31.イエルの告発
「そのまま村に帰ってくると、旦那たちはうちの親にシュナイダー商会で雇うと言って、僕を村から連れ出しました。旦那たちの態度やあの山を崩落させた魔法のすごさに、胡散臭いと思って断わろと思ったんですが、支度金がたくさん貰えて。家族のことをかんがえたら断れなくなって」
イエルはしゃくり上げている。
「うむ、それで王都に移動してモッペルの家に行き、それからホフマン伯爵に紹介されて、住み込むようになったのだな」
イエルは、はい、と答え続ける。
「シュナイダー商会では無かったので、変だなとは思ったけど、ホフマン伯爵の家だったので心配ないと思って」
流石に王国の良心、国の隅々までその善行が轟いている。
「あの日、モッペルに大事な用があるからついてこいと言われて、高い塔の近くへ連れて行かれました」
あの道はあくまでも王宮内の道で外部から簡単に入り込めるものではない。
「その道には、どこから入ったのかな」
エックハルト伯爵が
尋ねる。
「何か大きな門から入りました。すごく立派で騎士さんが何人も立ってて、中に入る人を確認していました」
堂々と正門から入ってきた訳か。
「モッペルは何か言ったかな」
「いえ、何か紙を騎士さんに渡したら、すぐ入れてくれました」
王宮の出入りはある意味、緩い。
普通は簡単に入れるものではないが、
権力者の証書があれば、子連れのモッペルが
簡単にすり抜けられてしまう。
だからこそ、北の塔を要塞化する必要があったのだが。
「それから、結構歩いてあの道の横の木立で長い時間待ちました。そのうちにピーと笛の音が聞こえてくると、モッペルがそこに立って魔法を出せと言いました」
「出さないと村にいる家族を皆殺しにするって言うんです。恐ろしくて必死になって魔法を出しました」
「そしたら、後ろにまた、あの人の気配がするんです。山で背後にいた人です。そしたら、また魔力が大きくなってあんな事に」
「体が勝手に魔法を出してしまうので、怖くなって、それで後ろをそっと見たんです」
全員が固唾を飲む。
「後ろにいたのは女の人でした。金の髪に赤い目をしていました」
王妹ヒーディ、現シュレヒテ侯爵夫人。
やはり、とイエルを除く全員がそう思った。
「そして、笑いながら言いました。
魔力を増やすのも、魔力や姿を隠すのも、
何でも出来るわ。すごいわ、と」
「夫人にそんな魔力はありませんでしたし、
急にそんな魔法が使えるようになるのは有り得ません。ただ一つの例外を除いて」
エックハルト伯爵の言葉にホフマン伯爵が続けた。
「お腹に強大な魔力を持つ子を身籠もったという事でしょう」




