ひとりの巫女は何を思う。4
「どおした?3rd泣きそうな顔して。」
幼女の隣を歩く男が隣にいる幼女に尋ねる。
「泣きそうな顔なんかしてない!」
ムキに答える幼女は、隣の男に吠える。
「だいたい、子供がそんな顔をするもんじゃ…」
「子供、ゆうなッ!それとお前も!さっきから、幼女、幼女言うなバカッ!」
「誰に向かって言ってんだ?3rd?」
「うっさい!」
ご機嫌斜めな様子な幼じ……である。
「ともかく、泣きそうな顔と、座った目をするな。歳取ると老けるぞ?」
「魔法少女は歳をとっても、老けないのッ!」
「そうかい、ならいいんだが…」
2人が歩く海岸沿いの道は日が落ち始めようとしていた。
天気も良くはなさそうに、灰色の雲が広がりつつあった。
「少し急ごうか、足が痛くなってきた。」
「歳なの?まだ若いのに…可哀想。」
「違うはバカタレ。湿気によって膝が痛くなったりするんだよ。」
そんな事あるんだと感心しながら聞いていると、隣の男が語り始めた。
「昔、ある男がいたんだ。おいっ。聞いてるか?」
「うん。聞いてる。」
「でだ、その男はある日足に大きな怪我をしちまって、治ったのはいいが、走ったり激しい運動ができなくなったんだ。
ある朝、あまりの足の痛さに目を覚ますと、外は雨が降っててな?その男は足が痛くなるのには何かあるのかもしれないと
悟ったんだと。それから何日かたって、<雨が近づくと足が痛くなる>ってのに気づいいたんだと。それからその男は
死ぬまで雨に濡れることなく過ごせたって話し…」
「………」
振り向けば隣に3rdと呼ばれる幼女の姿はなく、遥か先に歩いて行っていた。
「ったく。これだから子供は嫌いなんだ。」
男は後ろから幼女を抱き上げると肩車をして歩くことにしたらし。
「なっ!?降ろせこのロリコン!」
抵抗する幼女をよそに男は無視しながら病院への帰り道を歩く。
「大人のありがたい話を聞かないから、お仕置きだ。」
「好きにすればいい。2ndのばかッ。」
3rdと呼ばれる幼女は降りることができないと判断し、されるがまま肩車をみとめた。
昔、父親にされていたことを思い出し、耽ることにした。
(降りたきゃ、降りれば...まぁ、いいか。)
2ndと呼ばれる男は少し過去を思い出していた。
そこは鉄と油の臭いに満ち溢れていた。
火薬の臭いも漂ってくる。
車には武装した男たちが8人乗っている。
4人づつ座り二列で向かい合わせになる形だ。
車内はただ、道なりに揺られながら沈黙が続く。
「作戦時刻だ。用意しろ。」
助手席から男の声に沈黙していた空気が、緊張や殺気に切り替わる。
(この作戦が終われば、家に帰れる。娘に会える。)
「○○、また娘のことか?相変わらずだな。まぁこれが終われば帰れるし、会えるさ。」
向かいに座る男が声を掛けてきた。
「そうだな。俺は女に会える♪」
隣の男が、聞いてもいないのに言い出した。
「お前ら、続きは帰りにしろ。目的地だ。」
隊長の声に皆、顔が強張る。
「作戦を確認する。3、3、2に別れ、それぞれポイントに到着し、合図とともに建物内の
ターゲットを含めた20人近くを殲滅する。相手は武装こそしているが、素人の集まりだ。
情報が正しければすぐに片付く。気を抜くなよ。生きて帰れ!行くぞ!散!」
男たちは各ポイントに移動し始める。
夜の闇に紛れ、移動する影がちらほら見えるが、移動するスピードが速く、闇の中では
確認できない。
『こちらより各班へ、ポイントに到着。合図を待て。』
隊長の声に各班から無線で連絡が入り、ターゲットの潜む建物付近で待機する。
『3、2、1、GO!』
隊長の合図とともに、建物の一角で、大きな爆発音がなり無線から悲痛な叫びが聞こえる。
『罠だッ!くっそう!やられた!退避!たっ!?』
銃声の音とともに無線が途絶える。
「どうした!応答しろ!おいっ!」
ガサッ!
「!!!」
あちこちで、銃撃戦が始まり、向こうの指示らしき声が聞こえる。
言葉の言語が違うらしく何を言っているのかわからない。
こちらは3人に対し向こうは6人いや10人近くいるみたいだ。
「くっそ!マジでしゃれにならん。」
「どうする?このままとどまっても仕方がないぞ!?」
「退避だ、指示は退避だ!迎撃しつつ、退避だ!」
こちらもプロとしての維持がある。
逃げながらでも、素人なら半数は...
隊長は《罠だッ!》と言わなかったか?
下手をすると、向こうもプロ...あるいはプロ以上...?
まずいな、こちらは少数な上に罠にはまりパニック状態になりかけている。
「俺たちだけでも、生きて帰ろう。」
「意地でも、帰るんだ。」
2人はそういうと、撤退しながらも、敵を迎撃している。
「帰るぞ、必ず!」
銃撃戦は夜明けまで続き、あちらこちらでは、敵も見方もわからない死体が転がっていた。
敵部隊が完全に引いたのを確認し再び戻った男たちは、生存者の確認と、敵の身元の確認をしていた。
(酷いな。相打ちみたいな形がほとんどか。)
「おい、こいつ見たことあるぞ?」
「こっちのか?」
見方か?と言う意味だろう。男は顔を見た途端に驚愕する。
「2年前にウチの部隊クビになって行方くらませたやつじゃねぇか。」
「こっちは国際手配の特殊部隊上がりじゃなかったか?」
「ウチは俺ら以外全滅か...」
20人前後の死体たちは、こちらの部隊は自分の班以外全滅。
敵の部隊は人数不明。メンバーは桁違いばかり。
「引こう。これ以上は危険だ。何もせずに。急ごう。」
「あぁ。」
「本部に確認しに戻ろう。」
男たちはその場を後にした。
「司令官!!」
男は怒鳴るが、椅子に腰掛け背を向けている司令官と呼ばれる者はこちらを見る様子がない。
「まぁ落ち着け。君たちだけでも無事にこうして帰ってこれたんだから。」
(白々しい。何ならここで撃ってやりたいぐらいだ。)
「やめとけ。君が撃ったところで、返り討ちになるだろうよ。もし殺せたとしても、ここから逃げれないと思うが?」
怒鳴っていた男は、あからさまな舌打ちをし怒りをあらわにするが、司令官と呼ばれる者、その女は振り向きざまに
「で、何を怒っている?今回の作戦内容についてか?」
笑みを浮かべたままそう答える。
「やはりあなた達は、あの作戦、いや今回のターゲットについて知っていたんですね?」
「だとしたら?」
なおもその女は笑みを浮かべ、楽しそうにこちらを見ている。
「知っていたなら、作戦参加させる者をもっと増やすべきだったんだ。桁違いの奴らに対してあんな人数で成功するわけがない!」
徐々に声が大きくなり、部屋の外から様子をうかがう気配を感じる。
「まぁ、そう怒鳴るな。今回の作戦は見事に成功した。君たちが帰還するという事以外全てな。」
なに?俺達が帰還することは含まれていなかっただと?
「司令、何を…」
「いや、なんだ、この作戦で君たちを含む部隊とターゲットの部隊が相打ち、もしくは行方不明になってくれればこちらとしては有りがたかった。」
「…」
「どうした?顔色が悪いぞ?」
悪いも何も、相打ち…作戦内容自体が、『敵部隊と味方部隊の相打ち』だった?
「すでに君たちは用済みと言うわけだ。政府のえらいさん方は講和、もしくは親和を望んでいる。」
「なっ!!!それでも、他に…」
言いかけた言葉を、司令官と呼ばれる女はさえぎる。
「キミたちでは、向こうの国から見れば脅威となる。排除する事でこちら側の意思表示として今回の作戦が発案された。」
「だから、あんなめちゃくちゃなメンバーだったって?」
講和だの親和の為に死ねと言うのか?狂ってやがる。
「なに、君以外の二人も先ほどこちらで処理したさ。残るは君一人だ。」
そう言いながら、同じ人間とは思えない顔をしていた。
「さて、君はどうする?射殺か、牢獄で何も与えられずに飢えて死ぬか好きな死に方を言ってくれ。最後の頼みぐらい聞いてやるさ。」
2ndと呼ばれた男はそこで隣を歩く幼女につま先を踏まれて無理やり引き戻された…




