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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
48/70

48.漏洩


それからは、あちらの証拠探しや魔法についての研究などに明け暮れた。


半年が過ぎ、その間に小さな証拠を探し当てると、証拠や証人が消えた。

流石に内部事情が漏洩していると、疑わざるを得ない状況だった。


ある日、シュルツ卿は執務室にエックハルト伯爵とウィノラを呼び出した。

3人になると、結界を張り話し始めた。


「こんな事は考えたくありませんでしたが、

どう考えても内部に協力者がいるとしか考えられない状況です」


エックハルト伯爵も苦い顔で頷く。

「塔内でしか共有していない情報が漏れていますからな」


ウィノラは青い顔をしている。

「北の塔内に情報を流している者がいるということですか。信じられません」


シュルツ卿も頷く。

「陛下と相談の上、吟味して集まって頂いた方ばかりです。疑いたくは無いが、現実は情報が漏れています」


ウィノラはハッとして言った。

「まさか、イエルを疑っているわけではないですよね。あの子は確かに選ばれてここに来たわけではありませんが、あの子に限って、裏切るなどという事はありません。

私が保証します」


ウィノラの剣幕にシュルツ卿が微笑む。

「イエルの事を疑ったりはしていませんよ」

「あの子はそんな子ではない」

「第一、イエルはここに来て以来、一度も外出していませんしね」


エックハルト伯爵も頷きながら、言った。

「イエルは無いだろう。

外に出る事も無く、外部と連絡する手段も持っとらんからな」


不気味な声で続けた。

「私らの様に、風魔法で囁くことも、精霊魔法を使い連絡することも出来ぬからな」


ウィノラは驚愕して声を出す。

「まさか、お父さまはユング子爵をお疑いですか。そんな事はありません。そんな方ではありません」


エックハルト伯爵はのんびりと言った。

「例えに出しただけじゃよ」


「イエル以外は塔外に出る時もあるしな。

私たちも含めてだよ」


「疑えば皆怪しい」


ウィノラは考え込んだ。

もしかしたら、塔内の疑心暗鬼を生む事が目的なのではないか、と。


「塔内を疑心暗鬼にさせただけでも、あちらの思う壺でしょう」

シュルツ卿のその目の奥に深い悲しみを見たウィノラは、無性に悔しくなった。


「取り敢えず罠を張りましょう」


シュルツ卿の言葉にエックハルト伯爵も同意する。

「そうですな。

 それでは私の出番ですな。

 お任せあれ」


「お父さま、何をなさるおつもりなのですか」


「それは後からのお楽しみだな」


言葉を濁し、エックハルト伯爵は退室した。


ウィノラは不安になり、シュルツ卿に駆け寄る。

「ノア様、お父さまは何をなさるおつもりでしょう」


シュルツ卿は微笑んで言った。

「貴女のお父上は情報部のトップで、優秀な方です。こう言った事はお得意ですから、心配せずに待ちましょう」


そしてポツリと寂しそうに呟いた。

「何かの間違いであってくれれば、良かったのですが」


ウィノラはシュルツ卿の言葉を聞いて、シュルツ卿もエックハルト伯爵も漏洩者が誰かわかっているのではないかと感じた。


おそらくは確信も持っていて、詰めの段階であろうことも。


ウィノラの胸に深い悲しみの霧が立ち込めたのだった。




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