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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
64/70

64.感謝式


感謝式の日が来た。

ヒーリーヌ王妃はこの日まで、英気を養い、魔力を高める努力をした。


アルベアト王はその時を待っていた。


シュルツ卿とエックハルト伯爵、ウィノラは誰にも見咎められない早朝に神殿内に潜入した。

無論、神官長は了承済である。


間も無くアルベアト王とヒーリーヌ王妃も神殿入りし、神殿内の控室で時を待った。


神官の一人が慌ただしく控室の扉を叩く。

「シュレヒテ侯爵夫妻とガリーナ様が門を入られました」


神殿内に緊張が走る。


リヒター神官長以外、本日の来賓客を知る者はいないが、シュレヒテ侯爵とヒーディの非道は皆知るところである。


コツコツコツと石畳みを歩く足音が聞こえてきた。


ギィーーーと神殿の扉が開いた。


見えた。

最初はシュレヒテ侯爵だ。

ガリーナを腕に抱いている。


シュルツ卿は息を呑む。


コツコツと靴音たかくヒーディが入って来た。


まだだ。

もっと中に入れ。

大神官たちに良く見えるように。


アルベアト王は心の中で呟いた。


三人は神殿の中央まで歩いて来た。


今だ。


ヒーリーヌ王妃が聖魔法を繰り出したと同時に、ガリーナがヒーリーヌ王妃のいる場所を指差した。


聖魔法はヒーディの身体を包み、額に大きな逆ペンタグラムが浮かび上がった。


「逆ペンタグラム」


アルベアト王が物陰から姿を現し叫ぶ。

神殿内の視線はヒーディの逆ペンタグラムに注がれた。


「よし」

シュルツ卿が小さく呟いた次の瞬間だった。


ヒーディの胸が妖しく光出した。


「まずい。

結界を張れ」


アルベアト王とシュルツ卿、エックハルト伯爵、ウィノラがそれぞれ結界を展開した。


ヒーディとシュレヒテ侯爵、ガリーナは完全に4重もの結界内となった。


バーンという爆炎と共にヒーディだけが燃え尽きた。


それを見たシュレヒテ侯爵は薄ら笑いをしていた。

シュレヒテ侯爵とガリーナは一筋の髪の毛のさえ、失っていない。

無属性の結界をガリーナが張ったのか。

シュレヒテ侯爵はまだ笑っている。


「自分の妻が死んだと言うのに」

エックハルト伯爵の怒りは頂点に達していた。


しかし、それより恐ろしいものがあった。


「キャハハハハ」


爆死した母親を指差して笑うガリーナの姿だった。




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