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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
33/70

33.アドラー

イエルを連れて三人で北の塔に戻ってきたエックハルト伯爵とウィノラは、イエルが塔内に入れるように、シュルツ卿に結界認識してもらう為、イエルを門前の近衛騎士に預けて、一旦中へ入った。


ウィノラはエックハルト伯爵に思い切って話した。

「お父さま、私、先ほどのお父さまのお話から、とても嫌な仮説を立ててしまいました。

イエルの受け入れが終わったら、お父さまとシュルツ卿に聞いていただきたいのですが」


「嫌な仮説とな」

エックハルト伯爵はウィノラが滅多な事は言わないと熟知しているだけに、一瞬背筋に寒気が走った。


「わかった。まずはイエルの受け入れだ」


ウィノラは頷き、塔へと歩いて行く。


物見台から見ていたユング子爵が、精霊魔法を使い狗鷲を呼び出し、ウィノラたちのところまで飛ばした。


狗鷲の名はアドラー、ユング子爵はアドラーを通して遠くの人とも会話が出来る。

狗鷲なので、かなり遠くまで飛ばせるので、

伝達手段としては便利なのだ。


エックハルト伯爵等、風の使い手も風を使って相手の耳元で囁く事が出来るが、そよ風に乗せるので、あまり遠くまでは使えない。


ウィノラは物見台から急降下してくるアドラーに気付き、見上げて微笑みながら言った。

「お父さま、アドラーが来てくれました。

ユング子爵が気付いてくださったようです」


「上まで行かなくても済みそうだな、助かったわい」

今日はいろいろと精神的に疲れたエックハルト伯爵の本音が漏れる。


アドラーが塔の前にある植え込みの木の枝にとまり、話始める。

「主人がふたりに聞いている。

シュルツ卿に結界認識をしてもらう必要はあるか、と」


アドラーは基本的に主人であるユング子爵にしか敬語を使わない。


「これは察しが良くて助かりますな。

至急、お願いする、と伝えてくれ、アドラー」


「了解」


一見、無愛想な口調だが、アドラーはいざとなれば仲間を守り共に戦う優秀な戦士だ。


「ありがとう、アドラー」

ウィノラの言葉にアドラーは一回ウィノラの頭上を旋回してまた翼を少し畳んで急浮上して、物見台へ戻る。


「それでは、シュルツ卿がみえるまで、ここで一息つこうかの」

ため息をついたエックハルト伯爵にウィノラが心配そうに近寄る。


「お父さま、具合でも悪いのではありませんか」

心配そうなウィノラに目尻を下げてエックハルト伯爵が答える。


「今日はいろいろ堪える1日だったからな。

少し疲れただけでの」


その言葉にウィノラは、頭から離れない仮説を今日話して良いものか、と思った。



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