7. 作品が完成するとアドレナリンがドバドバ
クルアハはブランシュと気まずいお茶会をしていたら、なぜかデュドネの仕事場に転移していた。もちろん、眼前にはデュドネがいる。何を言ってるのかわからねーと思うがとクルアハは恐ろしいものの片鱗を感じていたが、そういえばこれあれだなと心当たりを思い出した。デュドネに渡した指輪に仕込んだ魔法に気合を入れたらクルアハが直行しますというものがあった。それかぁとクルアハは納得して、すんと落ち着いた。
「指輪ができたぞ!!!!!」
目の前のデュドネはいつになく興奮していた。心血を注いだ作品が完成した喜びと疲れでハイ!テン!ション!!!!になっているデュドネがクルアハの肩をぐわしと掴んだ。
「オメデトウゴザイマス」
クルアハはデュドネの勢いに気圧された。
「見てくれ!!!この指輪を着けているとある程度の攻撃を防御する魔法が展開される!!それに、1時間であれば水中や火の中であっても活動可能だ!!あと、防暑・防寒の機能付き!また、気合を入れるとこの部屋に転移できる。他にも念じるとチーズが出てくる等様々な機能がついて……」
クルアハはデュドネの熱の籠った説明をふむふむと聞いていると、徐々にデュドネの元気が萎んでいった。
「どうしました?」
「いや、すまない……。冷静さを欠いていた」
「なかなか面白い説明でしたよ」
「それに、急に呼びつけてしまった……。申し訳ない」
「呼び出しに従ったのは私の意志ですからお気になさらず。それに、気まずいお茶会から抜け出せて助かりました」
クルアハはいきなりスンッと落ち着いてしまったデュドネを心配そうに様子を窺った。熱弁時の爛々と輝く黒い瞳も綺麗だったのにとアンコールを願った。
「……あと、初めて会った時、あなたを愛する気なんてないと言って、……すまない」
「別に構いませんよ」
クルアハはうん?話が変わってきたなと片眉を上げた。
「僕がソレイユ公爵で魔道具の天才だから擦り寄ろうとしていると先入観があった。でも、あなたはきちんと僕に歩み寄ろうとしていた……。なのに、あんなひどいことを言って、……ごめんなさい」
「もういいじゃありませんか。今は、あなたが私に歩み寄ろうとしていらっしゃる」
「ありがとう。……あなたは優しい人だ」
クルアハは困惑した。なぜかデュドネが花のようなスッキリした笑顔でこちらを見ている。理由がわからないクルアハは不思議そうにデュドネを観察した。しかし、わからないなと早々にクルアハは考えることを放棄し、満面の笑みの美しさに浸った。幸せそうに笑うデュドネに似合う花は薔薇か牡丹かそれともダリアか。今度は花束でも渡そうとクルアハは思った。
「お茶会は抜け出してもよかったのか」
「……え?あーそうですね」
クルアハはデュドネに改めて聞かれ、言葉に詰まった。
「ダメだったんだな……」
「本当のことを言いますとブランシュ姫とのサシ飲みでした」
「それは……」
デュドネはあーあとでも言うように額に手を当てた。案外社会性のある人なのかもしれないとクルアハは興味深く思った。
「まっ、お暇しようと思っていたところでしたので大丈夫ですよ」
「ブランシュ様とは何を話した?」
素朴な疑問をデュドネはクルアハにぶつけた。
「公と幼馴染アピールをされました」
「まあ、そうと言えばそうか……」
デュドネは言われてみればというように頷いた。
「微妙な反応ですね」
「兄君の王太子殿下とは幼い頃同い年だからというだけで王宮で遊ばされたことがある。……そこにブランシュ様もいたような気がする」
デュドネも貴族の付き合いに翻弄されて時期があったのかとクルアハは同情した。
「……あと、結婚式をしないことは公の独断ではないかと言われました」
「……どう返したんだ?」
「どーでもいいこと聞かないでほしいをオブラートでたらふく包んだようなことを申し上げました」
「そうか」
「姫様は私と公の夫婦仲を気にしてましたよ」
「ならば、仲の良さを発信しないといけないな」
デュドネはそう言うと、魔改造した指輪をクルアハの左手の薬指に嵌めた。
「ありがとうございます。公からもらったと自慢しますね」
「……その、僕の方から言うのもおかしな話だが、お互いに堅苦しい呼び方や口調はやめにしないか、…………クルアハ」
やや申し訳なさそうに下を向いてデュドネは言った。もしや、デュドネは初めて会った時に言ったことや態度を申し訳なく思い、かなり引き摺っていたのかなとクルアハはやっと悟った。クルアハはそーゆー善性が大好きだった。可愛らしいし羨ましい。
「わかった。私もその方がしゃべりやすい、デュドネ」
「……この方が仲の良い夫婦に見られるかもしれない」
わだかまりが解けたようにデュドネはにっこり笑った。
「それもそうだ」
クルアハも釣られて笑顔になった。そして、贈るならダリアにしようとデュドネの笑みを見て思った。




