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川野課長の憂鬱〜ブルーでライトな横浜凱旋〜  作者: 桃山あんづ


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42/50

今更

チキンソテーや味噌汁の良い香りが漂う中、川野は山本をソファーに座らせ、自身も隣に腰を掛けた。


そして、しばらくの沈黙の後、意を決して話し出した。


「実は、この前の飲み会で、恵梨ちゃんが佐渡君に本当の事を言ってしまったの⋯。」


「本当の事?」


「うん⋯。恵梨ちゃんが佐渡君とその、以前⋯一夜を過ごしたって言ってたでしょ?⋯あれは、恵梨ちゃんの嘘だったんだって。」


「えっ!?そうだったの?⋯光はいつから、それを知っていたの?」


「最近。恵梨ちゃんとバディ組んでから、しばらくして。」


「そんなの⋯初耳だよ。」


両手で頭を抱える山本。


「黙ってて、ごめんっ!私も驚いたけど、だからってどうする事も出来ないし⋯。佐渡君に打ち明けるのも止めたんだけど⋯。」


「それって、俺にも関係あることじゃん。すぐに言って欲しかったよ。⋯⋯恵介、相当傷付いただろうな。俺、アイツにすごく悪い事しちゃったな。光の事、本気だったの知ってたのに⋯奪うなんてことして。」


山本は、青ざめた顔を手で覆い、俯いた。


「フゥ⋯。今まで、恵介にも非があるからって、自分を正当化して来たけど⋯。一体、どうすれば良いんだろう。」


ひどく落ち込む山本を見て、川野は咄嗟に彼の膝に手を置いた。


「ごめんっ、今はちょっと⋯。」


そう言って山本は、川野の手を払うように立ち上がり、乱暴にエプロンを脱ぎ捨てた。

そのままサイフと鍵を握り、家を出て行こうとしている。


「待って!」


彼の後を玄関まで追いかけ、目に涙を浮かべる川野。


「⋯どこに行くの?」


「⋯ちょっと出てくる。夕飯は勝手に食べて。」




ガチャンッ―


山本が行ってしまった。


その場で泣き出す川野。


おおよそ、こうなる事が分かっていたから、今まで山本に言い出せなかった。

真相を知ったところで、苦しむだけで他に何が出来るというのか。


2人が別れて、代理デートの前からやり直せば良いのか?


時間は決して巻き戻せないし、今まで積み上げて来たものや、それぞれの感情をリセットする事なんて出来やしない。



川野は、山本が作ってくれた夕飯に一口も手を付けず、寝室の布団に潜り込んだ。



どれだけ泣いただろうか⋯。

泣き疲れて、川野はそのままウトウトと眠りにつこうとしていた。




カチャンッ―


玄関のドアの鍵が、そっと開く音がした。


(哲也君が帰って来たっ!)


目をかっ開き、ベッドから飛び起きる川野。


すると、ドスンッ!と玄関の方から鈍い音がして来た。



「ふふふっ、何やってるんだよっ!」


「へへへっ、お前もコケてるじゃないか。」



山本が、大声で誰かと話している。

どうやら、家に誰かを連れて来たようだ。


嫌な予感がして、恐る恐る玄関を覗き込む川野。



「光!ただいま〜☆」


「川野さん!どうも、今晩はっ☆」



彼女の視線に気付き、陽気に挨拶をする2人。


そこには、靴を半分履いたまま廊下に倒れ込んでいる、山本と佐渡がいた。





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