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棄てられ姫は誰にも愛されない  作者: 鷺森薫
アインホルン王国編
13/70

13.要塞


「北の塔要塞計画」とは、

アルベアト王とシュルツ卿の間で秘密裏に進められていた計画である。


魔力が弱まっているとはいえ聖魔法の使い手ヒーリーヌ王妃のお腹に御子がいるうちは、さしものシュレヒテ侯爵一派も手が出せない。

しかしただでさえ弱っているヒーリーヌ王妃が出産という大事の後で、自らと御子を守り切れるかと言われれば難しいと言わざるを得ない。


そこで北の塔を要塞化し、信頼できる人員を配置し、御子が生まれたらすぐに北の塔に移す事としたのがこの計画である。


期間は乳母がお役御免となる12歳まで。

成長度合いによっては、もっと早く王宮に戻れる可能性もある。


配置される人員は少数精鋭。

最低限、御子と自らを守れる魔法の使い手である事。

信頼出来る人物である事。

御子の成長に合わせ、お世話や教育が出来る事。

命の危険がある事を理解している事。

外部との接触が最低限である事に問題が無い事。


これだけの条件をクリア出来る人材がどれほどいるか。


責任者は当然の如くシュルツ卿であった。

次期魔法師団長の呼び声高い上位魔法「水の

魔法書持ち」。人格者で、王立大学も首席の才人。名門シュルツ侯爵家次男で「水の貴公子」の二つ名を持つ優美な宮廷人でもある。


乳母役の侍女も最初から決まっていた。かつてアルベアトの乳母であった「乳母の中の乳母」の二つ名を持つファティマ・ベックである。

ファティマは子爵家の傍系で「空間の魔法書持ち」である。

かつて、幼いアルベアトに危機が訪れた際、空間移動で命を助けた逸話の持ち主でもある。


実はこんな風に最初から全ての顔触れはほぼ決まっていた。


ただひとり、ウィノラ・エックハルト伯爵令嬢については、16という年齢が議論された。

アルベアト王は若すぎるのではないかと危惧したが、シュルツ卿は若さこそが重要であると説いた。


顔触れの中で1番若いのがシュルツ卿で24歳。

少しでも年齢が近い人間が側にいる事が御子にとっても良い事であるし、ましてや、ウィノラ・エックハルト伯爵令嬢以上の才媛はおらず、人格も家柄もそしてシュルツ卿との魔法の相性も最高である、と。

「ウィノラ・エックハルト以上の適任者がいるでしょうか」


アルベアト王はため息をついて同意した。

「確かにウィノラ・エックハルト以外あり得ないだろう」


そして、ぽつりと呟いた。

「しかし婚期も逃してしまうだろう」


アルベアト王は我が子も心配であるが、

忠臣のエックハルト伯爵を思った。

あの魔物討伐の際に妻を亡くし

その後全ての愛情を3人の子供たちに捧げてきた男。


シュルツ卿はアルベアト王に誓った。

「ご心配なさらずとも、その時は私が責任を取りましょう」


画して、要塞計画は動き出したのであった。


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