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マッチ売りの少女2100  作者: ぽんた7
マッチと記憶
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塔の男

 S市最大の企業、メモリアコーポレーション。


 メモリア社は国内における情報分野の巨人だ。多岐にわたる事業を展開しているが、最大のものは人体への情報インプラント移植とその開発だ。市民であるためにはインプラント処置は義務ではないものの事実上必須であり、定期的なメンテナンスも必要なため売上は常に高値で安定。法律で定められているわけではないが役所からの通知や手続きにはインプラント無しでは想像を絶するほど不便になるため、市民への普及率は手術に適した年齢ではほぼ100%だ。つまりインプラント事業は実質官民一体となっている。不思議な事に日本には競合企業もなく、我が世の春を謳歌している。


 現市長は、メモリア社創設当時の市長の息子だ。当時の市長も息子も選挙資金はメモリアから出ている。彼らはメモリアには逆らえないため、実質S市はメモリアの城下町と言っても良かった。


 雨上がりの朝。社長の森はメモリア社ビル最上階から冬の町並みを見下ろしていた。渋滞も無くスムーズに流れる電気自動車の列。電池なんて積んでいない、モーターの付いただけの箱だ。エネルギーは核融合炉から道路の常温超電導ケーブルを通じて無線供給されている。地下鉄駅からは仕事に向かう人々が吐き出されている。視界の脇にスーパーインポーズされた映像には始まったばかりの株式市場の前場概況が映し出されており、今日もメモリア社は安定して高値を維持しそうだ。良いことだ。


 秘書が今日の予定を口頭で伝えてくる。一日の予定なんて視覚情報で十分なのだが、森は昔ながらの儀式的なものが好きだった。傅かれているようで気分がいい。我ながら権力志向の古臭い人間なのだと思う。


「本日は10時から幹部ミーティング、12時からは市長と会食です。11:45分に社を出発予定なので地下駐車場にお越し下さい。13時には...」


 秘書は淡々と予定を朗読している。

 そうか今日は市長への新商品プレゼンか。あいつの事だ、目新しければ食いつくだろう。今日のブツは、と...「初恋」?いやはや。ジジイらしい事だ、恥ずかしいを通り越して見苦しい。もう市長は傀儡から逃げられないだろう、これまた良いことだ。


 表情には出さず森は内心ほくそ笑む。今やS市は森の私有物同然だった。


 今日も一日がはじまる。上がってきている報告書のAI要約に目を通し始めた。




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