42.ふたりの想い
シュルツ卿は今までの経緯を話した。
極秘事項のため、副師団長にも秘匿していた事にウィノラは驚いた。
「そんな事が。
あちらがそこまでするとは」
シュルツ卿はウィノラを促した。
「さぁ、デューラー伯爵夫人にお聞きなさい」
はい、と頷き、ウィノラは尋ねた。
「初めてお目にかかりましたのに、不躾なお伺いをします事をお許しください」
ウィノラは自身の仮説を説明し、新たな仮説も付け加えた。
「つまり、悪意は使い手に返り、
善意も使い手に返る、と言う事でいいのか」
デューラー伯爵夫人は確認した。
「その通りです。
もし、デューラー伯爵夫人の身に起こった出来事をお教え頂ければ、仮説の立証と、あちらの断罪の切り札になります」
「もしかしたら、ご自身に危険があるかもしれません」
最後は声が小さくなる。
デューラー伯爵夫人は大声で笑い出し言った。
「そんな事か。
別に隠し立てしていたわけではないんだ。
あの時はベンノの育ちが悪くてね。
私もあまり体調が良くなかったから、
出来る限りの癒し魔法を使っているうちに
2ヶ月ほど、産月が延びてしまっただけなんだ」
「回りはお腹の膨らみとかで月数を判断して
誤った情報が流れたんだろう」
「もちろん、危険には十分対処出来るから心配要らない。優しい子だね。エックハルト伯爵令嬢は。ノアが恋い焦がれるわけだ」
アッハッハと豪快に笑うデューラー伯爵夫人にウィノラも思わず微笑む。
「その後、お加減が優れないとか、何か異変はありませんでしたか」
「異変と言うか、すこぶる体調が良くなり、気分も上がった。ベンノも同じだ」
ウィノラは、良かった、と頷く。
「証言が必要な時はいつでも呼んで欲しい。
ベンノと二人で駆けつけるから」
有り難い言葉にウィノラは感動し、
「ありがとうございます。お礼のしようもありません」と呟いた。
「あ、礼と言ってはなんだが」
デューラー伯爵夫人はニヤリと笑って要求した。
「ふたりの結婚式には必ず呼んでほしいな」
真っ赤になるウィノラを気遣いながら、シュルツ卿は言った。
「その節には必ずご招待いたしますよ」
ウィノラは何処へ目を向けて良いのかわからなくなり、下を向いたが、その内に、シュルツ卿は「お時間を取らせまして申し訳ありませんでした。それではいずれまた」と挨拶した。
ウィノラも「ありがとうございました」と挨拶して、副師団長室を退室した。
シュルツ卿と二人になったので、ウィノラは
思い切って聞いてみる。
「あの、皆さま、何かもう私たちが、その」
いつものウィノラと違い歯切れが悪い。
「どうも、私の隠し切れない想いが溢れ出て、皆の知るところとなっているようですが、ウィノラには気まずい思いをさせてしまいましたね」
シュルツ卿はご自分が告白されている事をおわかりなのかしら、と疑問に思いながらも、
「気まずいわけではありません。ただ少し恥ずかしいだけです」
とウィノラは答えた。
「貴女の事を大切に思っています。
しかし、私たちはまず王女様をお守りしなくてはなりません。
全てはそれからです」
ふたりの想いも、王女様を守り切ってからの話、ウィノラは大きく頷くのだった。




