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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
51/70

51.行き先を知る者


北の塔は静まり返っていた。


シュルツ卿とウィノラはゆっくりと居間へ向かうが足取りは重かった。

いつもは物見台からアドラーを送ってくれる

ユング子爵も見当たらない。


螺旋階段を上がろうとしたところで、イエルが階段の上から下を覗いて言った。


「お帰りですか」


シュルツ卿はイエルに向かい言った。

「全員を居間へ呼んでほしい。

リーゼロッテ様はイエル、君が見ていてくれないか」


イエルは明るく笑って

「わかりました」


と、各階へ連絡するため走り出す。


イエルの明るい笑顔に少し励まされ2階の居間へ向かおうとすると、エックハルト伯爵、デレックス、フォルカーが塔内に戻って来た。


エックハルト伯爵はうかない顔のシュルツ卿とウィノラを一瞥すると静かに言った。


「やはり其方が当たりでしたな」

「我々はハズレでしたのでな」


シュルツ卿は悲しそうに頷いた。

「予想通りでした。

 残念です」


フォルカーは急いでウィノラの横に並び肩を抱く。

「お兄さま」

ウィノラは思わずフォルカーの胸に顔を埋め泣きだす。

その背中を優しくさすりながら、フォルカーは呟く。


「辛いな。

でも本当に辛いのはここからだ」

恐ろしい呟きにウィノラの涙は引っ込んだ。


五人は居間に入ると、無言でそれぞれ席に着く。

そこへ、ユング子爵、ファティマ、クラウゼがやって来た。


「お呼びと聞きまして」

ユング子爵が尋ねる。


「その通りです。

大変重要なお話になります。

皆さん、席におつきください」


三人が席に着くと、シュルツ卿はフォルカーに目配せをする。

フォルカーは頷き、すっと立ち上がり、扉の前に立った。


その様子に、ユング子爵、ファティマ、クラウゼ、そしてウィノラがギョッとしてシュルツ卿を見る。


窓側にはシュルツ卿とエックハルト伯爵が座っているため、正に監禁と言って良い状態だ。


「シュルツ卿、これは一体如何なる事ですか」

ユング子爵が静かに尋ねる。

ファティマとクラウゼは突然の事態に震えている。


「正直に申し上げます。

この北の塔内にあちら側に情報を漏らしている者がおりました」


ユング子爵は平然としているが、ファティマとクラウゼは驚愕している。


「私とエックハルト伯爵は昨日ある仕掛けを施しました」

シュルツ卿は一息間を空ける。


「あちらが不利になる証言者が現れたと言う設定で翌朝早くに現地へ駆けつけると皆さんにお知らせしました」


その話はシュルツ卿より夕食時に全員一緒に聞いた事だが、肝心の何処へ行くかはその場では口にしなかった。


「行き先については、ユング子爵、ファティマさん、クラウゼさんそれぞれに別の場所が耳に入る様手を打ちました」


「最初に申し上げておきますが、昨日の時点で既に漏洩者は絞られていました。

ただ、最後の確認として、仕掛けたのです」


シュルツ卿は済まなそうに謝る。

「ですので、関係ないおふたりまで欺く様な形になってしまった事はお詫びします」


エックハルト伯爵が口を挟む。

「私とシュルツ卿の二人だけで仕組んだ事じゃ。ウィノラもデレックスもフォルカーも知らなかった話でな」


ウィノラも震えながら頷く。


「デレックスとフォルカーには帰路途中で知らせたがな」

風魔法を使ったのだろう。


「そして、本日、西の森近くの小屋へ出向いた私とウィノラ嬢が小屋ごと襲撃されました」

シュルツ卿は少し息を吐いてから、ユング子爵、ファティマ、クラウゼの三人を順繰りに見回してから言った。


「そして、西の森近くへ出向く事を知っていたのは、あなたひとりです」






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