61.滅亡の一族
日記はその後、数々の情報漏洩が如何にして行われたかが、事細かく記されていたが、結局のところ毒蛇がシュレヒテ侯爵である証拠は見つけられなかったようだ。
「王族で無ければ全ての野望は潰える」
シュルツ卿は呟き、日記をエックハルト伯爵に記憶して貰うためにリーゼロッテ王女の部屋へ向かう事にした。
「エックハルト伯爵に記憶して貰う。
陛下にも至急お知らせしなくては」
部屋を出て螺旋階段を登ろうとするシュルツ卿をフォルカーが揶揄う。
「よく居場所がわかりますね」
シュルツ卿は苦笑いする。
どんなに忙しくても、どんなに悲しい事があっても、エックハルト伯爵は毎日リーゼロッテ様に会いに行く。
さながら、初孫に対する様だ。
「エックハルト伯爵はリーゼロッテ様に夢中ですからね。初孫の様に思っていらっしゃるのかもしれませんね」
シュルツ卿の言葉にフォルカーは内心思った。
「副長とウィノラはリーゼロッテ様の育ての親みたいなものだから、初孫で間違ってないよな」
螺旋階段を優雅に登っていく水の貴公子の後ろ姿を目で追う。
少し痩せたかも知れないと虚しく考えた。
リーゼロッテの部屋の扉を叩いて中へ入ると
ウィノラとエックハルト伯爵がリーゼロッテ王女をあやしているところだった。
一瞬足を止め、まるで母親と娘、そして祖父だと思った。
ヒーリーヌ様は体調が思わしくなく、リーゼロッテ王女とは会えていない。
アルベアト王はたまに北の塔にやってくるが、先日の事件の後始末で忙しい。
代わりに北の塔の面々が家族となった。
差し詰めシュルツ卿が父親、ウィノラが母親、ファティマは祖母、エックハルト伯爵は祖父、ユング子爵は大叔父、そしてイエルは兄。
国王夫妻はもちろん、リーゼロッテを何よりも大切に思っていたが、側にいられない欠けた部分を北の塔の面々が補っていた。
「エックハルト伯爵、クラウゼさんの日記に重要な記述が、ありました。
至急お読みいただき記憶してください。
その後、陛下へもご連絡お願いします」
エックハルト伯爵はリーゼロッテ王女に未練たらたらの視線を送り、
「王女様、仕事をしますね」
などとぶつぶつ言って日記を読み始めると、
シュルツ卿と同じく愕然とする。
「ゾルゲ族だと。
あの魔族の血を引く。
ガウスが」
側にいたウィノラも驚愕して、尋ねた。
「ゾルゲ族は滅亡した幻の一族ではないのですか」
滅亡していてくれたらその方が良かったかもしれない。




