渡辺けんやの野望
運命なのだろうか。
決勝戦の相手は親父のてつろうだった。
親父にとって、俺はどこまでいっても「まだまだ子供」であり「いつまでもヒヨッコ」だった。
親父の店で店長代理をしている以上、親父を越える事は出来ないのでは無いかと考えていた。
親父を越えたい。
…いや、親父に一人前だと認めて欲しい…と思っていたのかも。
そんな事を言ってるうちは半人前だ、と親父に言われそうだが…。
そして俺は、親父との直接対決に、こんな形でとはいえ勝利した。
2億6千万。
ここで欲を出す必要はない。
これを元手に、俺は親父を越えてみせる。
手始めに800万の車を買った。
転売するなら車が手っ取り早いと思ったのだ。
1割増しなので880万ポイントを消費する。
これを転売したのだが…700万にしかならなかった。
「新古車だってのに足元見やがって…」
そこで、タキシードから貰った名刺があったのを思い出す。
「大きな商売をご検討でしたらご相談下さい」
と、渡されていたのだ。
「当社を通して注文のあった商品でしたら、原価で買い取り致します」
連絡をすると、あっさりスポンサーとしての契約を結べる運びとなった。
元値を880万Bで購入して800万の現金で換金出来るシステム。
会社を立ち上げ、資格を取得するなどの手間は当然かかるが、
最初の車を転売した利益で準備を整える。
翌月には郊外に大きな土地も購入した。
(勿論これも例のアプリのポイントで、である)
毎月一台ずつしか購入出来ないのが難点だが、欲を出してあまり高い車を買って在庫を余らせても意味はない。
例のアプリなら現金で購入する訳ではないので、ある程度高い車でも気軽に手が伸びるだろう。
そのギリギリの見極めが難しそうだが、少しずつ台数を確保して市場を調査すれば良いと気楽に考えていた。
ネットでの取引がメインとなる為、安くて大きい土地を郊外に購入したのだが…管理者をどうするかで悩んだ結果、自分が近くに住んで管理する事にした。
…というのも、例の廃墟でのバトル以降、深夜勤のダブル渡辺が無断欠勤していたのである。
真面目そうな二人だったのに…自分に見る目が無かったのだろう。
その反省を踏まえて、自分で管理するべきだと考えたのだった。
コンビニの方は新たに店長代理を雇い、月に一度ペースで様子を見に行く事にした。
順調にいくかと思ったのだが、半年を待たずに事態は急変する。
なかなか思うように注文が来ない。
焦っても仕方がないと思いつつ、もう少し値段の安い車を仕入れようかと考えたのだが…アプリが見つからない。
ばいばいげぇむのアプリも見つからなかった。
一切の予告なしで配信が終了していたのだ。
「…おい、嘘だろ?」
慌ててタキシードの男に連絡を取ろうとしたが、繋がらない。
ばいばいげぇむ突然の配信終了は世間をザワつかせた。
…が、その騒ぎもすぐに風化する事となる。
多くの者は少額の交換で満足していたし、
高額の交換を狙ってポイントを貯めていた者も実害があった訳では無い。
元は完全無課金の無料アプリである。
けんやの手持ちポイント残高は1億B以上あったのだが…
それを訴えたところで相手をしてくれる者は誰もいなかった。
~けんやEND~




