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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
66/70

66.天使の笑い声


ヒーディの爆死とゾルゲ族の生き残りであり王族では無かった事実は、国中に衝撃を与えた。


詰まるところ、あれだけ持て囃されたガリーナが、王族どころかゾルゲ族であった。


「魔族の生き残り」

「国を滅ぼす凶星」


あの熱狂が嘘のように、民たちはあっという間に手のひらを返した。


「民の評価などそんなものですよ」

宰相不在の為、シュナイダー商会を父親に任せ、臨時代行宰相となったデレックスが言った。


元々、アルベアト王はデレックスを宰相に熱望していたのだから、このまま、なし崩しに宰相職に留まらせるだろう。


シュナイダー商会については、ウィルメットの意外な商才がわかり、その手腕を発揮していた。

もともと人当たりが良く天使の様な容貌で、

更に物を見る目が優れていた。

幼い頃から、沢山の物を購入していたという事もあるが、そもそもの審美眼や鑑定能力に優れたいた。


客は夢見心地で品物を購入していく、とは護衛に付いているフォルカーの言であるが、魔法は使えなくとも人を幸せにする心の魔法が使えるのだ、とは父エックハルト伯爵の言である。

揃って相当の親馬鹿、兄馬鹿ではあるが、ウィルメットの心の清らかさは客たちにも伝わるのは間違いない。


北の塔では王位継承争いにひとまず区切りがついたため、皆安堵した。


しかし、王位継承以上にゾルゲ族のガリーナがこの先どのように成長するのかは脅威であった。

2歳にならずして、人々を恐怖に陥れる傲岸さと、あの異様な魔法書はこの国だけではなく、他国にも影響を及ぼす可能性があった。


魔族の生き残りだから粛正しなくてはならないのか、魔族といえど社会に適応出来るのなら共生を図るのか。


あの笑い声だけで粛正する事は出来ないのは誰もがわかっていた。


しかし、あの笑い声こそ、世界を滅ぼしかねない社会不適合の証である事もわかっていた。


今はシュレヒテ侯爵の出方を待つしかないようだ。


魔法書を持たないリーゼロッテ王女は今日も天使の笑い声を皆に届けていた。







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