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AIRPORT 4 : 東京航空交通管制部  作者: Sully Hughes and Jeff Wright
Chapter 2

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2

それから片山が東京コントロールに異動して1週間が過ぎた。この新しい環境にも少しずつ慣れてきたが、片山の仕事への姿勢は変わらなかった。


業務終了後、他の管制官たちが次々と帰る中、片山はまだデスクに座っていた。彼のデスクには資料やマニュアルが積み重なり、モニターには今日の業務の記録が映し出されている。


片山が引き出しを開けて必要な書類を探していると、何かが手に触れた。取り出してみると、それは古びたブルーインパルスの模型だった。手に取って少し眺めた片山は、どこか懐かしそうな表情を浮かべた。しかし、すぐに静かに引き出しに戻した。その瞬間、ふと彼の顔には一瞬の寂しさが見えた。


「片山さん、まだ仕事ですか?」


声をかけてきたのは帰り際の北村だった。その隣には伊東も立っていた。二人は笑顔で片山を見つめている。


「片山さん、よかったら一緒に食事でもどうです?」


北村が軽い口調で誘った。


「そうですよ、片山さん。まだ1週間なのに、ここで頑張りすぎると体がもちませんから。」


伊東も少し冗談を交えながら声をかけた。


片山は二人に微笑みを返したが、ちょうどその時、片山の携帯が震えた。ディスプレイを見ると、国土交通省航空局に勤める同期の坂本浩司からの着信だった。坂本はかつての関空時代の同僚であり、片山にとって昔からの信頼できる友人だった。


「すまない、ちょっと電話に出てくる。」


片山はそう言って携帯を耳に当てた。


「久しぶりだな、片山。」


坂本の声は相変わらず明るかった。


「元気か?」


「坂本か。どうした急に?」


片山は少し驚きつつも穏やかな声で応じた。


「どうしたもこうしたもないよ。たまには飲もうぜ。新宿にいるから、今から来いよ。」


「相変わらずだな、お前は。」


片山は少し笑いながら答えた。


「いいじゃないか。少しは気分転換しろって。場所はパークハイアットだ。待ってるからな。」


電話を切った片山は北村と伊東に向き直った。


「悪いな、誘ってくれてありがとう。でも、急用ができた。また今度な。」


北村と伊東は少し残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔で答えた。


「そうですか。また次の機会にお願いします。」


二人を見送った後、片山は支度をして新宿へ向かった。



________________________________________



ー 新宿 パークハイアット東京 ー


エレベーターに乗り、52階のバーに到着すると、坂本がカウンター席でウイスキーを片手に待っていた。バーの静かな空間には心地よいジャズが流れ、外の喧騒とはまるで別世界だった。


「相変わらず趣味がいいな、お前。」


片山は苦笑しながら坂本に近づいた。


「お前こそ、変わらないな。」


坂本は笑顔で迎えた。


「まあ座れよ。今日は片山の奢りだろ?」


「なんで俺が奢るんだ。」


片山は苦笑しつつ席に座った。


二人はグラスを傾けながら、久しぶりの再会を楽しんだ。


「実はな、片山。」


坂本が真剣な顔で切り出した。


「お前の仕事ぶり、こっちでも話題になってるぞ。」


「話題?」


片山は眉をひそめた。


「ああ。お前がACCに異動してからの活躍ぶりは、航空局でも注目されてるんだよ。まだ1週間なのに、ほんと大したもんだよ。」


「そうか…。」


片山は少し照れくさそうに視線を逸らした。


「それにな、片山。」


坂本は少し声を低くして続けた。


「お前、最近ほんと表情が明るくなったよ。昔はもっと硬い顔してたのに。」


片山は苦笑いしながら答えた。


「東京に来て、いろいろと環境も変わったからな。それに、いいチームに恵まれたおかげだ。」


坂本は満足そうに頷き、グラスを持ち上げた。


「それならよかった。じゃあ、今日はお前の新たなスタートを祝って乾杯だ。」


「乾杯。」


片山もグラスを掲げ、静かに微笑んだ。


その後、坂本は羽田空港での片山の最後の様子についても尋ね始めた。


「そういえば、羽田から異動するとき、向こうの皆はどうだったんだ?特に、山口さんなんて、お前の愛弟子で、相棒みたいな存在だったんだろ?」


片山は少し考え込んだ後、静かに答えた。


「羽田の皆には本当に世話になったよ。特に真奈美にはな。最後の日だって笑顔で見送ってくれた。俺が羽田に来た頃は硬くてぎこちなかったのが、今じゃ立派な管制官だ。」


坂本は感心したように頷いた。


「やっぱりお前の影響力はすごいな。それに、お前にとっても羽田での4年間は大きかったんだな。」


片山は微笑みながらグラスを傾けた。


「そうかもしれないな。でも、今はここでやるべきことがある。」


二人はその後も、昔の話や最近の仕事について語り合い、夜は更けていった。


新宿駅へ向かう帰り道、片山は夜風に吹かれながら坂本の言葉を思い返していた。「表情が明るくなった」と言われたとき、自分では気づかなかった変化があるのだと感じた。再び東京コントロールでの新たな挑戦を心に刻み、片山は静かに駅のホームに立った。次に向かう列車が彼を待っていた。



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