34.ようこそ
間も無くシュルツ卿が塔の入り口まで降りて来てエックハルト伯爵とウィノラに微笑み言った。
「イエルはおふたりのお眼鏡に敵った、という事ですね」
「まさしく」「はい」
エックハルト伯爵とウィノラは同時に返事をして、顔を見合わせ笑った。
「わかりました。それでは、イエルの結界認識を行いにいきましょう」
シュルツ卿は門へ歩き出す。
ウィノラがその横に並び、輝くような笑顔でシュルツ卿を見上げて話始める。
後ろで取り残されたエックハルト伯爵は、
少し拗ねながらついて行く。
全面的にエックハルト伯爵とウィノラを信頼し、イエルを受け入れようとするシュルツ卿に、エックハルト伯爵は密かに賛辞を贈っていた。
これだけの信頼を寄せられて、嬉しくもあり、責任の重大さも改めて噛み締める。
勿論、一旦引き受ければ、最終的に全ての責任をシュルツ卿が負う事になるだろうし、シュルツ卿は一点の曇りもなくその責任を負うであろう。
「若いのに、大した男よ」
エックハルト伯爵は心の中で呟いたが、同時に思った。
「じゃが、それとウィノラの事は全く別問題」
前を歩く二人の男女に厳しい視線を送りつつ、ごちた。
シュルツ卿もまだまだ苦労が絶えないようだ。
門の外へ出ると、2人の近衛騎士の間で不安そうに佇むイエルがいた。
近衛騎士の「馬車は馬場へ向かわせました」
との報告を聞くと、シュルツ卿は頷き、イエルの目を見て言った。
「ようこそ、イエル。
私はノア・シュルツ。
この北の塔の責任者だ。
今日から君は北の塔の仲間になる。
王女殿下を守るために君の力を貸してくれ。
よろしく頼む」
イエルはびっくりして、目を丸くして言った。
「王女様」
ウィノラはにっこりして続ける。
「ここは王女様をお守りしている北の塔なの。私たち全員で王女様をお守りするのよ」
「そ、それじゃ、あの時」
言いかけたイエルをシュルツ卿がそっと制し、言った。
「この塔に入るためには結界認識が必要なんだ。個体識別するんだよ。その魔法をかけるからね」
そう言って、シュルツ卿はイエルに霧の様な小さな水の粒を吹きかけた。
天気が良いため、小さな虹が出来る。
「綺麗」
思わず見惚れるウィノラ。
「これは吉兆。イエルが幸運を運んできてくれそうだ」
エックハルト伯爵がハッハッハッと豪快に笑う。
「無論、いろいろと規制は多いが、
これで君は北の塔に出入り自由だ。
ようこそ北の塔へ、イエル」




