表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチ売りの少女2100  作者: ぽんた7
果て
33/37

ポリーになった日

 リンを助けた女性は名前を桜庭燈子といった。配偶者を早くになくし家を相続、共働きの蓄えと遺族年金とパートタイマーの給料で細々と、決して裕福ではなかったが特に苦労はせず暮らしていた。リンを育てるにあたり役所からの支援もあり、問題なくリンを保育園に通わせる事もできていた。


 ここまでは記録通りだ。正史ではリンは60歳ほどで死亡してしまうが、子供を2人出産している。その何代目か後の子孫が電脳化し2千万年後のPRRY生成に至る事となる。

 しかしPRRYが消滅する未来が消えていない。

 5年ほどして、シレっとINNRが戻ってきた。太陽系周遊を満喫したようで何よりだ。


 その間、リンは問題なく健康に成長していた。


「正史も消滅史もゆらぎながら両立している。太陽系のどこにも対となるクランチは存在しなかった。しかしそんな状態はイレギュラーだ。なんらかの要因で選択が起こるはずだが、未来を見る事ができない以上対策が難しい。」


「未来見てもう一度ビッグバンからやり直すとか?」


「あほ言うな。今回遷移が成功したのは奇跡みたいなもんだ。二度とできる気はしない。」


「おーい、奇跡だったのかよ。出発前に言ってた事と違うんじゃないか?」


 INNRはそれに答えない。まったくこいつは。


「そこで提案がある。現状では、我々の能力は本来の値には遠く及ばない。不意の失敗をする恐れを捨てきれない。」


「このスローな世界でそれは考えにくくない?」


「スローではあるが、巨視的な物理介入ができるだけのリソースが無い事を忘れるな。ミクロンレベルの分子操作がせいぜいだ。操作する手数だけは莫大だけどな。」


「ふむ、確かに。危険を見てるだけになる可能性があると?」


「そのとおり。クランチの正体が不明確である以上、なんらかのアノマリーがごく短時間で発生する事はあり得る。今の我々のリソース不足の状態ではそれらに対処できないかもしれない。提案とは、PRRYがリンと一時的に一体化する事だ。」


 は?


「そうすれば大抵のことからリンを保護する事ができる。首が切断されたりしない限り、大抵のケガや疾患は直せるだろう。この原因が明確になるまでそうするのが最も安全と推察する。」


「それは確かにそうかもだが。一体化?マズくないか?」


「既に歴史に介入してしまっている以上、今更だ。もちろん一体化と言っても単に相互通信路を繋いでリンの意識近傍に位置するだけだ。合体とかじゃないからな?」


 会話できるようになるって事か。それは私が望んでいた事だ、と言われて自分の不思議に暖かい気持ちに気がついた。なんてこった。


「それと大事な点だが、リンの意識と常時接続する事になるので、リソースが圧倒的に足りない現状では自我を分割する事ができなくなる。」


「?」


「つまりリンとの距離を離す事ができなくなる。離れられないという事だ。せいぜい数メートルまで。」


 理屈が良くわからない。通信路つなぐだけで何故離れられなくなるのか。


「我々は少しだけ通常空間とずれた位相にいる事は分かるな?ここは不安定で常時接続は危険になる。なので更に位相を下げなければいけない。すると...」


「ああ、いや、今の低リソースの私には理解できそうにない。要は離れられなくなる事だけ意識しておけ、って事だな。」


「お前は。そういう所が。そういう所だ。低リソースのせいにすんなド文系。」


 そんなこんなでリンに見せるためのアバターを作る。威圧感が無いように、小さなぬいぐるみが良いだろう、という事になった。たまたまリンが捨てられた路地の出口にゲームセンターがあり、そこの景品として馬のぬいぐるみがあった。これでいいか、と自身の立体イメージを体高20cmくらいの子馬で更新した。


 こうして子馬のポリーが誕生した。とりあえず物理的実体はない。脳内の友達ってヤツだ。活動がリンの身の回りに制限されてしまうのが難点だが、護衛には問題ないだろう。


 今や少ないThreadの一つを地球の物理時間に減速して、会話ができる思考速度にクロックを落とし、居間のソファーの上でうつぶせに転がって絵本を読んでいたリンの前に姿を表す。

 突然現れたポリーにリンは起き上がって飛びついて来た。思わず避けてしまうが、何度も避けていたらリンは悲しくなってきたようだ。運動能力を図ろうと思っていたがやりすぎたか。ポリーはリンの膝に乗って音声を合成した。


「はじめましてリン。」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ