ゲームは楽しいですか?
そのうちに、公園中を回ってウォークラリーのチェックポイントを設置していた、今井・佐藤・坂本の3人が、広場へ戻って来た。
今井は28歳の男性社員で、身長は川野と同じ165cmくらいの、ぽっちゃり体型のお洒落さんだ。
普段はスーツの下に、チェック柄のベストやシックな色合いのサスペンダーを身に付けている。
黒縁メガネをかけていて、天然パーマを生かした、ゆるいアフロの様な髪型をしている。
佐藤は今井と同じく28歳の男性社員で、身長は170cmくらいの、ひょろっとした体型をしている。
力仕事は得意ではないが、工業大学の出で、電気系統の仕事はお手の物だ。
切れ長の目をしていて、ストレートな長めの黒髪を耳に掛けたり、後ろで一つに束ねたりする時もある。
坂本は26歳の女性社員で、身長は160cmくらいの口数少なめなサブカル女子だ。
出勤時はあまり着飾ること無く、グレーのスーツ姿なのだが、休日は耳と口元に、大きめのシルバーのピアスをいくつも付け、お気に入りの古着を身に纏っている。
下北沢や中野が、彼女のお気に入りスポットらしい。
また、オカルト好きで新しいネタを掴むと「川野さ〜ん」とニヤニヤ笑いながら近寄って来て、そのネタをこっそり教えてくれる。
「ハァ⋯、ハァ⋯。山口主任〜、ちゃんと設置して来ましたよ〜!」
先頭を歩いていた今井が、息を弾ませながら言った。
後ろを歩いている佐藤と坂本は、慣れない山道のせいで、声を発する事も出来ないくらい疲れているようだ。
「ありがとう!少し休んでて。こっちの輪投げと射的は、セッティング始めたからっ。あとは、ヨーヨー釣りだね!」
そう言って山口はニコっと微笑み、Tシャツの袖を肩まで捲り出した。
「さて姉さん、もう一息ですね。射的の景品を並べましょうっ。」
「はいよっ!」
川野も、乱れてきた髪の毛を、再び後ろで1つにまとめ、意気込んだ。
シュッ、シュッ、シュッ―
しばらくすると、射的コーナーの隣で今井がヨーヨーの準備を始めた。
この、彼のヨーヨーを作る手捌きは格別で、大智と真は前のめりになって、完全に見入っている。
「今井さん、凄いですね〜。」
大智が、興奮気味に言った。
大智の隣にいる真は、次々と出来上がっていくヨーヨーに集中し過ぎて、ポカンと口を空けている。
「そうだろ〜?俺は風船の扱いが得意なんだっ。イベント中はバルーンアートもやるから、何かリクエストあったら、作ってやるからな!」
ニヤリと歯を見せて、今井が笑った。
彼はバルーンアートも得意で、こういう家族向けのイベント時に大活躍する。
技術ももちろんだが、丸くて愛嬌がある彼のフォルムが、特に子供達を惹きつけるのだ。
「えっ?良いの?じゃあ、俺は恐竜!」
真が、目を輝かせて言った。
「俺は、う〜んと⋯後で言うね!」
兄の大智は、作って欲しいものが沢山思い浮かび、迷っているようだ。
その姿を、微笑ましく眺める川野。
「良いなぁ〜、バルーンアートなんて難し過ぎて、私には出来ないからな〜。凄いっ!」
川野は以前、何度か今井に教わったのだが、途中で訳が分からなくなり、謎の物体をいくつも生み出してしまった。
「兄貴はせっかちだから、俺の説明をちゃんと聞かずに、先にやっちゃうんだから。ゆっくりやれば出来ますよっ。」
今井はそう言って眉毛を上げ、目を大きく見開きながら微笑んだ。
彼も、川野の性格をよく知っている一人で、彼女のそそっかしい所に突っ込みを入れる役を、自然と担っている。
そして彼は、川野が時折見せる“男気”を気に入り、数年前から彼女の事を“兄貴”と呼ぶようになった。
ゲームコーナーの設置も無事に終え、ついに公園イベントがスタートした。
役所や大型スーパー、駅の掲示板などにポスターを貼らせてもらった甲斐もあり、イベント目当てで来園するゲストが多い様だ。
「いらっしゃい!100円で10回投げられます。」
輪投げコーナーは、木村親子が担当している。
元気な木村さんが慣れた口調で接客をし、大智と真は輪投げの点数を計算したり、景品を渡したり、一生懸命動いてくれている。
ヨーヨー釣りは、今井・坂本の担当だ。
ヨーヨーを沢山浮かべたビニールプールの周りにどんどん客を案内し、器用に対応している。
射的は、川野と山口の担当だ。
子供も大人も、本気で景品を狙って来る。
その姿を見ているだけで、こちらもワクワクして楽しいので、2人は客がコルクを弾く度に、オーバーリアクションをして場を盛り上げている。
残る佐藤は、ウォークラリーのスタンプを全て埋めたゲストに、公園側と相談して制作した、記念キーホルダーを手渡しする役だ。
朝イチで息を切らしながら、ウォークラリーのルートを一周してきた彼は、そのハードな道のりを身をもって知ったので、頑張ってスタンプを集めて来た子供達を“凄いっ!”“偉いっ!”と惜しみなく褒め讃えている。
タープの日陰にいるものの、昼に差し掛かると日差しが強く、気温も上昇して来た。
時折、汗を拭きながら、それでも笑顔で接客をし続けるメンバー達。
「昼時になったので、落ち着いてきましたね。僕、ここ入るので、良かったら木村さん、休憩行って下さい。今井君の所も、どちらか休憩行って大丈夫だよ!佐藤君は、次までちょっと待っててね。」
状況を見ながら、的確に指示を出す山口。
“また一段と、頼もしくなったな”
かつて、山口の教育係をしていた川野は、現場をスムーズに仕切る彼の姿を見て、感慨深い気持ちになった。
「キッチンカー、どれも美味しそうだよね!ホットドッグでしょ?タコスでしょ?アイスやチュロスもあったし⋯何食べよっかなぁ♪」
客足が途絶え始め、美味しい物へ興味が行く川野。
朝からずっとキビキビ動いているので、先程からお腹が鳴りっぱなしだ。
「はははっ、姉さんお疲れ様です。次、休憩行って良いですからねっ。」
川野が食べ物の話をしだすと、山口はいつもより、よく笑う。
「私は後でいいよ〜!次は、山口君が行きなさいっ。課長命令です。木村さん達が戻って来たら、私が佐藤君と代わるから。」
「いいえ、今日は僕がリーダーなので。リーダーの命令です。さっきから、姉さんのお腹の音、だいぶ聞こえてますよ?」
山口がイタズラな目をしてニヤニヤしている。
もちろん、彼は冗談で言っているのだが、本当に腹の音を連発していた川野は、片手でお腹をぐっと押さえ、すっかり耳を赤くしてしまった。
「⋯⋯こんにちは〜。射的やりたいんですけど。良いですか?」
「いらっしゃいませ!100円になりますっ!」
客に声を掛けられ、慌てて対応する川野。
前を見ると、そこにはブスッとした顔の山本が立っていた。




