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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
38/70

38.拾い物


日が経つにつれ、人々に焦りが出てきた。


特に、この仮説を提示したウィノラの焦燥は見るも哀れなものだった。


シュルツ卿は必ず何か見つかる、と励ましてくれるが、結局何の成果も得られなければ、

責任はシュルツ卿にも及ぶ。


エックハルト伯爵は、

「焦る事は無い、悪事は必ず後から顔を出すものだ。」

とウィノラを励ましたが、日々は虚しく過ぎていくばかりだった。


そんな鬱鬱とした日々ではあったが、王女とイエルの存在が面々の救いになっていた。


イエルは王女のお世話も積極的に手伝い、寧ろ主力になる勢いだ。

小さい弟妹の面倒を見てきたイエルには、たったひとりの王女様のお世話など、容易い事だったし、何より綺麗で美しい王女といられる事が幸せだった。


多事に追われている間に、シュルツ卿、エックハルト伯爵、ウィノラの王女様からの寵愛ヒエラルキーはイエルに追い越された。


イエルは物資の納入では下働きの二人と共に働き、ユング子爵と交代で物見台にも立った。

ユング子爵は時間が許す限り、魔法の知識をイエルに教えた。


料理人のコッホを手伝って、料理の下準備などもした。イエルを気に入ったコッホは秘伝のレシピを少しずつイエルに教え始めた。


ファティマとカイ・クラウゼは王女様のお世話の合間に、イエルに所作や作法を叩き込んだ。


シュルツ卿やエックハルト伯爵の雑用も手伝った。

ウィノラの研究に使用する魔法書をさがしたりもした。

忙しい中でも、皆イエルに感謝し、あらゆる角度からアドバイスをおくった。


王国でも屈指と言える指導者たちと、もともと利発で素直で努力家のイエルの出会いは、やがて大きく花開く事は間違いない。

誰もが確信していた。


シュルツ卿はウィノラに言った。

「私たちはあの子を保護したと思っていましたが、とんだ間違いでした。

私たちは大した宝物を得たのです」


鬱鬱としていたウィノラもこの時ばかりは

心から微笑み言った。


「とてつもない拾い物をしました」


後日、ウィノラは本当にとてつもない拾い物をしたと思い知るのだった。


研究が進まない中、何か資料は無いかと、イエルと共に、塔の図書室を訪れていた時だった。


二人で手分けして、妊婦が自分の魔法魔力を使い産月を延ばした事例に繋がるものを探していた。


ふいにイエルが言った。

「ウィノラ様、もし妊婦が産月を延ばしたということなら、何か止むに止まれぬ事情があったのかもしれませんよ」


ウィノラははっとしてイエルに尋ねる。

「止むに止まれぬ事情とはどういった事ですか」


イエルはウィノラに見つめられ、ちょっと恥ずかしそうに続けた。


「例えば、長旅に出ていて旅先で産むにはまずい事情があったりとか、貴族様なら家門内の継承順位とかで先に産めないとか」

「すみません。ただの思いつきです」


ウィノラにとって目から鱗だった。

前王妃とヒーディを基準にしていたため、悪意を前提としていた。

自らの為、子を利用する。

そんな事例ばかり探していた。

仮説通りなら、妊婦の魔法魔力を使い産月を延ばせばその報いは妊婦に向かう。

子のためなら、報いを厭わずに産月を延ばす母親がいるに違いない。

もし、自分の母が生きていたらきっと子のためにそうするだろう。


根本的に間違っていた。

「ありがとう、イエル」


ウィノラはイエルをギュッと抱きしめてから

急いでシュルツ卿のもとへ向かった。


図書室には、全身真っ赤になった少年だけがポツンととり残された。



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