27.行方
デレックスは全員を代わる代わる見ながら話始めた。
「先日の襲撃の件につきまして、私共シュナイダー商会にあられも無い嫌疑が掛かる事態となりましたので調査をしておりました」
もちろん誰もが事と次第を知っている。
「シュナイダー商会に嫌疑が掛かるという事は、即ち義父であるエックハルト伯爵をも巻き込む事ですので、慎重且つ迅速にベルガー侯爵領と王都を同時に調査いたしました」
流石抜かりない、とシュルツ卿は思った。
「ベルガー侯爵領での調査でわかったことは」
デレックスは調査内容を説明し始めた。
「領内の山岳地帯の村に恐らく土魔法の魔法書持ちで魔力もある10歳の男子が存在した事。名前はイエル」
「イエル」
ウィノラが呟く。
「数ヶ月前より、ベルガー領内を見かけぬ二人組の男が探っていました。調べていくうちに、どうやら魔法書持ちを探していた、という事がわかりました」
一同の顔つきが険しくなる。
「その二人組が山の崩落直前に、イエルの村にも姿を現していたようです。そして崩落後、シュナイダー商会の名を語り、イエルを連れ去った」
ウィノラは心配そうに言う。
「イエルは無事なのでしょうか」
シュルツ卿が唇に人差し指を当て、
そっと「しっ」と諭すと、ウィノラが口を挟んだ無礼に気付き、頬を赤らめ頷く。
拐かされた子どもの心配をするウィノラを愛おしく感じたシュルツ卿だが、その子が襲撃の道具と化しているなら、甘い事は言っていられない。
頬を赤らめ済まなそうにデレックスを見たウィノラにデレックスは優しい笑顔を返した。
その笑顔を見て固まる三人の男達、
シュルツ卿、エックハルト伯爵、フォルカー。
そんなに優しい笑顔はウィルメットにしか見せないが、ウィノラにまで。
デレックスを怖い目付きで睨む三人に、デレックスは体の芯まで凍りつきそうな冷たい視線を返し、説明を続ける。
「イエルを連れた二人組は馬車で王都まで移動しました」
「そして、下町の奥にある貧民街の、ある女性の家に落ち着きました」
イエルはそこにいるのか聞きたかったが、シュルツ卿が目でダメだと言っているので、ウィノラは我慢する。
「3日後、小綺麗な服を着たイエルとその女はある貴族を訪ねています」
いよいよ本題か、シュルツ卿は思った。
「その貴族はホフマン伯爵、皆様ご存知の緑魔法の魔法書持ちです」




