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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
65/70

65.笑い声


ガリーナの笑い声は神殿に響き渡り、不気味さに皆打ち震えた。


2歳前の子供とはいえ、母親が爆死して笑い転げるなどあり得ない。


そして皆を更に驚愕させたのは、ガリーナの前に妖しく光る分厚い魔法書の存在だった。


「あれも人ではないな」

エックハルト伯爵は呟いた。


アルベアト王は前に進み出て宣言した。


「皆、ヒーディの額の逆ペンタグラムを見たな。あれこそゾルゲ族の証だ。

前王妃はいや、もう罪人だが、ゾルゲ族の男の子を宿し王家に入り、その娘を王族と謀った。故にその娘ガリーナもゾルゲ族の血を引く者。もとより王族ではない。

わかったな」


シュレヒテ侯爵はアルベアト王の宣言を聞いても、まだニヤニヤ笑っている。


「系譜からも削除する」


シュレヒテ侯爵は笑いながら言った。

「王族から外されても構いませんが、

ガリーナはゾルゲ族の血をひいていようが、

我が娘に違いはない。

まさかゾルゲ族だからと言うだけで処罰する事はないでしょうね」


ゾルゲ族である事もあっさり認めたのは、

最早、王位そのものにすら興味は無いのかもしれない。

狙いは何だ。


アルベアト王の顔に焦りが浮かんだ。


「ゾルゲ族では神殿にて感謝式でもありますまい。失礼しますが、もう他に用はありませんね、そちらにお隠れの皆さんも」


シュルツ卿とエックハルト伯爵は物陰からのっそりと姿を現す。

ウィノラにはそこに隠れているよう目配せしていた。


「水の貴公子とエックハルト伯爵ですか。

お役目ご苦労様でしたな」


笑いながらシュレヒテ侯爵は神殿を出て行く。

腕に抱かれたガリーナはまだクックと笑っていた。


シュレヒテ侯爵が去った神殿は一瞬静まり返った。


アルベアト王はヒーリーヌ王妃を労りながら

全員に言った。

「至急ヒーディとガリーナの系譜からの削除を」


全員が頭を下げて答える。


国王夫妻は控えていた護衛の騎士と共に王宮へ戻って行った。


残されたリヒター大神官たちは騒然となった。


「ゾルゲ族など本当に存在していたのか」

「魔族なのに放置してよいのか」

「逆ペンタグラムなど恐ろしい」

「あの娘は何だ。人では無いだろう」


誰もが混乱していた。


リヒター神官長は静かに言った。

「全てを受け止めるしかないだろう。

神の御心だ」


神とは真逆の存在が現れてしまった今、

神殿内はカオスと化した。



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