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川野課長の憂鬱〜ブルーでライトな横浜凱旋〜  作者: 桃山あんづ


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4/5

揚げ物は、揚げたてが一番

川野は、課長としての初日を何とか終えた。

残業はあったが、今日は比較的早く、仕事を切り上げる事が出来た。


横浜駅でJRから赤い電車に乗り換え、吊り革に掴まる川野。


外は暗く、車窓に反射し、写し出された彼女の顔は、とてもやつれていた。



最寄り駅に着き、川野はスーパーに寄って、夕飯の材料の買い出しをした。


今日は、山本の方が残業で帰りが遅いようで、川野が料理に腕を振るう予定だ。



「よしっ、始めますかっ!」



さっそく家に帰り、支度をする川野。

今日のメニューは、片手で数えられるくらいの彼女の得意料理の中の1つ、唐揚げだ。


料理酒と醤油と、おろし生姜&ニンニクで鶏肉を漬け込み、その間に、付け合わせのサラダと、大根とわかめの味噌汁を作っていく。



生姜とニンニクはすり下ろさない。チューブから出す。

出汁なんて取らない。だしの素パラッパラッで十分だ。

ドレッシング作り?市販で美味しいものは沢山ある。



川野は、食品メーカーの企業努力の賜物を駆使し、どんどんと調理を進めて行く。



「⋯!!ごはん炊くの忘れてた!」



慌てて、米を研ぎ出す川野。

山本からの帰宅連絡はまだなので、早炊きすれば間に合うか?



ピーッ―



「よしっ!後は何とかなるでしょ。」



炊飯器のスイッチを押して、次に川野は、唐揚げを揚げる準備をし出した。






カチャッ、ガチャッ―



「ただいまぁ〜。」



ちょうど唐揚げが揚がった頃に、山本が帰って来た。



「哲也君、お帰りなさ〜い!会いたかった〜!」



その愛しい姿を見て、川野は思わず彼に飛びついた。



「ふふふっ、何〜?光、相当疲れたの?」



川野は、仕事で疲れた時、山本に思い切りハグをして癒やしてもらう。

そのため山本は、川野が抱き付く力のレベルで、疲れ度合いが分かるまでになっていた。



「うん。色々あった⋯。でも何より、哲也君に会いたかったんだよ〜。はぁ⋯、落ち着く匂い。癒されるわ⋯。」



山本の背中に腕を回し、ワイシャツに顔を埋める川野。

至福のひと時だ。



「ふふっ、お疲れ様。俺も会いたかった⋯⋯。ねぇ、光、いい匂いするね!今日は何作ってくれたの?」



「えへへっ、今日は唐揚げです!」



「イェーイ☆光の唐揚げ大好き!」




食卓に用意された、山盛りの唐揚げとハイボール。

サラダと味噌汁も添えてあるが、ご飯はまだ炊けていない。


「乾杯!いただきまーす(グビグビ)⋯はぁっ。(サク、モグモグ)ん〜!揚げたて、美味し過ぎるんだけどっ。」


「美味しい?良かったー!では、私も(グビグビグビグビ)⋯ふぁぁ〜、喉が一気に開いたわ!(サク、モグモグ)うまっ!揚げ物最高。」



「俺、唐揚げは光より、上手くなる自信無いなっ。ねぇ、これからもずっと、作ってね。」



「うん、もちろん!哲也君の美味しい料理も、まだまだ沢山食べさせてねっ。」



相変わらず、ラブラブな2人。


山本は、自分の方が料理が上手いことを鼻にかけず、川野の料理を毎回ベタ褒めしてくれる。


その優しさに、川野はいつも癒されている。


彼女は、褒められて伸びるタイプなので、今は片手で収まるくらいの料理のレパートリーも、山本の褒め上手のお陰で、すぐ増えて行くであろう。




「ねぇ、光。⋯⋯今週末、歓迎会の次の日だけど、本当に大丈夫?」



ふと、山本が川野に尋ねた。



「うん。⋯⋯めちゃくちゃ緊張すると思うけど、失礼の無いように頑張るからね!歓迎会も、ちゃんと1次会で切り上げてくるし、飲み過ぎないようにするからっ!」



川野はそう意気込んで、唐揚げを頬張った。



実は、今週末は山本の実家に、挨拶に行く予定だ。


職場の環境も変わり、落ち着く暇もない川野だが、山本との結婚の道は、順調に進んでいる。



川野の実家には、プロポーズの後すぐ、2人で挨拶に行った。


川野の家族は、両親と3つ年下の妹がいる。


容姿端麗の山本を見て、なぜこんな美青年が、どんな理由で光を嫁に貰いに来たのか?と不思議そうにしていた家族であったが、彼のふとした微笑みを見て、川野家全員トロけてしまった。


その笑みは、当然可愛らしいものであったが、その顔を向けた先に光がいた事で、周りの家族は、彼は心から彼女を愛しているのだと、確信したのだった。


その後、酒はいける口の山本は、酒豪の川野父と意気投合し、深夜まで飲み明かした。



すっかり気に入られた彼は、川野家全員の心を奪い、見事に結婚の許可を貰ったのだった。



次は、川野の番だ。

山本の家族と、ちゃんと良い関係を作れるよう、頑張るしかない。





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