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マッチ売りの少女2100  作者: ぽんた7
約束
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新しい家族

 その後。無事22世紀になった。


 ポリーらが未来に飛び去ったところでクランチは消滅。歴史はまた一本に戻った。

 クランチが発生したのはポリーが来たせい、クランチが消滅したのもポリーが来たせい。

 ポリーたちが21世紀に来なかったら何もなかったのでは?という仮定は考えられるにしても、その辺は彼らには今後の探求の対象であり、22世紀のリンにとっては割とどうでも良い事だった。ポリーとイッヌがいなかった人生なんて彼女には考えられない事だから。


 さて甲田の力添えもあって、リンは無事に榊の養子となった。甲田はちゃっかりリンの叔父さんポジションを獲得している。監視下に置きたいのもあるだろうが、個人的に気になって仕方ないというのが本音だろう、と榊は思っていた。まあ保護者が増えるのはありがたい。


 燈子の家は普通の建売の一軒家でセキュリティ的に少々難があったため、榊はS市内にこじんまりした低層マンションの一室を借りて、リンとともに引っ越した。

 最初は少しぎくしゃくしていた二人だったが、ポリーという共通の知人について話が出来るのは榊だけだったので打ち解けるのにそれほど時間はかからなかった。


 リンの希望もあり中学の残りはそのまま同じ学校に通い卒業。美咲や健二からは残念がられたが、高校からはもう一度引っ越して首都圏の某国立大学の付属高校に入学した。次元格子から不完全でごく僅かながらも遠未来の演算能力と記憶容量を汲み出せるリンにとって国立高校の入試など児戯。何の関門でも無かった。


「なんか、ずるいよね私」


と言うリンだったが、榊はそれを笑って聞いていた。事故とは言え正式にポリーからもらったものだ。存分に使えばいい。


 本当なら学校なんて勉学としては不要なのだが、しかし特殊な来歴だからこそ人間関係を学ぶ事は大切だと榊は考えていた。二度も親を失った経験は軽くない。もっと人間に対する信頼を持ち直して欲しかった。


 あと将来どうするにしても、学歴はあったほうが何かと便利、という打算もある。


 榊は今後義理のチート娘が成し遂げる事を思うと年甲斐もなくわくわくが止まらない。ただ、自分の年齢的にリンの成長を最後まで見届けられないであろう事だけが残念だった。


 高校二年を修了したリンは、そのまま併設の大学に飛び級入学。入学後も本来飛び級に必要な3年を特例で1年短縮して大学院へ。そしてあっという間に博士課程もいくつか論文を出しただけの中途で切り上げて、22才で国立の理化学研究所・脳神経科学研究センターの研究員となった。専門は脳活動とそのデータ化、及び外部とのインターフェース。専用の量子コンピューターもメーカーを監督して自力で作り上げてしまい、次々に異次元の業績を上げていく。

 ちなみに高校も大学も大学院も中退扱いで卒業資格は得ていない。規定の時限を履修していないためだ。そのため履歴書的にはリンは中卒だった。誰もそんな事でバカにする事はないし、リン自身は鉄板のジョークネタにしていたが。


 研究員としてのリンは別格だった。普通なら似た領域の研究者同士の足の引っ張り合いとかもありそうなものだが、ここまで隔絶していると誰も張り合おうとは思わなかった。

 義父が元事務次官で、後ろ盾が元NISCセンター長・現内閣審議官である事は公然の秘密だったし、そんな背景もリンを特別にしていた。


 ただ本人は特別視される事には複雑だった。腫れ物を触るような扱いが多かった。高校生の頃には運動系のクラブ活動には入っていた(ちなみに女子バスケ。背が伸びると思ったとか)が、大学ではサークルなどに入れる訳も無く、そんなこんなで友人も少なかった。旅行も安全保障上の理由でなかなか認められなかった。海外旅行なんて誘拐必至、絶対に許可されない。仕方ないとは言えちょっと残念に思うリンだった。


 裏で甲田が、リン目当ての海外のスパイやらテロリストやらを排除するのにどれだけ苦労していたか。本人だけ知らなかった。



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