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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
54/70

54.提案


デレックスは意を決して提案した。


「クラウゼさんのお別れの会をしませんか」


一同は皆驚く。

つい先程の悲劇である。


「確かにもう少し落ち着いてからならいいかもしれませんね」

シュルツ卿が気丈に答える。


「いや、今夜。ここで」

デレックスはキッパリと宣言する。


「デレックス、それはまだ無理だ」

エックハルト伯爵は小さく呟く。


「いいえ、今夜です。

今夜皆でクラウゼさんの思い出を語り送るのです。嘆き悲しむのはわかりますが、私たちには護るべきリーゼロッテ様がおられる。

リーゼロッテ様の為にも、今夜、クラウゼさんを送るのです」


この心の傷はいつまでも皆の中に残り続けるだろう。

しかしこのままでは、いつまでも引き摺り立ち直れない恐れすらある。

共に暮らして来た面々なら当たり前の事だ。


「今夜やります。

その前に義父上、陛下にご報告をお願いします。クラウゼさんはヒーリーヌ様の侍女でしたから暫くはヒーリーヌ様には伏せておいた方が宜しいでしょう。お体にさわりますでしょうから」


本来なら塔の責任者であるシュルツ卿が指示すべき事であった。

何事にも抜かりないシュルツ卿でも、今度ばかりは動揺を隠せないでいた。

しかし、敵はこういう弱り目を叩きに来るのだ。


「ノア、イエルには話すのか」

シュルツ卿はノロノロと頭を上げ言った。


「イエルにも知らせないと。

あの子ももうすぐ12になる。

賢い子だから隠し切れるものでもない。

しかし、傷つけてしまうだろう」


「ノア、しっかりしろ。

傷つけたのはあちらだ。

我々は一丸となり、

この残虐な行いの報いを受けさせなければ

ならないのだ。

わかっているな」


シュルツ卿はデレックスの言葉で目が覚めた様だった。


「デレックス、悪かった。

かなり動揺していたようだ。

エックハルト伯爵、陛下へ至急報告をお願いします。それから、ユング子爵が見かけた侍女の取り調べも手配してください。

くれぐれもあちらに証人が消されないように

お願いします」


「それから私はクラウゼさんの部屋で証拠なるものを探します」


いつものシュルツ卿に戻ったようだ。

「デレックス、フォルカー、一緒に来てくれるか」


「了解です。副長」

フォルカーが元気に応える。


エックハルト伯爵も苦笑いをして言った。

「陛下にご報告しましょう。

 諜報部へも連絡してその侍女を取り調べましょう。

ユング子爵、その侍女は誰かご存知ですか」


「来賓担当のゼンタと言う侍女です」



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