ばいばいげぇむ~らむ28歳~
親友だと思っていたのは自分だけかもしれない。
男子トイレに駆け込むみやびの背中を見た感想は正にそれだった。
強盗が刃物を取り出す。
やたらと冷静な中学生が活路を切り開く。
強盗のふいをついて、客の一人が撃退する。
何処からか沸いて出た男が強盗の身柄を確保する。
一連の出来事を、まるでテレビの中の事のように捉えながら、頭の中では別の事を考えていた。
友達を置いて逃げる。
こんな危険な状況に取り残されるという事実。
とはいえ、自分だけだったら男子トイレに逃げ込むという発想すら出来なかっただろう。
それを瞬時に判断して実行したみやびは凄いな、という思いと…
友達を置いて一人で逃げるって、どうなの?
という葛藤に悩まされている間に、強盗事件はあっさり解決してしまっていた。
男子トイレのみやびに声を掛ける。
その声は震えていなかった…はず。
予定はかなり狂ったものの、どうにかみやびの実家へと着いてリビングで乾杯をした。
みやびはずっとトイレを我慢していたらしく、私を置き去りにして逃げたというのは勘違いだったらしい。
色々な事が一度に起きすぎて気持ちが追い付かないでいる。
そして、とんでもない事を知った。
私とみやびは中学校も同じだったらしい。
私はてっきり高校に入って出来た友達だったと思っていたのに。
これで親友なんて…言えないのは私の方だ。
中学時代、クラスが一緒になった事は無い筈だし、部活が同じなら忘れている筈も無い。
ただ、どうしても中学時代のみやびとの接点が思い出せなくて、適当に話を合わせる事にした。
「それで、らむはまだ良い人出来ないの?」
みやびの突然の一言にドキっとする。
「私はまだそういうのは良いかな。今は仕事が楽しいからね」
台所に立つみやびに背を向けた形で曖昧に応える。
「あ~まあね~…」
みやびはそれ以上何も聞いてこなかった。
私とじゅんやとみやび。
高校3年間ずっと同じクラスだった。
じゅんやは埼玉から高校に通っていたので同じ中学だったのはあり得ない。
みやびと同じ中学だった。
何故かそれがずっと気になり、モヤモヤした気分だったが詳しくは聞き出せずにいた。
スマホのアプリを見せ合ったりして話の種が尽きる事は無かったけれど、みやびとの再会の宴はそれでひと区切りとなり、その夜はみやびの家に泊めて貰った。
10日後。
私はみやびと意外な場所で再会する事になる。




