たいちゃんが関わった三つの案件 ③
こういうことは、第三者が何かをしたから、あるいは逆に手を拱いたから、という理由で状況が変わるものなのだろうか。
リスさんが、懇切丁寧にゴムべらとボウルの連動について私へ直伝してくれるところで、不謹慎にも私はそんなことを考えてしまった。
「そうです。肘から大きく掬う感じで」
私は、リスさんの指示通りに、ボウルとゴムべらを回し、カスタードクリームと生クリームを混ぜ合わせた。
「来春さん、もううちのクリームマイスターです」
照れ隠しに微笑み返した私の鼻孔に、まだカスタードが温かかったうちにリスさんが入れたコアントローの香りがふんわりと優しく纏わり付いた。
「いい匂いですね」
私は、工場での仕事を終えると、お店へと移動した。
今日はボランティアのない日で、開店からずっと、みっちゃんと弘子さんが並んでコーヒーを飲んでいる。
レジの奥にある、準備のためのカウンターで、二人に、新しいコーヒーを落とした。
二人が見ている外は、冷たい雨だった。
ひと雨ごとに、冬が近づいてきていた。
今日は、今年最後の雨になるかも知れない。枯れた芝生の根に、固くなった土に、雨は浸みていく。
「どうぞ」
私は、熱いコーヒーを二人のカップに注いだ。
「ありがとう。ね、来春さん」
弘子さんが私を見上げた。
「はい」
「……寒くなってきたわね」
「そうですね」
「ね、お正月に私が言ったこと、覚えてる?」
弘子さんが言ったこと……。私は記憶を浚った。
「見切り発車のことでしょうか?」
弘子さんは笑った。
「そう。どうなったかな、と思って」
私は、小さく唸りながら考えた。
「なかなか、難しいですね…………周りがとやかく言っても、結局は、本人同士の気持ち次第だと思うんですけど、…………でも、人の気持ちって色々影響を受ける気もしますし……」
弘子さんは小首を傾げた。真っ直ぐな髪が、斜に流れた。
「本人同士の気持ち?」
「ええ。でも、古賀さんに言ってみるのもいいんじゃないかっていう意見があって……」
「リスちゃんと古賀さんのことじゃないわよ?」
「え?」
「来春さんのことよ!」
「私ですか?」
なぜ、私が出てくるのか全く理解できなかった。
「……来春さん……ここに来てもう一年半経つけど、ずっと隠遁者みたいな顔で、リスちゃんと古賀さんを見てるだけじゃあ、ね」
話に参加していないみっちゃんが、意味ありげに振り返った。
弘子さんは、人生の大先輩である。今時、助言をしてくれる人など、なかなかいない中で、ありがたい存在なことは十分分かっていた。
けれど、私は、見切り発車する人生の状況に、今あるのだろうか……。
今、向き合っていることと言えば、それは穏やかな日常と、好ましい仕事である。
「…………私は、毎日、楽しいです。リスさんに色々教えてもらえて、みっちゃんや弘子さんやさくらさんと過ごせて。宿舎だって居心地抜群です。そうですね……でも、もし見切り発車が必要な時が来たら、…………普段、のんびりしている分、暴走しそうで怖いので、弘子さんにブレーキをかけてもらいたいです」
弘子さんは私の答えに、肩をすくめて見せた。
「来春さんがそう言うんじゃあね…………来年に期待しますか」
隣でみっちゃんが頷くのが、なぜか面白かった。
カランコロン
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
雨の日でも、お昼のかき入れ時はやって来る。
暗い雨雲と雨の中をやってきてくださるお客さんは、ベッカライウグイスにとっては隠れた太陽からの小さな便りである。
お客さんに交じって、近所の方々も来てくださる。
カランコロン
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「あ、よかったあったー」
マダム赤間さんは、パン置き場にバスのように駐車されている、長い食パンを見ると、ほっと肩を下ろした。
リスさんは、慣れたもので、すぐに食パン用の手袋を嵌めると、その一本を持ち上げた。
「こちらでスライスしますか?」
「あ、リスさん、切らないでそのまま一本お願い」
リスさんは、笑顔で頷いた。
「はい。赤間さん、一体何を作られるんですか?」
「今日はね、これから孫が泊まりに来るのよ。だから、大きなハニートーストにバタークリームをたっぷりのせて、それから、パングラタンも作るつもり。パン尽くしでいくわ!」
「美味しそう。私も食べたいです!」
「あら、こっちがバタークリームレシピを教わりたいくらいなのに?」
「赤間さんに作ってもらったのが、食べたいんです」
赤間さんは、笑いながら、袋に入れられた長い食パンを小脇に抱え、帰っていった。
お昼時が過ぎると、しばしお客さんが途絶え、ぽっかりと空っぽになった気持ちになる。
私は、リスさんからコーヒーの注がれたカップをもらい、ショーケース奥のスツールに腰を下ろした。そこへ、駐車場に一台の、見知った車が入ってくるのが見えた。
カランコロン
「いらっしゃいませ」
リスさんはコーヒーサーバーを持ったまま、みっちゃんたちの方から振り返って、その人を迎えた。私も、コーヒーを置くと、立ち上がった。
樹森さんである。
「こんにちは。お待たせしました」
樹森さんは、私たちへ順番に目配せで挨拶をすると、大股でお店を横断し、弘子さんに駆け寄った。床がぎしぎしと音をたてた。
「これじゃ、溢れてるよきっと」
やって来るなり、そう言われ、意味が分からない弘子さんは、とりあえずコーヒーカップを置いて、耳の後ろを指で撫でた。
「何が?」
「サンショウウオの生息地の川」
樹森さんは、それからすぐに、みっちゃんを誘った。
「虎男、今わんさかいるんだけど、ミジンコ、見に来る?」
みっちゃんは、先ほどの弘子さんと同じように肩をすくめ、樹森さんは笑った。
「虎男さ、むかーし、俺たち、ミジンコにほうれん草パウダーをやったら、全滅したの、覚えてる?」
みっちゃんは、頷いた。
「あれさ、思うんだけど」
弘子さんが、話を遮るように言った。
「私、お腹空きすぎて出掛けたくなくなってきたわ」
「あぁ、たいへんだ」
樹森さんは、急いで取りなした。
「分かった。虎男、ミジンコ、欲しかったら届けるよ?」
弘子さんは、立ち上がりながら小さく溜息を吐いた。ミジンコ談義には、既にお腹がいっぱいで、さらには少しうんざりしているのである。
弘子さんは、会計を済ませ、外套を着ると、私たちへ微笑んだ。
「ごちそうさま。寒くなるから、温かくしてね」
それから二人は、遅めのランチへと出掛けていった。
みっちゃんは、そのまま、のんびりとベッカライウグイスで過ごしながら、手元の文庫本を読み始めた。
リスさんと私は、かわるがわるにお昼と休息の時間をとる。
午後三時には、再びお客さんが訪れ出すが、雨の日はそれもまばらである。
カランコロン
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
古賀さんがやって来た。
古賀さんは、リスさんに迎えられ、ご満悦である。
コートの肩に掛かった雨の滴も、手にした紙袋が濡れて破れそうなのも、全く気にならない様子で、リスさんの笑顔に見蕩れている。
両手を後ろに回して、無意識にぱたぱたと上下させるのに、こんなに喜びを感じさせる人はいないだろう。
古賀さんは、ショーケースを挟むのももどかしいのかも知れない。
けれど、いつものように腰を屈めて、リスさんの作ったパンを一つ一つ眺め、顔を上げた。
「今日のお勧めはありますか?」
「今日は、クリームパンがお勧めです。この前、古賀さんに、ブランデー入りのカスタードクリームを美味しいって言っていただいたので、期間限定で、コアントロー入りのカスタードクリームと生クリームを使ってみたんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。週末は家族連れも多いので、普通のバニラに戻すんですけれど」
古賀さんは頷きながら、クリームパンを探した。
「ぜひ食べてみた……かったです……」
ショーケースには、〈クリームパン・コアントローカスタードクリーム〉という表示が残されているだけで、そこは空っぽである。古賀さんは、しょんぼりと言った。
「……売り切れですね」
「ふふふ。大丈夫です」
リスさんは、工場の冷蔵庫から、取り置いておいたクリームパンを出してきた。
「えっ!?とっておいてくれたんですか?」
「ふふふ。常連さんの分です。なんて、もちろんお客さんに聞かれたら、残ってはいなかったんですけど」
古賀さんは、喜びの余りに、シャツの胸元をぎゅっと握りしめた。
「ありがとうございます!」
みっちゃんがくつろぎ、古賀さんがクリームパンとコーヒーを愉しむ、そこにまるで時を見計ったように、ベッカライウグイスの扉が開いた。
カランコロン
「こんにちはー」
たいちゃんである。
「いらっしゃいませ」
リスさんは、いつもと同じようにたいちゃんを迎えたが、私は少し複雑だった。
そして、リスさんが言ったのである。
「たいちゃんが来るかな、と思ってね、特別にコアントロークリームのクリームパンをとっておいたの」
えっ。
私は、工場の冷蔵庫から、にこにこしてそれを持ってくるリスさんを凝視してしまった。
ああ。そっと古賀さんの様子を窺うと、なんと、一抹の悲哀を含んだの表情を浮かべてリスさんの笑顔を見つめているではないか。
私は、決めた。
今日は、もう、たいちゃんの企みを応援する。
そうと決まれば、私のすることは一つだった。
たいちゃんは、みっちゃんと古賀さんの真ん中に陣取った。
大きな嵌め殺しの窓は雨に濡れ、リスさんは、たいちゃんが寒かろうとガスストーブを点火した。炎が出る低い音が店内に伝わるとともに、空調とは違う空気が対流し始める。
リスさんはエアコンを止め、私はたいちゃんにカフェオレを作った。
「たいちゃん、どうぞ。ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
レジ横のカウンターを跳ね上げ、リスさんが戻ってくると、私はそっと打ち明けるように話題を作った。
「リスさん……来年のお年賀なんですけれど」
リスさんは、明るい表情で私を仰ぎ見た。
「ああ、クッキー?」
私は、頷いた。
「羊年ですよね」
「そうそう。可愛い型があるんです。そうだ!ちょっと試作してみようかな」
リスさんは、根っからの職人魂を持っている人である。パンやお菓子を作ることが、大好きなのだ。
「私、見たいです」
私は、そこに付け込んだ。たいちゃんへのアシストのつもりというか、先ほどの古賀さんの哀れさに、なんともいえず応援したい気持ちになったからだった。
たいちゃんが、何気なくこちらを振り返るのが分かった。
「待ってて。バター出して、型を探してみるわね」
リスさんは、きっと、ついでに明日の仕込みも始めるだろう。
たいちゃんの話が終わる頃、私も工場へ入ればいい。
左手にみっちゃん、右手に古賀さん、工場にはリスさんという布陣の中、たいちゃんの作戦は決行された。
「あの……」
たいちゃんが、古賀さんに声を掛けた。
古賀さんは、少し元気はないがさほど驚いた様子もなく、少しだけ目を見開くと、楽譜から顔を上げて横のたいちゃんを見た。
「私、石動って言います」
古賀さんは、手にしていた楽譜をカウンターへ置いた。
「……石動さんですか……たいちゃん、ですよね?」
たいちゃんの目がキラリと光った。
若いとタウリンいっぱいである。
「はい。よくご存じですね」
古賀さんは、目元に皺を寄せて笑顔を見せた。
「『一日パン屋さん』の時に、……ぼく、丁度来ていたんです」
これは話が早い、とばかり、たいちゃんは頷いた。
「ユニコーンTシャツ、着てましたよね」
「はははっ、そうそう」
「あのユニコーン、ちょっと怖かったです」
そこから、風向きは、しばしユニコーンに傾いた。
「あぁ。そうですね。可愛くはないですよね。でも、おじさんが可愛いユニコーンっていうのも……」
可愛くないユニコーンならいいと……?
「妙に、本物を追求してる感じと、綺麗な色合いと、ものすごいユニコーンだな、って思いました」
たいちゃんは、素直な子である。その辺りを古賀さんも感じるのであろう、真面目に、だが温かく受け答えをする。
「……ちょっと、気を付けようかな、そろそろ……」
古賀さんが少しだけ寂しそうな表情になると、たいちゃんが取りなした。
「気を付けなくて、いいと思います。ものすごく個性的ですし、もう古賀さんの代名詞なような気がしますから」
鋭いな。
古賀さんは、フォローしてもらって嬉しそうである。
「……大丈夫でしょうか?」
たいちゃんに、お墨付きを貰おうとしている。
そこはたいちゃん、大きく頷いて保証した。
「だい、じょうぶ、です!」
古賀さんは、ほっと胸をなで下ろした様子である。
だが、ほっとするのもつかの間、たいちゃんの鋭い切り込みが始まった。
「古賀さん……いいんですか?」
古賀さんは、安堵した気持ちから一転、何のことなのか表情に疑念が浮かんだ。少しうろたえている。
「え……何がでしょうか?」
たいちゃんに、敬語である。
「リスさんのことです」
私は、思わず工場の硝子戸を見た。
リスさんは、手を休めず、伸ばされたペストリー生地が機械から出てくるのを待っている。
息を呑んで、古賀さんはたじろいだ。
「どうして……」
たいちゃんが、古賀さんを詰めた。
「分かりやすいです。ものすっごく!そして、リスさんには伝わってません」
「え、そ、そうなの?!」
まさかたいちゃんから、こんなに核心を突いた言葉が出てこようとは、古賀さんは思ってもみなかったと思う。
たいちゃんの可愛らしい顔は、いつも青白い。体も、吹けば飛びそうなくらい細い。どこからどう見てもはっきりものを言うお嬢さんには見えないのである。
そんなたいちゃんからの、まさかのご指摘が、リスさんのことである。
古賀さんは、明らかに動揺していた。
たいちゃんの力強い瞳は、真剣そのものだった。
唇を結んだまま、けれどその先を口にはしなかった。黙ったまま、決然と古賀さんを促しているのである。
古賀さんが、あれこれ迷いながら視線を彷徨わせるのを、たいちゃんは静かに見ている。そのたいちゃんの背から、みっちゃんが古賀さんを見ていた。
古賀さんが、耐えきれずにとうとう口を開いた。
「じ、じゃあ、どうすれば……」
JKに意見を求める指揮者。
世の中、不思議なことだらけなんだな、と思う。
たいちゃんは、そんな古賀さんに、噛み砕いて説いた。
「リスさんが、ぽやんとしていて反応が薄いのは分かります。だから、伝わらないんですよね?でも、原因は他にあると思うんです。いいですか?女性が一人でお店を切り盛りするって、とってもたいへんなことなんです。多分、古賀さんには想像つかないと思います。そういう、リスさんの強さっていうか、頑固さが!問題は、そこですよ?」
「そこ……どうすれば、……いいんですか?」
たいちゃんは、古賀さんからゆっくりと視線を外すと、両手でカフェオレのカップを持ち上げ、こくりと飲んだ。それから、訳知り顔で小さく首を振った。
沈黙が、訪れた。
リスさんが、工場から顔を出した。
「来春さん、見てください」
「あ、はい」
薄く開けられた硝子戸から、明日の仕込みのために使っている、ミキサーの軽い音と振動が漏れてきた。
私は、その場から離れ、工場へ向かった。
これ以降、たいちゃんは、古賀さんの師匠となったのだった。
たいちゃん。
見事な手腕に、私は恐れ入ったが、問題は、そこにとどまらなかった。
さらに私は予期せぬ穴に墜落した気持ちになったのだった。
工場からもどると、もう古賀さんの姿はなかった。
何事もなかったように、たいちゃんが私たちへ言った。
「古賀さん、生徒さんのレッスンがあるから、って、会計を置いて帰られました」
見ると、レジにあるアンティークの銀皿の上には、ぴったりに会計が置かれていた。
私は、古賀さんの無事を思い、何も知らないリスさんは、たいちゃんへお礼を言った。
冬至にはまだ早いのに、時計が午後四時を回ると、もう辺りは暗くなり始める。
リスさんが、カウンターの上の灯りを点した。
私は、みっちゃんやたいちゃんを急かさないように、ゆっくりとした動作で静かにお店の片付けを始めていく。
リスさんは工場へ戻り、再び明日の仕込みを続けた。
雨の日には、大きな嵌め殺しの窓にオーニングは出されていない。
今日、何度窓は雨に洗い流されたことだろう。
大きな葉脈を伝う流れのように、雨粒が透明な表面を斜めに走る。紺色に沈んだ庭は、凍えている。
工場からは、ミキサーの振動が、微かに伝わってきた。
そこへ、あれからずっと黙っていたたいちゃんが、突然口を開いたのだ。
みっちゃんへ向けて。
「私…………、似たような話をする子を知ってるんです……」
たいちゃんは、カップを持ったまま、明らかにみっちゃんを見ていた。
何のことだろう。
私は思わず、ショーケースをから拭きする手を止めた。
話しかけられたことをさして疑問に思わない眼差しで、みっちゃんはたいちゃんの方を向いた。
「水族館に行ったとか、遊園地に行ったとか、そうではなくて……」
みっちゃんが、静かに頷いた。
たいちゃんは、手元のカップへ視線を落とし、ざわざわとした不穏なものを拭っていくように訥々と続けた。
「その子……、部活の後輩で…………小学校の時に担任だった先生が、行方不明になったっていう話をしていて、…………その先生の名前が、蓑先生っていうんです……。その子、自分の本当の名前は違うのに、…………どうしてもヒイラギって呼んで欲しいって。もっと可愛い名前なのに……どうして、って聞いたら、ヒイラギは、たくさんの棘で自分を守れるから、樹木は傷ついた自分を治す力があるから、蓑先生がそう言っていたから、って……」
みっちゃんは、たいちゃんの話を聞いているのか聞いていないのか、頷くこともしなかった。
「…………その子、蓑先生がいなくなる前に、偶然、隣町で会ったって。蓑先生が、普通に商店街で買い物をしていて、『先生、どうして隣町の商店街へ?』って聞いたら、『たんぽぽを探していたら、来てしまったんだ』って。これから、『たんぽぽを見に行く』って。その子、おかしいな、って思ったって言ってました……もうたんぽぽの季節じゃないから…………。それから間もなくして、蓑先生が行方不明になったっていう噂を聞いたらしくて…………それがもう三年も前のことなのに、ずっと気にしているんです。まるで、昨日のことのように、時々、蓑先生の話をするの。話をしていたら、いつか、先生を知っている人に会うかも知れないからって」
店内の気温が下がったのか、ストーブが炎の勢いを増した。
雨は霙に変わり、薄い紺青を染み込ませていった空間の中に、白い礫となって私の喉まで埋めていくようだった。




