渡辺のれんの豪遊
2億6千万。
今まで稼いできた生涯賃金を遥かに上回る金額。
それを、わずか1ヶ月で手にしてしまった。
あの廃墟でのバトルを勝利したのれんは、28日で挑戦を止めた。
4日ぶりに帰宅した自宅。
妻には特別ステージへの参加を内緒にしていた。
全て終わってから驚かせようと思っていたのだ。
まぁ、途中で全てを失うかもしれないのだから、ぬか喜びをさせたくない…というのもあったのだが…
結果から言うと無用な気遣いだったようだ。
家には妻の姿はなく、
代わりに妻の筆跡の置き手紙が残されていた。
『実家に帰ります』
…こっちの方がよっぽどのサプライズだった。
のれんは翌月家を購入した。
勿論アプリのポイントで。
都内の一等地、土地付きで時価1億円相当。
更に翌月、別の物件を1億4千万ほどで購入。
アプリのポイントはほとんど使いきってしまったが、片方に自分で住み、高い方を転売するつもりだったのだ。
更に翌月、数千万円のクルーザーを転売し、ようやく現金を手にしたのだが。
のれんは豪遊した。
豪遊し尽くした。
毎晩のように飲み歩き、現金はあっという間に底をつく。
しかし、転売するつもりだった家に買い手は付かず、片方の物件の固定資産税ですら支払えなくなる事態に陥っていた。
追い討ちをかけるように体を壊す。
歳をとってからの無茶な遊びに体が悲鳴をあげたのだった。
病院の白い天井を見つめながら小さく呟く。
「私は勝負に勝ったんだ…」
人生の最期に最大の勝負に勝利した。
得られたものと、失ったもの。
病室に看護者の姿はなく、見舞いの姿もない。
「私は…勝ったんだよな…?」
その問いに答える声は無かった。
~のれんEND~




