第25話 決戦!神樹城塞ジュピタ
神樹城塞ジュピタから飛び立った種神兵と風舞華老の拳技である
『桜風武気』を繰り出し敵を迎え討つエイミー。
「映えますな、お嬢様」
「解る?ロマンには映えも必要よ」
満開の桜刃が美しく映える中、神殿庭園を圧迫する様に浮かぶ神樹城塞。
その内部にある玉座の間では巨大なスクリーンが外部の様子を映し出し
それを玉座に座り見つめるヴィオラエールの姿をしたジュピタの分身体がいた。
徐ろに立ち上がった分身体はニヤリと笑みを浮かべた。
「フフフッ、準備は整ったようですね。全隊砲撃陣形を取れ。撃て『陽視滅線』」
ジュピタの命令により上空待機中であった種神兵が一斉に動き出す。
砲撃陣形を取った種神兵の頭部にある向日葵の様な眼から
一斉にビームが発射された。
「お嬢様ここは私にお任せあれ」
「分かったわ」
世界が光に包まれる中、ロイドは素早くエイミーを守るように前に出る。
『覇天渦』
迫る幾条ものビームを前に執事が縦に構えたサイコブレードが一瞬光を放つと
強力な念動の渦がエイミー達の周囲に発生する。その渦が数多のビームを捉え
渦の回転の念動力がビームの軌道を捻じ曲げ収束させUターンさせた。
ロイドによってUターンさせられ巨大な収束ビームと化したそれは
砲撃陣形を取っていた種神兵の一部を破壊しジュピタにまで到達して
城塞部を薙いだのだった。『ズドーーン』と味方の攻撃に揺れる神樹城塞。
城塞の一部が破壊され煙を上げていた。
「クーーッ、あの攻撃をそっくり返されるとは油断なりませんね。
偽神の手先・・・用心して掛からねば。『暴風乱雲界』発生器始動。
城塞修復維持システム『ジュピタレス』起動。損傷箇所の修復を急げ」
ジュピタが指示を出すと城壁内側に沿う様に存在する巨大な円状の雲界発生器が
回転を始めそこからガス雲が吐き出される。ガス雲が城塞部を包み回転により
渦を巻き始める。渦巻く雲界が巨大な暴風雲となり城塞を守る障壁と化す。
種神兵達は暴風雲の外へ移動し陣形を整えていた。
そして、雲界内では1メートル程の種子が破損箇所に集まると頭と触手を生やし
種復兵となって城塞部の修復作業を開始するのだった。
「ロイド今の良かったよ。ついでにデータも取れたしね。
でもあれ城塞部を雲のシールドで覆ったよ。ソフトクリームみたい」
「お役に立てて何よりですな。相変わらずの演出上手、魅せてくれます」
「こっちも攻撃開始、マーラは種神兵を一体確保してくれる?」
『ハイなのー』
「それじゃ行くよ『風転身』、『桜刃舞碼乱』」
先程の攻撃を見て種神兵が欲しくなったエイミーはマーラにお願いを済ますと
暴風雲渦巻くジュピタと種神兵の間へと瞬間移動する。
敵の背後を取ったエイミーが三日月を模った複数の桜刃をブーメランの様に
操作して次々と敵を斬り伏せる。不意を突かれた攻撃に陣形を乱す種神兵。
そんな中、敵の乱れに乗じマーラはフワリと飛んで敵の一体に近付いていく。
『あなたはお姉ちゃまに捧げるのー「石呪」タッチなのーーー!』
気付かぬ内にマーラに触れられた敵は石呪という状態異常攻撃を食らい石化する。
それを満足そうにアイテムボックスに収めエイミーの依頼を無事達成すると
エイミーに『やったのー』とサインを送るマーラだった。
巨大なスクリーンに映し出される戦況を見詰めるジュピタの分身体。
「種神兵は散開し体勢を立て直せ。二手に分かれ回天陣にて
敵に攻め掛かれ。各樹砲塔、主砲太陽樹を起動し砲撃準備。
攻撃補助システム『ジュピタクス』起動、攻撃連携開始。
フフフフフッ、ここから本番です。神樹城塞の力思い知るがいい」
エイミーの手の動きに合わせ飛んでは還る三日月の桜刃の攻撃に対し種神兵は
一旦距離を取り陣形を組み直すと円を描く様な移動で次々と攻撃隊が入れ替わる
回天攻撃を仕掛けて来た。尻から伸び出した棘針蔓で薙ぎ払う様に攻撃して来る。
咄嗟に退いて躱すエイミーに追う様に迫る回天陣。
「これって車懸かりの陣?うわぁ棘針、なら『桜刃大車輪』敵が退いた何で?」
「今だ一番から三番の主砲撃て!」
敵の車懸かりの陣に対してエイミーも同じ様に桜刃の大車輪で種神兵の
繰り出す棘針蔓の攻撃を斬り払っていた。すると突然退く種神兵。
そこへ城壁にある樹砲塔に生えた太陽樹から放たれた『大陽視滅線』が
エイミーを襲う。
「『念動掌』・・・からの『風転身』。危なかった・・・」
三条の主砲攻撃を念動で押さえ付けその隙に瞬間移動で躱したエイミーに
また迫る敵の攻撃。回天陣は全方位を視野に納める為対応が迅速であった。
種神兵の二重の回天陣が棘針蔓とビームの連携攻撃で迫り
主砲が逃げ道を塞ぐ様に放たれる。そして、いつの間にかエイミーの背後に
ジュピタの暴風雲が迫っていた。
「こんな近くにジュピタの雲が・・・えっ何」
種神兵がエイミーを暴風雲へ押し込む様に突撃して来る。
思わず雲の中に逃げ込んでしまったエイミーは暴風の波に呑まれてしまう。
『ゴーーーーッ』と吹き荒れる暴風雲の中では自由が利かず流されるままな
エイミーであった。
「フハハハハッ、やったか」
策略がハマり高笑いするジュピタ。暴風雲の中ではエイミーと一緒に
入り込んだ種神兵4体が彼女の前でボロボロと崩れ去り消滅する。
「何あれヤバい、僅かずつだけど私にもダメージが入ってる。『龍鎧風』
これも長くは持たないのね、なら暴風の出口へ『風転身』!」
転移でジュピタの暴風乱雲界の天辺に脱出したエイミーはアイテムボックスから
取り出した回復薬と万能薬を飲み干す。
「ふー、これで安心して戦闘続行出来る。あの雲は研究材料だね採取っと。
桜刃も溶けたしここは、まずは『風影身』。吹く風は我が意のままに
舞い踊り風の調べは我に味方するなり第六仙『風詠歌老』」
闇の宝珠の渦呪魔法で雲を吸い取り封印すると風影隠老の技を
繰り出しさらに第六仙の技へと繋げるエイミー。
「ふふっ、こっから反撃開始。『風詠拳』我詠う、風花火触れて出るは死の刃。
百連歌『風閃榴弾』風に忍べ『風影掌』。準備万端、桜刃満開『桜華串爛』」
風詠拳の技である風渦巻く玉の様な風閃榴弾が風影掌により風の中へ消えていく。
百発の見えぬ榴弾を風に仕込み派手な桜刃満開で敵の注意を惹きつけるエイミー。
「クソッ生きていたか・・・それでもかなりのダメージは負ったはず。
追い込め種神兵」
回天陣で追い込む種神兵に対し無数の桜刃の串を操り対抗するが
押される様に退いていくエイミー。しかし、エイミーを追い詰めていた
種神兵が突如として次々と爆風に呑まれていく。
エイミーもまたその爆風に呑まれる様に弾き消えたのだった。
これは風の中に隠されていた風閃榴弾に敵が触れ、それが炸裂したのだ。
爆発で生まれた無数の風の刃に呑まれバラバラに砕け散る種神兵。
「何が起きた?」
「よーし、掛かったわね。『風転爪』、『風転牙』」
風影隠老の風影身で姿を消したエイミーの身代わりとなる分身を生み出し
隠れた本体が仕掛けた風閃榴弾の元へ分身が敵を引き込んで誘爆させるという
釣り攻撃を見事に決めたエイミーだった。ほぼ敵を殲滅したエイミーが
僅かに生き残った種神兵を始末していく。
一方のロイド達にも敵の回天陣が襲い掛かっていた。三方向から迫る
回天攻撃に意図を感じる執事。
「いくら倒しても次から次に補充されてキリがありませんな。しかも、
ジュピタの雲海へと押し込んで来る・・・敵の作戦に乗ってみますか」
そう言いロイドが暴風雲の方へ退いて見せると突如として動きを変え
突撃して来る種神兵の編隊。
「思った通りですな、では送り物です『覇天渦』!』
ロイドの放った念動の渦が種神兵を捉えると
それは暴風雲にまで達し敵を雲界に放り込む。雲に巻き込まれた敵は
ボロボロになって崩れ去った。そして、覇天渦の渦は雲を引き摺り込み
小さな暴風乱雲界となり敵を呑み込んでいく。ロイドは飛行しながら
渦の軌道を調節し次々と種神兵を倒していった。
「おのれ!敵の作戦に嵌められるとは・・・種神兵50小隊出撃せよ。
敵を城塞下部へと押し込め。宝雷樹を起動、主砲一斉掃射上へは行かせるな」
怒りに震えるジュピタは新たな種神兵を繰り出し作戦を切り替えたのだ。
「ロイドあれ凄かったね、敵の殺戮雲を使うなんて」
「偶々ですな、あの雲に斯様な破壊力があるなどやってみるまでは
分かるはずもなく・・・お嬢様はあの雲に突っ込まれたようですが」
「まぁそんな事もあった様な・・・わおっ」
二人が話しているとジュピタの主砲太陽樹から放たれるビームの一斉掃射。
さらにはジュピタ上空からも新たな種神兵が現れて陽視滅線を
一斉に撃ち下ろして来る。
「何っ上から!?どこから出て来たの?邪魔!『風詠拳』、
舞い上がれさぁ舞い上がれ木の葉舞『昇舞吹』」
エイミーは敵の砲撃から逃げつつ種神兵の編隊に対し攻撃の歌を詠むと
凄まじい上昇気流が敵を襲い木の葉の様に吹き飛ばされた。
「流石はお嬢様・・・と言ってる場合ではありませんな」
「それより彼奴らがどこから出て来たのか調べないとね。
風音の調べは告ぐる何事も『風読』。うわぁまた!」
風流れる先の情報を探る風詠拳の風読を使い種神兵の出元を探っていると
更なる敵の増援部隊が現れ上空から攻撃して来る。エイミー達は次第に
城塞下部にある月の半球の様な場所へと追い込まれて行く。
「本当に月の表面みたい・・・それより敵の出撃場所が分かった。
あれっ!?樹が生えてるんだけど・・・嫌な予感」
「フフフフフッ、上手く誘導出来た様ですね。
全宝雷樹は放撃準備、撃て『呪雷疾嵐瑕』」
ジュピタ下部の半球に生えた二十本の宝雷樹が『ビビビバチッ』と帯電を始め
一斉に放たれた神の雷がエイミー達を襲う。
「お嬢様時間を稼ぎます『覇天衝』!」
ジュピタより放たれた神の雷をエイミーを守る様に放った念動爆裂で
受け止めて見せたロイド。しかし、鬩ぎ合ったのも束の間で押され始める。
神の雷の破壊力が勝ったのだった。
「カハハハハッ、今度こそ仕留めたか!?」
「十分よ、ロイド!掴まってみんな『風転身』」
ロイドの覇天衝で稼いだ時間で見事危機から脱出した三人は暴風乱雲界の
天辺に転移していた。神の雷の荒れ狂った神殿庭園は灰塵と化している。
エイミー達の下方では種神兵が再び集結していた。
「あれはヤバかった、ロイド有難う」
「主人を守るのも執事が役目で御座います」
そんな会話の後、下方へと目を向けるエイミー。
「あれを叩けばきっと・・・舞い落ちて砕け散るのが世の定め『堕風槌』!
ロイド、マーラ掴まってて風に隠れるわよ『風影掌』『風影身』『風転身』」
エイミーの放った風詠拳の技が凄まじい下降気流を生み出し
それが風の鉄槌となって種神兵の軍勢を叩き落とし押し潰す。
「何っ!?あれを生き残ったとは・・・転移が間に合ったか。
忌々しい奴らめ。種神兵30小隊出撃。今度こそ仕留める」
神樹城塞ジュピタ下部の半球部にある出撃口から種神兵が発進して行くのを
眺める風に忍ぶ影達。エイミー達は分身を囮にして風読で見つけていた
敵の出撃口へと転移していたのだった。
『こんな所に出入口があったとは流石はお嬢様』
『フフッ、今の内に潜入するよ』
『ハイなのー』
忍んでいる為念話で会話していたエイミー達は種神兵が発進している
隙を狙い城塞内部へと侵入を果たしたが中へ入った三人は驚きを隠せなかった。
「何これ!?SFじゃん、違う浪漫で魅せてくれるなんて最高過ぎる」
「本当に謎の深まる敵ですな。外のファンタジーさとは真逆の
宇宙戦艦の内部の様な作り!」
『ほんと映画で見たのといっしょなのー』
神樹城塞ジュピタを欺き内部への潜入を果たしたエイミーとロイド、マーラが
見たものはSFで見る様な巨大な格納庫で次々と機械に運ばれて来る種子が
飛行甲板に降ろされるとコロコロと転がり出撃口より発進して行く姿だった。
新たな浪漫に喜ぶエイミーとそれを楽しむロイドとマーラ。
舞台を変え、SF感満載の城塞内でのジュピタ攻略戦が始まろうとしていた。
ジュピタ内部へと侵入したエイミー達。
次回は「覚醒!翠雲仙風扇バール」です。
※誤字修正




