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翌日、片山の東京コントロールでの初業務の日がやってきた。朝早く管制施設に到着した片山は、昨日のシュミレーションの成果を胸に、自分のデスクに向かった。隣には北村と中山が、少し離れた席には梶原と伊東がそれぞれの持ち場についている。管制室には独特の緊張感が漂い、片山は深呼吸を一つしてから席に腰を下ろした。
「おはようございます、片山さん。いよいよですね。」
北村の明るい声に、片山も自然と微笑み返す。
「おはよう。よろしく頼むな。」
中山が少し茶化すように声をかけてきた。
「片山さんなら大丈夫ですよ。昨日のシュミレーション、めっちゃ絶好調だったじゃないですか。」
隣にいた伊東が目を輝かせて言った。
「そうですよ。片山さんは僕たちの期待の星です!」
中山が即座に突っ込んだ。
「おい、拓海、初日からプレッシャーかけるなよ。お前もちゃんと準備しろよ。」
そのやり取りを聞きながら、片山は苦笑した。
「期待に応えられるように頑張ります。でも、まずは足を引っ張らないようにするのが目標だな。」
すると梶原が落ち着いた声で話し掛けた。
「片山さん、緊張すると思いますけど、無理せずリラックスしてやってください。」
「ありがとう。梶原さん。」
そこに高橋が現れ、片山の肩を軽く叩いた。
「みんなも片山君に期待しているみたいだな。ま、とりあえず肩の力を抜いていこう。今日の業務は普段通りに進めるが、困ったことがあれば遠慮なく聞いてくれ。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
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そして業務が始まった。片山はモニターに映し出される広域空域の状況を瞬時に把握し、航空機ごとに的確な指示を送り始めた。
「ANA624、進路を30°に変更、高度を5000フィートに維持してください。」
「JAL823、高度22000フィートまで降下してください。」
片山の声は冷静で的確だった。周囲はその仕事ぶりに圧倒されていた。
北村は片山の迅速な判断と正確な指示に目を見張っていた。
「片山さん、すごい…。」
北村が低くつぶやいた。
伊東は目を丸くして、片山の一挙手一投足を見守っている。
「すごい…片山さん、本当に初日なんですか?」
伊東が思わず呟くと、中山が小声で言った。
「お前、少し落ち着けよ。でも、確かに…初日でこれは信じられない。」
「さすがだな。これで初日とは。」
高橋も少し離れた場所で片山の様子を見守っていたが、その動きのスムーズさに感心を隠せない様子だった。
「片山君、さすがだな。その調子で続けてくれ。」
片山は一瞬だけ高橋に目を向けて軽く頷き、そのまま指示を続けた。
「ANA450、進路を15°に変更、高度を4000フィートに下げてください。」
「スカイマーク312、現在の進路を維持、高度32000フィートまで上昇してください。」
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その日の午後、片山の評判を耳にした牧村が様子を見にやってきた。管制席の後方で腕を組みながら、片山の指示を見つめていた。
牧村は高橋に近づき、小声で話しかける。
「どうだい、片山君は?」
高橋は満足げに頷きながら答えた。
「部長、予想以上ですよ。初日からこれだけやれるとは思っていませんでした。」
「流石だ。頼もしい限りだな。」
牧村は片山の様子を見ながら感心していた。
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その日の業務が終わると、片山のデスクに梶原、中山、伊東が集まった。
「片山さん、本当にすごかったです!」
伊東が感嘆の声を上げると、中山も続けた。
「いや、本当に驚かされましたよ。俺なんか初日は手が震えて大変だったのに。」
梶原も言葉を添えた。
「ほんとお見事でしたよ。片山さん、お疲れ様でした。」
片山は照れくさそうに笑いながら答えた。
「みんながサポートしてくれたおかげだよ。ありがとう。」
そのやり取りを見ていた北村が、ふと片山のデスクに目をやった。そこには大量の付箋が貼られ、赤ペンでびっしりと書き込みがされたマニュアルが置かれていた。
「片山さん…昨日帰ってからも読んでいたんですか?」
北村が驚いた声を上げると、片山は苦笑いを浮かべた。
「まあ、気になったところを復習しただけだよ。でも、こうでもしないと新しい環境にはついていけなくてね。」
北村は感心したように頷き、
「片山さん、本当に努力家なんですね。すごいです!」
と声を上げた。
その言葉に周囲の中山や伊東も感嘆の声を漏らした。
「いやあ、片山さんには本当に頭が上がらないな。」
高橋も片山のマニュアルを一瞥しながら頷いた。
「片山君、そういう姿勢はすごく大事だ。これからもその調子で頼む。」
その時、中山が冗談めかして伊東に声をかけた。
「おい、拓海、お前も片山さんみたいにマニュアル全部読んだか?」
伊東は慌てた様子で答えた。
「いや、それは…少しは読みましたけど全部は…。」
梶原が笑いながら追い打ちをかける。
「おいおい、お前は片山さん以上に読まないとダメだろう。」
「もう…梶原さん、中山さんまで…。」
伊東が困った顔をすると、みんなが笑い声を上げた。その雰囲気に、片山も思わず笑顔になった。




