は返してもらった、代わりにこれでも受け取れ。

 愚かなる者に死を!」


白く光に包まれる世界。円盤から放たれた光が辺り一帯を襲ったのだ。


「任せな『嵐峰欄扉流(ラブランドル)』」


 風神バールの作り出した風の守りの結界が屋敷の周囲を大きく包み込む。

結界の外では凄まじい破壊の嵐が渦巻いていた。暫くしてそれが治まると

空飛ぶ円盤は何処かへ消えていた。


「なんじゃ今のは・・・」


飲み込めない事態にタッカール爺さんは腰を抜かしていた。


「バールありがとう、みんな助かったよ」


「こんなのどうって事ねえよ」


 空飛ぶ円盤が光を放ち消え去った後、攻撃を受けた一帯はバールの結界を

境界に直径1キロに渡って焼き尽くされ大地はガラス状に変質していた。

変わり果てたタッカール爺さんの屋敷の周囲とそれを見詰める人々。

エイミーは悔しそうに空を見上げていた。

エイミーのファイでの冒険はこれで終わりとなります。

次回は「レンカとダンジョン」久し振りにレンカの冒険になります。


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