56.相関図
蓋を開けると、中にはやはり素晴らしい革細工の日記のような物と、沢山の書類の束が出て来た。
シュルツ卿は日記を取り出すと、椅子に座って中を確認し始める。
デレックスとフォルカーは書類のようなものを卓の上に置き、長椅子に座って調べ始める。
フォルカーが思わず声を上げる。
「凄いな。
敵さん側の相関図だ」
しかし、その後絶句する。
別の書類を確認し始めていたデレックスが尋ねる。
「フォルカー、どうした」
フォルカーは無言で相関図をデレックスに渡す。
渡された相関図を見たデレックスも愕然として固まった。
ふたりの異変に気付いてシュルツ卿が声をかける。
「何か不味い事でも」
デレックスは蒼白な顔でシュルツ卿に相関図を渡した。
「これが何か」
渡された相関図を見た途端にシュルツ卿も固まって動かなくなった。
先に我に帰ったデレックスがシュルツ卿とフォルカーに言った。
「これが本当なら大変な事になる」
シュルツ卿は唸りながら卓に相関図を叩きつける。
「こんな事は許されない」
相関図は毒蛇を頂点としたもので、毒蛇の右腕とも言える一番の配下は宰相だった。
他にも重臣数名、各部所にそれこそ騎士団、魔法師団、侍従、侍女、果ては下働きまで膨大な数だった。
デレックスは他の書類も調べ始める。
「こちらはその相関図の裏付けだな。
金の動きや、何の弱味で仲間に引き入れられたかまで詳しく書かれている」
フォルカーも他の書類を確認して言った。
「捕縛出来る程の証拠も揃っている。
凄いな。これをひとりで集めたのか」
シュルツ卿は苦痛に満ちた顔で言った。
「これで王位簒奪を企んでいるのは明白になった」
「陛下やヒーリーヌ様の周りにも多数いる。
一刻も早く全員捕縛しなければならない」
デレックスが言う。
「騎士団や憲兵にも随分入り込んでいるから
上手くやらないと不味いな」
シュルツ卿は日記を革細工の箱に仕舞い言った。
「日記は後回しにしましょう。
今は敵勢力の一掃に尽力すべきでしょう」
シュルツ卿は革細工の箱を4階の執務室の
結界張りの机の中にしまい、塔内に緊急招集をかけた。
2階の居間には憔悴しきったファティマとウィノラ、王女を連れたイエル、疲れ顔のエックハルト伯爵とユング子爵が集まった。
「皆さん、クラウゼさんが我々に託した敵の全貌が明らかになりました。
こちらの相関図を見てください」
相関図はエックハルト伯爵に手渡された。
「何だ。これは」
一瞬にして相関図を記憶したエックハルト伯爵は頭を抱えて、相関図をユング子爵に渡す。
相関図は次々と面々に順番で確認されたが
部屋の空気は重くなる一方だった。
最後にイエルに回ると、それを見たイエルは悲しそうに言った。
「こんなに悪いものが蔓延っているんだ」




