ちんちくリン
5年生になったよ。それまでのようにクラスでポリーの話をする事もやめて、カンの良さを隠し、平凡に過ごそうと努力している。
お淑やかに振る舞おうとしているけど、ポリーに言わせると私には向いてないらしい。そんな訳はないわ。見る目のない馬だこと、オホホホ。
そんなある日の放課後のこと。
私は担任に用事をいいつけられて居残り。それが終わってもう人も少なくなった廊下を歩いていた。すると校舎の裏で、ケンちゃんが数人の6年生に囲まれているのが窓から見えた。
「なんだろ?」
見ていると、ケンちゃんは一人の上級生に突き飛ばされた。何言っているのかよくわからないが怒鳴られてもいるようだ。あ、殴られた。
私は校舎裏に向けて走り出す。ポリーはそんな私を止めようとする。
「リンやめろ、介入するな、危険だ。」
「馬鹿言わないで!見逃せるわけないでしょう!」
私は通用口から上履きのままで外に駆け出した。
「リン止まれ!」
ポリーを無視して上級生に飛びかかる。
「何してんのっ!」
上級生に体当たり。しかし悔しいことに私は高学年になってもまだまだ小柄だ。大したダメージになっていない。逆に振り払われてしまう。
突然の私の登場にびっくりしていた様子のケンちゃんだが、私が転ぶのを見て加勢に出てくれた。その後は手足をめちゃくちゃに振り回して大乱闘。
暴れる私たち二人に手を焼いた上級生たちは、面倒になったのか唾を吐いて立ち去ってしまった。よし、勝ったぞ。
残された二人でその場に座り込みぜいぜい荒い息をつく。途切れ途切れにケンちゃんに聞いた。
「いったい、何が、あった、のよ」
「よく、分から、ないんだ、なんか、『お前生意気なんだよ』とか、突然言ってきて、ここに、連れてこられて。」
「ああ~」
「何だよ、『ああ~』って。」
「いやだって、健ちゃん生意気だもん。」
ケンちゃんがギラリ、と睨み返してきた。
「そんな事ないだろ、普通だろ」
「ほら、そういうところ」
二人で顔を見合わせる。どちらともなく笑いだしてしまう。
しばし小声で笑うと、私の肘から血が滲んでるのケンちゃんが見つける。
「なんだお前、ケガしてるじゃねーか。」
あれ。全然気づかなかった。
「え?ああほんとだ。でも全然だいじょうぶ。痛くない。」
ケンちゃんは呆れたようなため息をつく。
「まったく昔からお前はよう。ちっちゃいんだから無茶すんなって、ちんちくリン」
かーっ。レディに対して失礼な。
「小さくないし。なんだちんちくリンって」
「ちんちくなリンの助。いや小さいだろ、俺より頭一個分。」
「うるさい、そのうち抜かすし」
「無理だろ」
「ふん、見てなさいよ、人より背伸びるのが遅いだけなんだから。60年後に吠え面かかせるんだから。」
「そりゃ楽しみだ。」
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そんな二人のやりとりを無言で見つめるポリー。
リンは自分の言う事を聞かなくなってきている。精神が成長している証拠で喜ばしいのは分かっているが、しかしリンの場合危険は特に避けなければならない。背反する命題にどうするのが正解か分からなくなってくる。




