特別ステージ
「…ですから、優勝者が決定するまでは誰もこの建物からは出られませんし、通信機器もお返し出来ません」
これ以上言い合っても事態は好転しそうに無かった。
レストランで、たくみは我が目を疑った。
拘置所に居る筈の強盗未遂犯、渡辺すごろくが居たのだから驚くなというのも無理な相談である。
どこにどんな圧力を掛けたところで実現は不可能だと思えた。
しかし、事実すごろくはこの企画に参加している。
タキシードの男にスマホを返すようにと頼んだのだが、返事は全く変わらなかった。
「あいつは犯罪者なんだ。これが終わるまで絶対に逃がすなよ?」
「そこはご安心下さい。終わるまでは誰1人外には出られませんから」
タキシードの男は絶対の自信があるらしく、そこは力強く請け負っている。
…今はその言葉を信じるしかなさそうだ。
たくみにしても今の獲得ポイントを放棄してまで正義に徹する事は難しかったのだ。
本戦が始まる前に『投票結果』なるものが発表された。
本戦は1対1でのバトルとなるのだが、
先攻と後攻に分かれる事になるらしい。
先攻がAとBのどちらかを選択する。
後攻は先攻がどちらを選んだかを当てる。
ルールは至ってシンプルだ。
相手の姿が見えない状態なので、表情を読んだり誘導尋問をする事も出来ない。
先攻、後攻の優劣は無いように思える。
後攻は、先攻が選んでから10分以内に決めなくてはならないので、精神的な負担は後攻の方が大きそうだが…
それが、この『投票結果』の順位に左右されるらしい。
誰がどんな意図で『投票』したのかは知らないが、この順位の高い方が先攻。
低い方が自動的に後攻となるらしい。
『投票結果』
1位.酒井たもつ 10,587P
2位.安堂かえで 10,432P
3位.伊藤あや 10,225P
4位.渡辺あいな 10,108P
5位.渡辺かずま 10,098P
6位.渡辺てつろう 10,087P
7位.渡辺かずまさ 10,085P
8位.渡辺らむ 10,065P
9位.渡辺しゅうや 10,031P
10位.渡辺すごろく 10,010P
11位.渡辺みやび 10,002P
12位.細波しろう 9,953P
13位.渡辺ふみや 9,935P
14位.渡辺けんや 9,933P
15位.渡辺たくみ 9,928P
16位.渡辺のれん 9,910P
…運だけのゲームなのだから順位に意味は無いのだろうが…何となく凹む結果だ。
「…これは何を基準にした投票なんだ…?」
まぁ、分からない事を気にしても意味は無いだろう。
今はこれから始まる直接対決に集中するだけだ。
本戦の会場となる最上階には小さな部屋が2つ用意されていた。
ドアに「先攻」「後攻」とそれぞれプレートが付いていて、タキシードの男が扉の中へとプレーヤーを案内する。
部屋の中はプレーヤーとタキシードの男のみしかいない。
部屋の中央に簡素なテーブルがひとつ。
その上にカードが2枚置かれている。
天井と全面の壁にカメラが設置されていて、プレーヤーの表情と、選択するカードにそれぞれピントが合わせてある。
正面の壁にはカメラの他に、両方の部屋にリンクしたカウンターがあり、今は「10:00:00」を表示している。
先攻側がカードを選ぶとバトル開始。
後攻はカウンターの数字がゼロになる前に、どちらかのカードを選ばなくてはならない。
最初の挑戦者がタキシードの男に案内されて席に着いた。
…いよいよ特別ステージの挑戦が始まる。
…ここまでがコンビニに「たまたま」居合わせた12人共通の物語です。
同時進行という形で進めて来ましたが、この先はIFストーリーとなりますので、他の人の物語とは違う結末…という事になります。
本戦の様子も描こうかと思ったのですが、描写が地味で長いだけになりそうだったので、バッサリ省略させて頂きます。
それぞれの登場人物が優勝し、28日を迎えたところから続編を続けたいと思いますので、そのつもりで最後までお付き合い下さい。