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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
37/70

37.仮説の行方


ウィノラは唇を震わせ言った。

「この仮説が頭に浮かんだ時から、全ての断片がきっちり噛み合って、確信のようなものになりました」

「こんな考え方をしてしまう自分が恐ろしいし、汚く感じます」


シュルツ卿はそれは優しく微笑んで、ウィノラの小さな手を更に強く握った。

「いいえ、恐ろしくも、汚くもないのです。

私たちは命を脅かされたのですから、あちらが恐ろしく汚いのです。間違ってはいけませんよ」


「はい」

涙ながらにシュルツ卿を見つめるウィノラは

それは美しく愛らしかった。


「貴女の仮説はかなり的を射ている。私も合点がいきました。この件は至急陛下に報告し、真相を究明しましょう」


エックハルト伯爵は握り合っている若い二人の手を凝視しながらも、今回はそのままにしておいた。

「私は陛下に風の魔法でお伝えしよう。おそらく諜報部が動く事になるだろうて」


「陛下からご返答いただいたら、塔内で情報共有しましょう」

シュルツ卿は二人に言った。

「この仮説が正しいとなれば、あちらの根底が覆る」




エックハルト伯爵はアルベアト王へ報告した。

アルベアト王は驚愕したが、仮説が立証されれば、光明がさすと、諜報部へ大至急の調査を命じた。


シュルツ卿は塔内の面々に、仮説を説明し、情報共有を行なった。

アルベアト王からの指示で、デレックス・シュナイダーにもこの仮説は披露され、協力を求めた。


ウィノラはこの仮説の根幹である、

強大な魔法や魔力を持つ妊婦が産月を延ばせるか、という命題の立証の為、過去の事例が無いか、産月を延ばす魔法や魔力の解明に時間を割いた。

エックハルト伯爵の膨大な記憶の中にある、

子が強大な魔法や魔力を持ち、それを母親が使用した例は幾つかあったので、それも、全て文書化して、研究資料とした。


諜報部による調査は難航した。

二十数年前の事である。

記録も記憶も錆び付いており、なかなか真相に辿り着けない。


シュナイダー商会も独自ルートで探っていたが確たるものは出てこなかった。


ウィノラは妊婦の魔法や魔力で産月を延ばした例を探したが、容易には見つからなかった。

余程のことがない限り、道義的に許される事ではないため、そのようなことがあったとしても、家門の恥とひた隠しにされるのが落ちであるからだ。



そうこうするうちに五ヶ月が経ち、

ヒーディ夫人の懐妊が発表された。


「お腹の子の命名儀式と魔法書の鑑定まで

必ずや証拠をみつけ、断罪するのだ」


アルベアト王の大号令のもと、配下はひたすらに証拠探しに明け暮れた。


しかし、未だ何の手掛かりもえられなかった。




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