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第26話 覚醒!翠雲仙風扇バール

 神樹城塞ジュピタ内部へと潜入したエイミー達。幅数百メートルはある

広い空間を持つ格納庫内の天井の中央へと伸びる輝く円塔(タワー)とその底部に

並行に接続された二本の飛行甲板。そこから次々と飛び立って行く種神兵(シードュバイター)


『うわー、凄いSF感!あのキラキラタワーに向かうよ』


『了解です』


 エイミー達の近くを『ブーン』と音を立てながら気付く事なく通り過ぎる

種神兵(シードュバイター)を横目に見ながらエイミー達は慎重にタワーへと近付いて行く。

姿の見えぬエイミーに抱き付いてるマーラを目印に後を追う姿の見えぬロイド。

タワーの側まで行くとエイミーは天を見詰めていた。


『内部に入ったら『透視』で(コア)の位置が分かったよ。外部からだと

 神像戦士の時もそうだったけど謎の結界があるせいか視えないんだよね』


『という事は先ずはその結界を調べるという事ですかな』


『そう!最終目標は(コア)のある区画に行く事だけどその前に謎の結界の

 正体を突き止める。場所は視えてるから歌は『風読』・・・分かった。

 跳ぶよ『風転身』』


 エイミー達が着いたのはタワー最上部にある管理用通路の行き止まりだった。

通路にある扉は閉ざされており風の道を塞いでいた。

そこには四角いガラス窓の様な物があり格納庫内の天井に並ぶ巨大な種子が

機械アームにより運ばれる様子を見る事が出来た。


「まだ、種神兵(シードュバイター)の発進が続いてるみたいね」


「まだお嬢様の分身を追い掛けている様ですな」


「ふふふっ・・・今の内に先に進もう!先ずは風の通り道を作らないと。

 我は滅びの風を操りすべてを微塵と成すなり第七仙『風化塵老』、

 ここなら開けても問題なさそうかな『風塵拳』穿つは針穴『指塵風穴』」


 エイミーは第七仙の風塵拳の技を使い行く手を阻む扉に人指し指を当て

指先から吹き出す尖風で強固そうな扉を突き抜き縫針くらいの穴を開けた。

針穴からはサラサラと砂が溢れ落ちていた。穴が開いた事で風を送る事が

可能になり風読を使ってこの先の様子を調べるエイミー。


「バレるまでは慎重に行こう、また跳ぶから掴まって『風転身』」


 エイミー達がコソコソと城塞内を進んでる頃、ジュピタの分身体(アバター)

種神兵(シードュバイター)を指揮しエイミーの分身を追い回していた。


「ハハハハハッ、もはや逃げ回る事しか出来ませんかな。数の暴力により

 やっとゴミ虫にも限界が来たという事・・・我が仕掛けた消耗戦に嵌った

 愚かなゴミ虫。宝雷樹の攻撃を受けて死んだお仲間の元へ直ぐに送って

 差し上げましょう。フハハハハッ!」


 エイミーに欺かれている事に気付かず高笑いで的外れな事を言い

分身(エイミー)を追い詰めるジュピタの分身体(アバター)


『よしっ、この隔壁の先が結界装置のある区画だね。認証装置あるけど

 関係なし。通路といいこの扉といい、このSF感堪らないわね。

 えーと・・・ここなら穴開けても問題なさそう、穿て『指塵風穴』』


 格納庫にある円塔(タワー)が接続していた天井部上のフロアから3層目にあった

結界装置のある区画への入り口に辿り着いたエイミー達。

白いチューブ状の真っ直ぐな通路にある隔壁に針穴を通し風転身で

遂に第一目標へと侵入を果たしたのだった。


『遂に来たね、ここからより慎重に行動ね』


『ハイなのー』


『何があるか分かりませんからな』


 空中を浮遊しながらエイミーは通路を進む。いくつかの扉を通り過ぎ

とある扉の前で移動を終える。


『この扉の先ね、ここにも認証装置か・・・抜け穴開けて跳ぶから』


 エイミーは今までと同じ様に穴を開け中の様子を調べロイド達を連れ転移する。

扉を抜けた先は細長く薄暗い通路が続いていた。ダークグレーな壁に囲まれた

通路を暫く進むと広い空間が見えてくる。通路から慎重に中を覗き込むエイミー。


『あれかな?・・・けど様子が何か変、行くよ』


 エイミーが覗いた先は長さ30メートル程の楕円状の空間が広がり床は通路より

一段低い位置にあった。その中央に女性のレリーフが刻まれた紅い結晶体を

抱きかかえる様に絡み付く白い天使像と思しき者が台座の上に立っていた。

そして天使像に繋がる複数の管が天上から伸びていた。エイミーがその像に

近づくと不意に脳内にノイズ混じりの声が聞こてきた。


『神なる・・お方・・・私・・連れて・行っ・・て下さ・・・い』


『何今の?』


『私にも聞こえましたな女性の声で』


『マーラも聞こえたのー』


突然の呼び掛けに驚くエイミーだったが好奇心が上回る。


『神なるお方って私の事かな?視えてる?私はあなたの敵じゃないの?

 あなたの神は正陽神教の神なんじゃないの?』


『あれ・は・・私・求める・・・神では・・ありません・私は・・

 この様に・囚わ・・れの身・・・蝕天使(グノミオン)・・に取り憑か・・』


 エイミーが念話で謎の思念体と会話していると突然台座の天使像の目が開き

紅い結晶体に何かをし始める。『ジジジ』と音が鳴ると苦しみの思念が

エイミーに伝わってくる。それで全てを理解したエイミーが行動に出る。


「その天使像から解放して上げる。あとはそれからね『風塵掌』!」


 エイミーが思念体と遭遇した頃、外ではジュピタが分身(エイミー)を追い詰めていた。

そして、終に種神兵(シードュバイター)の攻勢により討たれる。


「フフフフフッ、やったか。手こずらせやがってゴミ虫が!

 カハハハハッ、我の最終勝利に乾杯ですね。んっ!?何が起きた」


 エイミーの分身を倒し高笑いをしていたジュピタの分身体(アバター)

異常を知らせる巨大スクリーン。突如として停止する暴風乱雲界(ストムネードクラウド)発生器。

そして映し出される結界装置区画の様子。そこに映るエイミー達。


「何故生きている・・・何故ゴミ虫がそこにいる・・・ぐぉー

 やられた、まんまと嵌められた・・・赦さん赦さんぞー!

 城内守備システム『ジュピタルード』起動、種備兵(シードュアン)を出せ。

 我も行く、戦闘用分身体(バートルーダー)を用意。入り込んだ事を後悔するがいい」


 エイミー達に謀られた事に気付き怒りに震えるジュピタ。

風塵掌によりサラサラと砂と化し崩れ去る天使像。光出す結晶体。

紅い色が鎮まる様に消えて行き穏やかな緑に変わると突如として

天井付近から吹き出すガス。そのせいか解ける隠形の風。

そして、城塞内に鳴り響く警戒音。


「何これ、天使像を破壊したらガスが・・・」


『これは私達結晶生命体を一時的に行動不能にするガスです』


「なら、風は巻くてんてん溜まる風だまり『風手丸』

 みんなこの結晶に集まって跳ぶよ『風転身』」


 風詠歌老の技を使い噴き出るガスを風で丸めて閉じ込めてる隙に

エイミーは結晶生命体を連れ転移で結界装置区画から脱出したのだった。

連れて来た結晶生命体は自らフワフワと浮遊している。

白いチューブ状の通路の行き止まりに跳んだエイミーは目の前に

ある隔壁に手を当てると風塵掌を使い砂に変える。


『まぁ凄い!神なるお方』


「こうなったら後は(コア)まで強硬突破で行くよ。なんて呼んだらいいか

 分からないけど結晶さん、今私達このジュピタと戦闘中なの。忍び込んで

 あなたをゴニョゴニョしようと思ったら連れてって言うから、真逆の

 展開だけど連れて行って上げる。後は戦闘終わってからね」


『私の望みを叶えて頂けるなんて!私の事はレェイゥセイアとお呼び下さい』


「レェイゥセイアと言うのね・・・あっ、敵!早速お出ましね。ロイドやるよ」


「はい、お嬢様」


 通路の前後を塞ぐ様に現れた種備兵(シードュアン)達、種から頭と手足を生やし

頭は食虫植物の様な敵を咥える牙を持ち手は鋭い鉤爪のある指を持っていた。

それが素早く襲い掛かって来る。


「遂に試す時が来たわね『六塵眼』、穿つは経絡『指塵風穴』」


 風化塵老の技である六塵眼を使い敵のエネルギー循環を捉え敵の攻撃を

躱しつつ寸分違わぬ正確さで急所を突き次々と敵を沈黙させて行くエイミー。

突きを食らいプシューと砂煙を上げ動かなくなる種備兵(シードュアン)

ロマンあふれる拳技をエイミーは楽しんでいた。


「こういう事も出来るわよ、3、2、1・・」


『ボフンッ!』


 今度は敵のエネルギーコントロールの急所を突き暴走破壊させるエイミー。

カウントは適当であった、雰囲気が出ればいい。だってマーラが喜ぶから。


(しゅご)いお姉ちゃま、まるでアレなのー』


 一方のロイドも敵を斬り伏せ進路を確保して行く。敵を一旦殲滅し

落ち着いた所で風読を使い先の様子を調べるエイミーだった。


「よし、敵が迫ってるから行ける所まで跳ぶよ『風転身』」


 玉座の間では分身体(アバター)がスクリーンに映し出される城塞内の状況を

見詰めていた。


「厄介な技を使う。どうやら我が心臓部を目指してるようですね。

 センターコアの区画の防備を固めよ。戦闘用分身体(バートルーダー)もそこへ配置」


更に(コア)へと近付いたエイミーは通路にて種備兵(シードュアン)と戦闘を繰り広げる。


「今度はこれよ、切り裂け『指塵風切』」


 敵の攻撃を見切り五指で切り裂いて行く。切り口から砂が溢れ切断された敵は

体に入った線に沿いバラバラに崩れ落ちる。それを見て喜ぶマーラ。

ロイドも破濤を放ち次々と敵を吹き飛ばす。


「これで最後だからみんな行くよ『風転身』」


 みんなを連れ転移したエイミーは通路にあったとある扉の前で立ち止まると

扉を風塵掌で破壊し部屋へと侵入する。


「ここですかな」


 何もない空き部屋を見て訝しげな表情でそう聞く執事に

人差し指を上に向けて答えるエイミーだった。


「そういう事ですか、流石はお嬢様」


それを玉座の間で見ていたジュピタの分身体(アバター)は気付いた。


「ゴミ虫どもはセンターコアの真下の区画にいる。下だ!」


 ジュピタがそう叫んだ時にはセンターコアの間の床の一部が崩れ去り

その穴から現れるエイミーとロイド、結晶生命体。


「おーっアレが(コア)!怪盗参上・・・なんでヴィオラエールが!?」


 センターコアの間で待ち構えていた戦闘用分身体(バートルーダー)率いる種備隊を欺き

その背後を取り、遂に侵入を果たしたエイミーの目の前に宙に浮かびクルクルと

回転する青く輝く5メートルほどのキューブがあった。センターコアの間の

ドーム状の天蓋はキューブの光を受け幾条もの光の筋が浮かんでいた。

そして、後ろを振り向き苦々しい顔を浮かべるバートルーダー。


「コアをゴミ虫から守れ、行け種備兵(シードュアン)


 一斉に襲い来る敵兵と樹の枝に乗り飛んでくるバートルーダー。

剣を手にエイミーに斬り掛かるがそれは躱されてしまう。

自由に動き回る枝に乗り攻撃して来る分身体のヒットアンドアウェイが

次々と襲うがそれすら難なく躱すエイミー。


「『指塵風切』あなたにはこの技がピッタリね『塵衝裂風波』」


 エイミーは敵が過ぎ去りまた還すタイミングを計り右手の人差し指を

バートルーダーへ向け、それを振り下ろす。すると分身体は背中から

砂を吹き背開きの様に斬り分かれると力なく崩れ落ちた。

種備兵(シードュアン)達もロイドとマーラの活躍により氷塵と化していた。


「ロイド敵をお願い、私の魔法でジュピタを倒す。

 でも使うのは破壊の呪文ではなくて、泥棒さんの呪文だけどね・・・」


「お任せ下され」


「いくら倒そうとも無駄だ。城塞内であれば何度でも生まれ変わる。

 種備兵(シードュアン)、そして種神兵(シードュバイター)行け」


バートルーダーが再び現れ種神兵(シードュバイター)まで引きずり出し抵抗して来る。


「敵も焦っていますな、押さえ付けるのみ『覇天渦』!

 頼みましたぞ、お嬢様」


 ロイドの生み出した強力な念動の渦がエイミーを守る様に発生し

敵の動きを封じる。そして、(コア)に向き合うエイミー。


「これで終わりよジュピタ。あなたの(コア)怪盗(わたし)が頂く。

 私の物になれ闇の宝珠、(コア)を抑えよ渦呪魔法『魔力吸引』、

 樹呪魔法『暗黒樹の苗木』よ(コア)を封印せよ『樹根封印』」


「やめろー、やめろー」


 泥棒さんの魔法が(コア)を弱め、暗黒樹の苗木により封印され力を失う(コア)

エイミーが封印された(コア)をアイテムボックスにしまうとバートルーダーは

活動を停止した。そして沈黙する玉座の間。

『ゴォーーーーーーーーッ』と音を立て揺れる神樹城塞ジュピタ。

ヒビ割れるセンターコアの間。亀裂が至る所に生じていた。


「ジュピタの崩壊が始まったみたい。みんな逃げるよ掴まって『風転身』」


 (コア)を失い崩壊が始まった神樹城塞内から転移で脱出したエイミー達。

今のジュピタの様子を見て驚くエイミー。


「いつの間にか雲が消えてる・・・それより神樹が暴れてる

 あれで終わりじゃない!?」


『ぐぉーーーー、赦さんぞ赦さんぞ!道連れにしてやる』


 崩壊の始まった神樹城塞で巨大な神樹の根が城塞部をのたうち回り

更には城塞下半球部にまで到達し城塞を抱え込んでいた。

そして神樹に次々と咲き誇る太陽花と宝雷花。それが無差別攻撃を

始めるのだった。神殿フロアで荒れ狂う大陽視滅線(グランドサンブレイジュ)呪雷疾嵐瑕(ジュライトラペイン)


「危ない!完全に暴走してる、それにもしかしてあれかも・・・」


「自爆攻撃ですかな?」


「みんなは出来るだけ離れて、あれは私が仕止める」


『私にお任せ下さい、お守りします。あの者に安らかなる眠りを』


「そう、なら任せるわ。じゃ行って来る」


ロイド達と離れ荒れ狂う神樹ジュピタと向かい合うエイミー。


「翠雲仙風扇バール、お目覚めの時間よ。制限解除、出力70%へ増大。

 覚醒現界『風神バール』!」


『我が主よ、急にどうした?久し振りじゃねぇか』


 翠雲仙風扇バールから吹き荒れる神の嵐、その風がジュピタの攻撃を薙ぎ払う。

神扇の出力が70%を超えた事で目覚めた風神バールがエイミーに話し掛ける。


 ロイド達が見守る中、神樹ジュピタを鎮める為エイミーは神扇に眠る

風神バールを呼び覚ました。荒れ狂う神樹の攻撃とぶつかり合う神の嵐が

吹き荒れる中、ジュピタとの戦いは最後の刻を迎えようとしていた。

終わったと思った神樹城塞ジュピタ、しかし暴走する神樹。

エイミーは風神バールを呼び覚まし最後の戦いに挑む。

次回は「風神バール」。読んでいただきありがとうございます。

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