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マッチ売りの少女2100  作者: ぽんた7
橋の下の灯
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マッチ箱

 この春で私もついに中学生になった。


 自分では、なかなか良好な見た目をしてるんではないか、と自負している。


 ちょっと細すぎる気もするけどそこそこ均整のとれた体つき。美咲ちゃんにはかなり負けるけど大きめの目、まっすぐな鼻立ち。身長は...うるさい。


 髪型は相変わらずのボブカットで通してる。校則とか面倒だし、この形が一番洗うの楽。朝も梳かすだけでいいしね。保育園の頃はポリーと同じたてがみにするんだー、って言い出してお母さんを困らせたっけ。モヒカンの保育園児はさすがにヤンキーが過ぎるだろう。お母さんが常識人で良かった。


 そう言えばお母さんの部屋には立派な乾燥庫があった。カメラ用らしい。とは言え入っていたのはカメラではなくたくさんのマッチ箱。

 お母さんは古いマッチ箱を収集していた。日本のもの、外国のもの、普通の箱型や平たいもの、珍しい丸いもの。描いてあるイラストもさまざま色とりどりだ。


 あまりお母さんの部屋に入る事はないが、ある日なんとなく興味を憶えてマッチについて聞いてみた。マッチ、というものがどういう物なのかは童話や映画などで知ってはいる。だが実際に現実で使われている所を見た事はない。最近ではごくごく稀なタバコ愛好家でも着火は電子ライターだ。趣味に走った人でもせいぜいオイルライター。


「お母さんタバコ吸わないのに、なんでマッチ箱集めてるの?」


「ああ、それはね、昔おばあちゃんがくれたの。お母さんが大学生くらいの頃だったかな。それから自分でも集めるようになったの。」


「すごい昔だ」


「こら、お母さんそこまで年寄りじゃありません」


「62歳は年寄りでしょ」


「うるさいわね」


「マッチ箱って集めて面白い?」


 お母さんは微笑み、いくつか取り出して居間に持ってきた。


「面白いわよ?ほら、色んなデザインでしょ?これは飛行機の広告ね。こっちはレコード会社の。これなんかハンバーガーの形。作られた時代や国によって千差万別なの。」


「へー。」


 確かにカラフルで色々な形の箱がある。大抵は広告なのだが、だからこそ工夫が凝らされていた。


「火つけてみる?」


「いいの?」


 お母さんは手近なマッチ箱からマッチ棒を一本取り出し、私の目の前で火を点けて見せる。「ほら簡単でしょ?」


 マッチを持った手首を振って火を消すとそのマッチ箱を私に手渡してきた。四角い箱からマッチを一本取り出す。細い木の軸の先端に赤い頭薬。お母さんの真似をして箱の横の側薬に恐る恐るこすりつける。初めての事でなかなかうまく行かなかったが、何回目かで火が点いた。赤燐が燃え始め、硫黄の匂いがツンと漂う。小さい炎が立ち上がった。


「どう?」


「くさい」


「そっかー、臭いかー。最初はそうよねえ。」


 お母さんが笑う。炎の向こうに笑顔が見える。


 これがいつまでも続けばいいなあ。漠然とした不安を抱き続けている私にとって、それはとても大切で愛おしい眺めだった。




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