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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
29/70

29.訪問


デレックスは最後に、こう言って帰っていった。

「イエルのように、どこかに埋れている魔法書持ちを、あちらがまた探さないともかぎりませんので、そちらの調査も合わせてしておきます」

「イエルの今後につきましては、義父上に一任いたしますのでホフマン伯爵と良くお話ください。どこも引き取り手が無いなら、うちで引き受けますので」


エックハルト伯爵はため息をつき、

「それでは私もホフマン伯爵を訪問しようか」


ウィノラがエックハルト伯爵に駆け寄り、

嘆願した。

「お父さま、どうか私もお連れください」


エックハルト伯爵が困ったようにシュルツ卿を見る。

「イエルが心配なのですね。

分かりました。お行きなさい。

そして、もしイエルがこの北の塔に、王女様に仕えると言う事に値する子どもなら、ここへ連れて来てください」

「頼みましたよ」


ウィノラは感謝してスカートをちょっと持ち上げ御辞儀をする。


「それでは行くぞ、ウィノラ。

シュルツ卿、塔の家紋なしの馬車を借りますぞ」


エックハルト伯爵に頷き、シュルツ卿は呟いた。

「良い方へ向かうといいが」



エックハルト伯爵とウィノラを乗せた馬車は

北の塔からそう遠くないホフマン伯爵邸に

あっという間に着いた。


「これだけ近いなら、確かに都合も良かっただろう」

エックハルト伯爵の呟きにウィノラも頷く。


執事に案内され、簡素だが品がある応接間に通される。

「ホフマン伯爵もモッペルの事は気づいているだろうしな」


そこへホフマン伯爵と伯爵夫人が連れだって現れた。

「エックハルト伯爵、よくいらした」


何て素敵なご夫妻かしら、とウィノラは思った。

優しさに溢れ、品性を感じる。

いつか、私もこんな夫婦になれたら、どんなに素晴らしい事か、と考えて、その相手にシュルツ卿を思い浮かべた自分に赤面する。


「ホフマン伯爵、急な訪問をお許し願いたい。不測の事態がありましてな。ご相談に伺ったのですよ」

エックハルト伯爵が切り出す。


ホフマン伯爵は頷いて言った。

「どうぞお座りください」


品の良い薄緑色の長椅子に腰掛けると、ホフマン伯爵が言った。


「イエルの事ですね」

ホフマン伯爵は辛そうだ。


「ホフマン伯爵にはお辛い事ではありますが」とエックハルト伯爵が事の次第を説明する。


ホフマン伯爵と夫人の顔がみるみる青ざめていく。


「そういう訳で、イエルの今後についてご相談に上がったのです」






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