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ばいばいげぇむ  作者: 硝子の騎士
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ばいばいげぇむ~ふみや48歳~

『渡辺ふみや探偵事務所』と書かれた扉を押し開けると、俺は来客用のソファーへとその身を投げ出した。


キンっ…という音を立てて、お気に入りのジッポでタバコに火を着ける。


紫色の煙が天井へと霧散していくのを目で追いながら、今夜の出来事を思い返した。


強盗事件の事は別にいい。


彼にもそこまでしなきゃならない事情があったのだろう。


まぁ、それだけの事である。


…問題なのはその後だ。


厄介な事になる前に店を出ようとしたのだが…

シャッターを上げた若い店員。


いや、見間違いだろう。


俺の勘違いでもいい。


刺されて死んだ筈の少年がコンビニで元気にバイトしてるなど…あり得ない。


被害者と加害者が同じ店でバイトしてるなんて、ジョークとしても笑えない。


…とりあえず、あのコンビニの店長の件はある程度材料が揃ったといえる。


クライアントであるオバサンは喜んで代金を支払ってくれるであろうだけの情報は手に入った。


「全く…なんて日だよ」


俺はため息と共にタバコの煙を吐き出した。




あの事件があってから既に9日が過ぎていた。

仕事は相変わらず片手で足りるくらいの数しかない状況だ。


例のコンビニ店長の件は未だ報告していない。

あまり早く片付けてしまうと足元を見られるかもしれない。

かといって時間をかけ過ぎて無能だと思われるのも困ったものだし、タイミングが難しい。


仕事は無いが、事件は起きていた。


スマホの中で、での話なのだが…。


『ばいばいげぇむ』


アプリの中で1日1回だけ二択のゲームに挑戦出来る。


そこで得られたポイントを、他のアプリで現物の商品と交換出来るというギャンブル紛いのものだ。

要はパチンコと同じ発想って訳だ。


なんとも胡散臭いアプリではあるが、中毒性が高い理由はその配当にある。


初日は1Bが支給され、成功すれば倍になる。


10日で千を。14日で1万を越える。


普通は怖くなって100万くらいで降りる。


二択とはいえ失敗すればゼロになるからだ。


リアルタイムで何人がチャレンジしているのか知る事が出来るが(これも煽り目的なのだろう)20日を過ぎると挑戦者も激減する。


今日は24日目。


スマホの画面下の表示は…

「獲得:8,388,608B」


《挑戦しますか?YES/NO》


この表示と3時間ほどにらめっこをしていた。


今の段階で降りれば830万が手に入る。


いや、厳密には830万相当の商品1点と交換出来る…のだが。


「おいおいおい…マジかよ…」


スマホを握る手が滅茶苦茶汗ばむ。


何度拭っても出てくる汗で脱水症状を起こしそうだ。


24連勝する確率はいくつだ?


単純に考えれば1/1600万


わずか0.00001%である。


にも関わらず、この段階で挑戦を選んだ奴が208人もいるらしい。

降りた人数は75,803人で圧倒的に多い。


挑戦する人間の気持ちも分かる。


1/2の確率に打ち勝てば1千600万。


それが3千万、6千万…数日後には1億を越えるのだ。


のるかそるか。


ここで躊躇わずにYESを押せる奴は頭がどうかしているのだろう。



震える指で「YES」を選択。


もう後戻りは出来ない。


右のカードか…


左のカードか…


穴が空くほど画面を睨むが、透けて見える筈もない。


俺はそこから更に3時間ほどにらめっこを続けたのだった…。



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