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ばいばいげぇむ  作者: 硝子の騎士
39/41

渡辺かずまさの挑戦

最終日。


28日目の決勝戦を迎えた。


廃墟ビルの最上階、32階でエレベーターを降りると、先行の部屋の前に渡辺あいなが立っていた。


決勝戦の対戦相手。


あのコンビニの常連の女子高生。


かずまさに向かって彼女は微笑むと、

「私はAのカードを選ぶからね♪」

そう宣言して先行の部屋へと姿を消した。




決勝戦である。


勝者は2億6千万という大金を手に出来る。


運命のカウンターは、かずまさが入室すると同時に運命の時を刻み始めた。


心理戦。


彼女が宣言した理由は明らかに誘導である。


裏をかくなら答えはBのカード。


…と、予測させてのAのカード。


ここまで来て迷う事に意味など無いが、かずまさは素直に頭を抱えていた。


彼女が善意から選ぶカードを教えた可能性は…ゼロだ。


そんな殊勝な人間が決勝戦まで残る筈がない。


悩んだところで意味など無い。


意味など無いのだが、部屋に入ると同時に迷わず彼女はカードを選んだ。


ここでBのカードを選ぶのは不誠実なんじゃ…

いやいやいや、待てよ俺。


それも含めて彼女の策略だろう。


始まる前から勝負を仕掛けて来たと考えるべきだろう。


あっという間にカウンターは残り1分を切っていた。


「…俺は、自分の直感を信じる…!」







俺は勝負に勝利した。


最後の最後でこんなにも痺れる展開になるとは…


背中にびっしょりと汗をかいていた。


「おめでとさん、流石あっしが見込んだ男だぜ」


テーブルの上でピョコピョコと、小さなヌイグルミが嬉しそうに踊っている。


後ろのタキシードはヌイグルミが見えていないようなので、やはりこれは俺の幻覚なのだろう…


「これで…ようやく終わった…んだよな」


「ん?ん~…まぁ、ここで降りるのもアリなんじゃね?」


何となく含みのある言い方だが…


そもそも途中で降りれないルールだったから、優勝まで突っ走ったものの、本当なら1千万を越えた時点で十分な結果だったのだ。


「ここで止めれば2億6千万だぞ。無理して続ける理由が…」


「ここだけの話なんだが…10億あれば1人だけ助ける事が出来るんだぜ?」


ヌイグルミは踊るのを止めて、そんな事を言い出した。


「助ける?…どういう意味だ?」


「いや、あんたが気にするような事じゃないんだが…このままだと他の15人とは、ここでバイバイする事になるってだけさ」


ヌイグルミの言ってる意味が分からず、急に不安な気分になった。


「バイバイするってのは…どういう意味なんだ?」


「そのまんまの意味さ。人間1人の値段ってのは…自分らが考えている以上の値打ちがあるらしいぜ?」


10億で1人を助けられる…だと?


つまり、あと2日挑戦を続けなかった場合、他の15人は『何らかの理由で助からない』という事なのか…!?


「いや、あんたは十分よくやったさ。後は他の奴らの分まで楽しんで暮らせば良いだけだぜ」





俺は挑戦を続ける事にした。


自分が選ぶカードを宣言したあいな。


その宣言通り、正解はAのカードだった。


彼女は何故カードを宣言したのか。


裏の裏をかいたつもりだったのか、それとも…


…それを本人の口から聞きたかったから。


我ながらとんでもない馬鹿な事をしていると思った。


しかし、ヌイグルミの言葉を聞いてしまった以上、どれだけ豪遊しても他の15人の顔を忘れられそうに無かったのだ。


29日目は再びスマホでの勝負。


簡素な画面だが、この選択に人の命が懸かっているかもしれないと考えると指が震えた。


勝利。


ヌイグルミはつまらなそうに床を転がっている。





「まぁ、ガッカリすんなよ。また挑戦してくれや」


ヌイグルミは嬉しそうにそう言って手を振った。


最終日の勝負で俺は負けた。


スマホの数字は「獲得:0B」


「他のみんなは…どうなるんだ?」


「知ったら、知ってしまった事を死ぬほど後悔すると思うぜ?」


ヌイグルミの無表情な顔は雄弁に語っていた。


「生きて出られて良かったな」…と。



~かずまさEND~

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