バブルの塔
『バブルの塔』
32階建てのテナントビル。
建設途中でバブルが崩壊し、テナントは一切入らないまま今は廃墟として佇んでいる。
今回の『特別ステージ』の舞台となる。
その屋上で、ゆうまは例のコンビニを見下ろしていた。
「ルール違反…だよな?」
背後に気配を感じると、振り向く事なく静かに問いただす。
「いやいや、ギリギリセーフやろ。本戦前に脱落されたんじゃかなわんし…」
「いいじゃん、これで全員の駒が揃ったんだし、本戦で叩き潰してやればいいにゃ♪」
ゆうまも別に仲間を責めるつもりはなかった。
「…まぁ、いいけど次はないよ?」
主催者側も予定通り4人の特別参加者を送り込んできていた。
「こっからが本番や。誰が勝っても恨みっこなしやで?」
気配が次々と消えていく。
それぞれの手駒のところへ戻ったのだろう。
「…さて、俺も行くか」
廃墟と化したビルの25階。
そのフロアは外観からは想像も出来ないほど整備されていた。
ワンフロアが丸々高級レストランのような造りになっている。
そこへ、最後の1人…渡辺かずまが到着した。
「こりゃ凄いや…普通に営業できるんじゃないのか!?」
「かずまさん、やっぱり貴方もですか…」
店に入るとすぐに、のれんさんが近寄って声を掛けてきた。
「のれんさん!?」
…見れば店内には、あの日コンビニに居た12人が勢揃いしている。
店の奥には見知らない客が4人。
「…どうやら皆さんお揃いのようなので、これより特別ステージの説明を始めます」
店の中央でマイクを持ったタキシードの男がゆっくりと回りを見渡す。
かずまものれんの隣の椅子をひくと耳を傾けた。
特別ステージは1対1の対決方式。
対戦相手はこれからクジで決めるようだ。
勝負は1日1回で4日間開催。
4日勝ち抜けた1人が総取りとなる。
ビルの30階にプレーヤーの個室がそれぞれ用意されていて、呼ばれたプレーヤーが最上階の対戦ルームにてバトルを行う。
「皆さんは上位者として、
それぞれ16,777,216Bを保有しています。
これを賭けて戦って頂き、最後に残った勝者が
268,435,456Bを総取り…となります」
「2億6千万…」
フロアが一瞬ザワつく。
そんな中、ふみやが手を上げた。
「4日って、まだ28日だよな?それ以降はどうなるんだ?」
「少し気が早い質問ですが…気になるのも当然ですね。勝利した1名は続けてあと2日挑戦を続ける事が可能です」
…つまり、4日のトーナメントを勝ち抜き、更に2日の挑戦に勝利すれば10億を手にする事が出来る仕組みだ。
「勿論、28日目の段階で降りて頂いても構いませんが…この4日間は降りる事は出来ません」
タキシードの男が先回りして補足事項を伝えた。
ここに集められた16人のうち、大金を手に出来るのは1人だけ…
24日の段階で特別ステージへ参加せず降りた者も2名いたが、ここへ来た以上は勝ち残るしかないという訳だ。
「インチキだ!そういう大事な事は先に言うべきじゃないのか!?」
すごろくが立ち上がって叫ぶ。
タキシードの男は慌てた素振りも見せず、涼しい顔で応答する。
「…1,600万を捨てて参加する権利を放棄されても良いですよ?その場合、相手の不戦勝となりますが…宜しいですか?」
「宜しい訳ないだろ!」
すごろくは納得いかないようだが渋々席に着いた。
「では、他に質問が無いようなので早速抽選に移ります」
皆が納得した訳ではないだろうが、進行は淡々と進んでいった。
案内された部屋に入ると、かずまはダブルベッドへとその身を投げ出した。
この部屋も高級ホテルと言われても納得出来そうなくらい整っている。
「毎回ここでこんな事をやってるのかな?」
窓際の椅子に腰掛けたゆうまに呟く。
「どうだろうね?同じ場所でやってたら噂くらいは耳にするだろうし…」
そういう噂を聞いた事は無かった。
…という事は、毎回場所を変えてやっているのかもしれない。
そこだけ見ても、とんでもないほどの運営費がかかっていそうに思えた。
「これってもう、ゲームのアプリで収まる話じゃないよな」
「毎月バラ撒いてる配当を考えただけでも普通じゃないだろ」
かずまは今更ながらにとんでもないゲームに手を出したのでは無いかと思えた。




