54.提案
デレックスは意を決して提案した。
「クラウゼさんのお別れの会をしませんか」
一同は皆驚く。
つい先程の悲劇である。
「確かにもう少し落ち着いてからならいいかもしれませんね」
シュルツ卿が気丈に答える。
「いや、今夜。ここで」
デレックスはキッパリと宣言する。
「デレックス、それはまだ無理だ」
エックハルト伯爵は小さく呟く。
「いいえ、今夜です。
今夜皆でクラウゼさんの思い出を語り送るのです。嘆き悲しむのはわかりますが、私たちには護るべきリーゼロッテ様がおられる。
リーゼロッテ様の為にも、今夜、クラウゼさんを送るのです」
この心の傷はいつまでも皆の中に残り続けるだろう。
しかしこのままでは、いつまでも引き摺り立ち直れない恐れすらある。
共に暮らして来た面々なら当たり前の事だ。
「今夜やります。
その前に義父上、陛下にご報告をお願いします。クラウゼさんはヒーリーヌ様の侍女でしたから暫くはヒーリーヌ様には伏せておいた方が宜しいでしょう。お体にさわりますでしょうから」
本来なら塔の責任者であるシュルツ卿が指示すべき事であった。
何事にも抜かりないシュルツ卿でも、今度ばかりは動揺を隠せないでいた。
しかし、敵はこういう弱り目を叩きに来るのだ。
「ノア、イエルには話すのか」
シュルツ卿はノロノロと頭を上げ言った。
「イエルにも知らせないと。
あの子ももうすぐ12になる。
賢い子だから隠し切れるものでもない。
しかし、傷つけてしまうだろう」
「ノア、しっかりしろ。
傷つけたのはあちらだ。
我々は一丸となり、
この残虐な行いの報いを受けさせなければ
ならないのだ。
わかっているな」
シュルツ卿はデレックスの言葉で目が覚めた様だった。
「デレックス、悪かった。
かなり動揺していたようだ。
エックハルト伯爵、陛下へ至急報告をお願いします。それから、ユング子爵が見かけた侍女の取り調べも手配してください。
くれぐれもあちらに証人が消されないように
お願いします」
「それから私はクラウゼさんの部屋で証拠なるものを探します」
いつものシュルツ卿に戻ったようだ。
「デレックス、フォルカー、一緒に来てくれるか」
「了解です。副長」
フォルカーが元気に応える。
エックハルト伯爵も苦笑いをして言った。
「陛下にご報告しましょう。
諜報部へも連絡してその侍女を取り調べましょう。
ユング子爵、その侍女は誰かご存知ですか」
「来賓担当のゼンタと言う侍女です」




