第218話「ひかるしるしのかたち」
木の根もとのまんなかには、金色の線でできたしるしのような形がありました。
それは、星に関係する特別なものかもしれません。
次の日の放課後、三人はその形をもっとたしかめようと、大きな木のところへ向かいました。
その日の給食の時間も、あかりちゃんの頭の中には、金色のしるしのことがありました。
白い飾りのようなかけら。
夜空の絵のかけら。
そして、まんなかで光った金色の線。
「いったい、何の形なんだろう」
そう考えていると、時間がいつもよりゆっくり進むみたいに感じます。
やっと放課後になると、三人はすぐに校庭のはしへ向かいました。
夕方の空は、まだ少し明るくて、木の長い影が地面にのびています。
「今日は、まんなかをよく見よう」
ゆうとくんが言いました。
「白いかけらには気をつけてね」
はるとくんがつけ加えます。
「うん」
あかりちゃんは大きくうなずきました。
三人は木のうしろにしゃがみこみ、そっと土をどけていきました。
もう何度も見ている場所なので、どこに白いかけらがあるのか、少しずつわかってきています。
「ここが、白いかざりみたいなところ」
あかりちゃんが言います。
「で、まんなかはこのへん」
ゆうとくんが、慎重に指先で土をよけました。
やがて、茶色い板のようなものが見え、その上に金色の線があらわれました。
昨日よりも、少し広く見えています。
「あっ、線がふえて見える」
はるとくんが声をひそめました。
たしかに、前は一本か二本に見えた線が、今日はもう少しつながって見えます。
まんなかに小さな丸。
そこから、くるんと曲がる線。
さらに、その外側に、短くのびた線もありました。
「太陽っぽいかも」
あかりちゃんが言いました。
「でも、太陽ってもっと、こう、まっすぐぴゅっと出る感じじゃない?」
はるとくんが手で形を作ります。
「これは、くるんとしてるよね」
ゆうとくんも言いました。
三人はしばらく、だまってその形を見つめました。
夕方の光はまだ少し高くて、金色の線はぼんやりしています。
「光が当たるのを待ってみよう」
あかりちゃんが言いました。
三人はそのまま、木の葉のすきまから光が動いてくるのを待ちました。
さわさわ、と葉っぱが鳴ります。
遠くでは、校庭で遊んでいる子たちの声が聞こえました。
そして――
細い夕方の光が、木の根もとのまんなかに、すうっと差しこみました。
きらっ。
「来た!」
ゆうとくんが小さく声をあげます。
金色の線が、今までよりもはっきり光りました。
丸い形のまわりに、くるんと曲がる線。
そして、左右に広がるような短い線。
「見える……!」
あかりちゃんは思わず前のめりになります。
「これ、王かんみたいじゃない?」
はるとくんが言いました。
「王かん?」
「うん。真ん中に丸があって、そのまわりにかざりがある感じ」
あかりちゃんは目をぱちぱちさせました。
たしかに、そう言われると、金色のしるしは“かざり”のようにも見えます。
「でも、星のしるしにも見えるよ」
ゆうとくんが言います。
「真ん中の丸が星で、そのまわりに光があるみたいな」
「じゃあ、星の王さま?」
あかりちゃんが言うと、三人は少しだけ笑ってしまいました。
「それ、ちょっとかっこいいね」
はるとくんが言いました。
でも、笑ったあとで、三人はまたまじめな顔にもどります。
金色のしるしは、ただきれいなだけではありません。
まるで、丸い板の中心で、“ここがいちばん大事”と知らせているみたいでした。
「ねえ」
あかりちゃんが、そっと言いました。
「これ、まんなかにあるんだよね」
「うん」
「じゃあ、このしるしが、この板のいちばん大事な部分なのかも」
ゆうとくんとはるとくんも、うなずきました。
「夜空の絵は、そのまわり」
「白いかざりも、そのまわり」
「で、いちばん中心に、この金色」
三人の中で、ばらばらだったものが、少しずつひとつの形になっていきます。
そのとき、あかりちゃんが、ふと気づきました。
「ねえ、これ……」
「どうしたの?」
はるとくんが聞きます。
「まるい板っていうより、メダルみたいじゃない?」
「メダル?」
ゆうとくんが聞き返しました。
「うん。丸くて、まんなかにきれいなしるしがあって、まわりにかざりがあるから」
三人は、はっとしました。
「たしかに」
はるとくんが言います。
「メダルとか、記念のしるしみたい」
「星のメダル?」
ゆうとくんが言いました。
「そんなの、あるのかな」
「わからない。でも……」
あかりちゃんは土の下の形を見つめます。
「なんだか、“見るための道具”っていうより、“大事にするもの”に見えてきた」
夜空の絵。
白い羽のような飾り。
まんなかの金色のしるし。
それは、たしかに図書室で見た道具にも少し似ています。
けれど、もっと特別で、だれかが大切にしていたものにも思えました。
「じゃあ、なんで木の下にあるんだろう」
ゆうとくんがつぶやきます。
その言葉に、三人はまた考えこみました。
こわれてしまったから、うめたのか。
だれかがかくしたのか。
それとも、何か理由があって、ここに残されたのか。
夕方の光が少しずつ弱くなり、金色の線のきらめきも、ゆっくりうすれていきます。
「今日は、形を覚えよう」
はるとくんが言いました。
「丸い真ん中に、金色のしるし。王かんみたいで、星みたいな形」
「うん」
「忘れないようにしよう」
あかりちゃんは、心の中でその形をなぞりました。
丸。
くるん。
きらり。
まだ全部は見えないけれど、それでもたしかに、まんなかには何か大切なものがあるのです。
三人は土をやさしくもどして、立ち上がりました。
帰り道、あかりちゃんは空を見上げました。
夕方の青い空は、少しずつ夜の色に近づいていきます。
もし、あのかけらが本当に星に関係するものなら。
夜空のどこかに、その答えがあるのかもしれない。
そんな気がしました。
金色のしるしは、太陽というより、王かんや大事な印のように見えてきました。
そのことから三人は、土の下にあるものが、ただの道具ではなく、もっと特別なものかもしれないと考えます。
学校の大きな木の下には、まだ見つかっていない“星のしるし”が、静かに眠っているようです。




