64.感謝式
感謝式の日が来た。
ヒーリーヌ王妃はこの日まで、英気を養い、魔力を高める努力をした。
アルベアト王はその時を待っていた。
シュルツ卿とエックハルト伯爵、ウィノラは誰にも見咎められない早朝に神殿内に潜入した。
無論、神官長は了承済である。
間も無くアルベアト王とヒーリーヌ王妃も神殿入りし、神殿内の控室で時を待った。
神官の一人が慌ただしく控室の扉を叩く。
「シュレヒテ侯爵夫妻とガリーナ様が門を入られました」
神殿内に緊張が走る。
リヒター神官長以外、本日の来賓客を知る者はいないが、シュレヒテ侯爵とヒーディの非道は皆知るところである。
コツコツコツと石畳みを歩く足音が聞こえてきた。
ギィーーーと神殿の扉が開いた。
見えた。
最初はシュレヒテ侯爵だ。
ガリーナを腕に抱いている。
シュルツ卿は息を呑む。
コツコツと靴音たかくヒーディが入って来た。
まだだ。
もっと中に入れ。
大神官たちに良く見えるように。
アルベアト王は心の中で呟いた。
三人は神殿の中央まで歩いて来た。
今だ。
ヒーリーヌ王妃が聖魔法を繰り出したと同時に、ガリーナがヒーリーヌ王妃のいる場所を指差した。
聖魔法はヒーディの身体を包み、額に大きな逆ペンタグラムが浮かび上がった。
「逆ペンタグラム」
アルベアト王が物陰から姿を現し叫ぶ。
神殿内の視線はヒーディの逆ペンタグラムに注がれた。
「よし」
シュルツ卿が小さく呟いた次の瞬間だった。
ヒーディの胸が妖しく光出した。
「まずい。
結界を張れ」
アルベアト王とシュルツ卿、エックハルト伯爵、ウィノラがそれぞれ結界を展開した。
ヒーディとシュレヒテ侯爵、ガリーナは完全に4重もの結界内となった。
バーンという爆炎と共にヒーディだけが燃え尽きた。
それを見たシュレヒテ侯爵は薄ら笑いをしていた。
シュレヒテ侯爵とガリーナは一筋の髪の毛のさえ、失っていない。
無属性の結界をガリーナが張ったのか。
シュレヒテ侯爵はまだ笑っている。
「自分の妻が死んだと言うのに」
エックハルト伯爵の怒りは頂点に達していた。
しかし、それより恐ろしいものがあった。
「キャハハハハ」
爆死した母親を指差して笑うガリーナの姿だった。




