表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/42

3. 結婚式についてちゃんと話し合え

 とびきり美しいデュドネと初めて対面して、肩の力が抜けたクルアハはいつも通り職場に足を運び続けている。戦争が終わった後も仕事はある。副団長として部下に指示を出さなければいけない。組織人とはいろいろ大変だなと思いながら、日々は流れるように過ぎていった。

 そんななんてことのないある日、騎士団長・レヴィアンとのとりとめのない会話があった。二人は団長室でたらたらと仕事にまつわるようなまつわらないような会話をよくしているのだった。

「そういえば、私と王女の結婚式の日取りが正式に決まったよ」

 レヴィアンも戦争の功績が評価され、いろいろ褒美をもらっていた。その一つに、ブランシュ王女との結婚があった。噂では、王女がレヴィアンに一目惚れしたらしいが、たいていは身分違いで結婚までは許されない。一貴族に王族が降嫁することは滅多にないのだ。此度の婚姻も王弟を中心に反対もあったが、それ以上にレヴィアンの戦争での指揮、作戦が評価されたのだ。

「いつ?」

「ちょうど4ヶ月後」

 王女との結婚式は段取りから大変だったようだ。一生に一度だからと王女は服や式場にこだわったそうだ。クルアハはお金も時間もえらいことかかったと噂を耳にしていた。

「王女様とは上手くやれそう?」

「もちろん」

「それは何より。ならずっと大事にしろよ」

 クルアハはレヴィアンの顔に嘘はなさそうなので安心した。クルアハはレヴィアンがよければひとまずそれでよいのだった。

「君らは結婚式をやらないらしいね」

「ああ、いい機会だからね。各地の孤児院に寄付をしようと思ってさ。過去の己を救うっていうのも中々悪くない。……しかし、知らなかったよ。たかが結婚式に5000万ランとはね。まあ、孤児院に寄付って考えるとはした金になんのかな。何かしら寄付金を管理する方法を考えた方がいいんだろうなぁ」

「……クルアハ、喋りすぎだ。俺相手に誤魔化そうなんて珍しい」

「チッ……」

 クルアハは面倒そうにレヴィアンを見た。クルアハは嘘をつきたい時、煙に巻きたい時は話からズレたことをベラベラ喋る癖があった。

「孤児院に寄付なんて方便だろ。なぜ式をやらない。旦那のわがままか、奥さん?」

「好みの顔に言われちゃあね、仕方ないじゃん」

「……そんなによかったのか?」

「見ればわかるさ。闇のように黒くたおやかな髪も素晴らしいが、特に目元が最高だった。まつ毛バサバサ、目は切れ長の麗しい三白眼。最高だった……!なかなかお目にかかれない」

「相変わらず目付きの悪い美形が好きだな」

 目を瞑ってうっとりしだしたクルアハをレヴィアンは呆れたように冷めた目で見た。

「だが、それがどうした。顔がどうであれ、行動に変わりない薄情がお前だ。どっちが結婚式をやらない話を持ち出したかはしらないが、寄付の話はお前が持ち掛けたな。あらかじめ断る理由を考えていたな」

「……バレた?結婚式、メンドーじゃん」

 クルアハは戯けたように右目を瞑った。結婚式は避けたいなと考えていたクルアハにとって、デュドネの提案は渡りに船だった。

「気持ちはわかるが、俺は見たかったなあ、クルアハの花嫁姿」

「気色悪」

 クルアハは固い表情で目をくわっと見開いた。

「正直な話、お前は結婚自体を断ると思ってた」

「団長のためになりますからな」

「良い部下を持ったらしい」

 レヴィアンはクルアハの返答を聞くと珍しく眉間に皺を寄せ、苦い顔をした。

「でね、副団長。君達の夫婦仲が早くも冷え切っていると噂だよ」

「……上司に夫婦仲を指摘されるとはね」

「最後に会ったのはいつかな?」

「……ん?」

「まだ一度しか会っていないなんてことはないだろうな」

 クルアハが3ヶ月程前に初めて会った以来、デュドネとは接触していないことを知った上でレヴィアンは言っているのだ。性格の悪い奴とクルアハを口をひん曲げた。

「仲立ちされた国王陛下も案じていらっしゃる」

「案ずる勿れ」

 取り付く島もないようにプイッとクルアハはそっぽを向いた。

「魔法省の異端児と我らが騎士団の英雄が不仲だとみんな何かと気を使う」

 不仲というより仲は無しの無仲なんだがなぁとクルアハはどうでもいいことを思った。だが、団長の言っていることが正論であることもわかっていた。魔法省の異端児で公爵でもあるデュドネと上手く付き合えば、騎士団にかなりの利をもたらす。そして、レヴィアンにとっても……。

 何にせよ、仲が良いことに越したことはない。部下が結婚生活どうですかと聞くに聞けないような配慮を感じていた。大変居た堪れない。

「……わかった。何とかするよ」

 クルアハは観念した。夫婦仲が悪いわけではない。良いも悪いも発生していない。

「俺もお前が心配なんだ……」

「よく言うよ」

 クルアハはもう開かない左目を押さえてため息をついた。

 デュドネは忙しいから、夫婦生活を営む気はないと言っていた。クルアハが嫌いなわけではない、はずだ。ならば、お手軽簡単に夫婦円満感をアピールできる方法を考えようとクルアハは思った。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ