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マッチ売りの少女2100  作者: ぽんた7
マッチと記憶
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被害届

 みたびメモリア社重役専用会議室。どんよりした役員陣と顔を赤くしているCEO。セキュリティ担当役員田中が困惑顔で報告している。


「...という訳で、当社のセキュリティチームでは解決困難だと思われます。もし仮に原因を解析するなら国の専門機関に投げないとダメな案件かと」


「ふざけるな!そんな事したらインプラントのバックドアがばれかねないだろう!」


「いいえ、私は『解析するなら』と申し上げました。今回の目的はターゲットである桜庭鈴の拘束です。従って国の専門機関、情報省に通報する必要などありません。」


 技術担当室戸が追加する。


「仮に情報省が出てきたとしてもバックドア部分の解析は不可能です。そもそもインプラントには単体でバックドアなんて存在しないのはご承知でしょう?我々のシステムと結合してナノプラントを注入して初めて稼働するのですから。」


 森は腕を組んで顔をしかめた。


「それはそうかもしれないが...」


「仮にナノプラントによるアクセスの可能性が露見したとしても、それはあくまで『脆弱性が見つかった、知らなかったごめんなさい』で済む話です。当社ナノプラントの存在だけ確実に秘匿すれば問題ありません。脆弱性による被害調査と報告は、形だけは実施しなければなりませんが。」


「あくまで我々は被害者として、善意の市民として県警に通報するんです。社員の脳組織がハックされた可能性があるとして。そうすれば県警がターゲットを拘束してくれます。あとは市長のコネを使って身柄引き渡しを可能にできるでしょう。幸いターゲットは孤児です。市長の権限を使えば養護施設から引き取る事は十分に可能でしょう。」


 と田中は締めくくって会議は終了した。


 そうしてメモリア社法務部が県警サイバー犯罪対策課に被害届を提出した。


「当社社員5名が記憶改竄被害を受けた」

「電脳犯罪防止法違反の疑い」

医学的証拠(脳スキャンデータ)を提出


 事案の受理を担当した対策課の課員は被害届を見て苦笑する。


「12歳の少女が電脳ハック?正気かこいつら?」


 通常であれば一蹴するような内容だ。しかし届出人が届出人だ。バカバカしいが無視はできない。精査しなければならないだろう。


 しかし軽く見ていた課員の予想に反して、被害者の診断結果精査の結果全員の海馬に同じパターンの異常が見られる事が判り「新型の脳内直接攻撃」の可能性が出てきた。

 既存のハッキング技術では説明不可能だがこれが事実なら大変な事態である。


 その担当者は未知の技術に鑑み県警だけでは処理できないと考え、国の情報処理関連の最高機関である情報省への通報を上司に具申した。しかし上司も署長も自分たちでの解決を望んだ。情報省なんかが出てきた日には手柄を根こそぎ持っていかれてしまう。県警本部長は面子にこだわり、上司で課長である警視は年度末査定前に手柄を立てたかった。縦割り組織、いつもの事だ。


 課長は脳波侵害の対策をしたうえで被疑者の拘束を試みるよう計画を立てている。しかし警察だけでは処理できないだろうと判断していた最初の課員は、情報省に連絡した。命令違反?いや秘匿しろとの命令は受けていない。あくまで情報共有なのだ、と自分に言い聞かせた。




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