表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIRPORT 4 : 東京航空交通管制部  作者: Sully Hughes and Jeff Wright
Chapter 2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/26

3

片山が東京コントロールに着任してから、1ヶ月が過ぎようとしていた。新しい環境に慣れつつある片山は、同僚たちとも順調に関係を築き、チームとしての一体感が少しずつ生まれ始めて、片山自身もこの職場での自分の役割をより深く理解し始めていた。


その日の午後、フロアはいつもと変わらない静かな緊張感に包まれていた。だが、突然、ある航空機から緊急事態を知らせる通信が入った。巨大なモニターには航空機の現在位置とその異常を示す警告が赤く点滅していた。


中山が声を上げた。


「エマージェンシーです!JSA421がキャビン内の与圧異常を報告、急降下しています!」


高橋が冷静な声で指示を出し始める。


「全員、状況を確認しろ!片山、梶原、JSA421が航行中のセクター03をチェックしろ。」


片山はすぐに席に戻り、モニターを注視した。与圧異常によって急降下しているB767型機の「JAPAN SKY AIR 421便」は、他の航空機の進路を塞ぐ可能性があり、迅速な対応が求められていた。


「JSA421、進路を30度右に変更、現在の高度を維持できる限り確保せよ。」


片山が冷静に指示を送る。


梶原が追加情報を報告した。


「周囲の航空機に緊急回避指示を出していますが、北東エリアで航空機が密集しています!」


「北東エリアの航空機を高度別に分散させる。優先順位を考慮して、北村、調整を頼む。」


片山が指示を送る。


一方、別のセクターを担当していた北村は手が震えているのを片山は目の端で捉えた。彼女はいつも冷静で的確な判断を下すが、この緊急事態に少し動揺しているようだった。


「北村、大丈夫か?」


中山が声をかけたが、北村は硬い表情のままだ。


片山は席を立ち、北村の隣に立った。そして彼女の耳元で低く穏やかな声で話しかけた。


「恵理。」


突然の名前呼びに、北村は一瞬驚いた表情を見せた。


「恵理、大丈夫だ。お前ならできる。落ち着いて状況を見てみろ。」


その言葉に、北村の緊張が少しずつ解けていくのがわかった。彼女は深呼吸をし、モニターに再び目を向けた。


「ANA762、進路を15度右に変更。高度15000フィートに調整してください。」


北村の声は徐々に落ち着きを取り戻し、彼女の指示は再び的確で迅速になった。


「よし、その調子だ。」


片山は小さく微笑みながら自分の席に戻った。


一方、伊東は新たな異常を発見した。


「中山さん!北東エリアにいるJW343がJSA421との間隔が危ないです!」


中山は即座に指示を出した。


「JW343、進路を20度右に変更し、高度を29000フィートに調整!これで安全間隔を確保できるはずだ。伊東、周囲の航空機にも通知しろ!」


伊東は迅速に端末を操作し、

「中山さん、他の航空機にはすでに警告を送信しました。」

と報告した。


中山は再び通信を続けた。


「JW343、進路変更と高度調整を確認したら報告してください。」


高橋が全体を見渡しながら指示を統括した。


「みんないい連携だ。最後まで気を抜くな。」


片山がヘッドセットを調整し、冷静な声で通信を始めた。


「JSA421、こちら東京コントロールです。緊急着陸予定の成田空港へ誘導します。進路を45度右に変更し、高度を5000フィートまで降下。」


パイロットからの応答が少し間を置いて返ってきた。


「東京コントロール、こちらJSA421了解。進路45度右、高度5000フィートに降下します。緊急着陸手続きの準備を開始します。」


その時、北村が片山に視線を向け、小声で尋ねた。


「片山さん、成田側の状況を確認しますか?」


片山はヘッドセットを外すことなく答えた。


「恵理、頼む。成田と連絡を取り合って滑走路の状況を確認してくれ。」


北村はすぐに端末を操作し、成田とのデータ共有を開始した。


「片山さん、成田の滑走路16L はすでにクリアになっています。JSA421の受け入れ準備が整ったとのことです。」


片山はその情報を受け取り、通信を再開した。


「JSA421、成田は滑走路16Lの準備が完了しています。成田アプローチにコンタクトしてください。健闘を祈ります。」


「東京コントロール、ありがとうございました。これより成田アプローチにハンドオフします。」


パイロットの声は落ち着きを取り戻していた。


片山は静かに息をつき、ヘッドセットを外した。


「ハンドオフ完了しました。」


フロア全体が一丸となり、それぞれが自分の役割を果たした結果、ついに状況が安定を取り戻した。成田空港から連絡が入り、与圧異常を報告していたJSA421は安全に進路を確保し、無事緊急着陸した。他の便への影響も最小限に抑えられた。


緊急事態が収束すると、フロアにはほっとした空気が流れた。


「みんな、よくやった。」


高橋が声をかけた。


「特に片山、北村もいい対応だったぞ。」


北村は片山の方を振り返り、小さく頭を下げた。


「片山さん、ありがとうございます。あのとき声をかけてもらわなかったら、私はもっと混乱していたと思います。」


片山は軽く笑いながら答えた。


「誰でも緊張することはある。俺もそうだ。だけど、恵理の力を信じていたから声をかけたんだ。」


「これからも頼りにさせてください。」


北村の顔には、緊張から解放された柔らかな笑顔が戻っていた。


そこへ、牧村がフロアに姿を現した。彼は全員に目を配りながら、軽く拍手をして口を開いた。


「みんな、本当にご苦労だった。今回の対応は素晴らしかった。JSA421の緊急着陸は、皆の迅速で正確な対応のおかげで、無事に成功した。成田空港から連絡がありすごく感謝していたよ。」


牧村の言葉に、フロアの空気が少し和らいだ。


その日の業務が終わり、片山はデスクに座りながら、ふと目を閉じた。北村の名前を呼んだ瞬間、自分がかつて真奈美に同じように声をかけた日を思い出していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ