第217話「金色のまんなか」
木の根もとの白いかけらは、ゆるやかな円をえがくように並んでいました。
そのまんなかには、まだ見ぬ金色っぽいかけらもかくれています。
次の日の朝、三人はその“まんなか”をたしかめるため、また早く学校へ来ました。
次の日の朝、あかりちゃんたちは、いつものように校門の前で集まりました。
「今日は、まんなかだね」
あかりちゃんが言うと、ゆうとくんがうなずきます。
「うん。昨日はあまり見られなかったから」
「金色っぽいの、気になるよね」
はるとくんも少し急ぎ足です。
三人は、まだしずかな校庭をまっすぐ大きな木のほうへ向かいました。
朝の空気はひんやりしていて、木の葉の先には小さなしずくが光っています。
木のうしろに回ると、根もとの土は昨日とほとんど同じままでした。
三人はしゃがみこみ、そっと土をどけはじめます。
「白いかけら、ここ」
あかりちゃんが指さしました。
細長い白いかけらが、左右にゆるく曲がって並んでいます。
やっぱり、まるいふちにそった飾りみたいです。
「じゃあ、まんなかを」
ゆうとくんが言いました。
三人は、白いかけらにふれないように気をつけながら、中心の土をほんの少しずつよけました。
朝の土は少ししめっていて、指にひんやりつきます。
「あっ」
最初に声をあげたのは、はるとくんでした。
昨日見えた金色っぽい線が、また少しだけのぞいたのです。
こんどは前より、もう少しはっきり見えます。
「ほんとだ……」
あかりちゃんが息をひそめました。
それは、ただの黄色ではありませんでした。
茶色い板の上に、細い金色の線がくるんと曲がっているように見えます。
まるで、何かの形のはしっこだけが見えているみたいです。
「もようかな」
あかりちゃんが言いました。
「文字みたいにも見える」
はるとくんが首をかしげます。
「もう少し見てみよう」
ゆうとくんが、そっと土をどけました。
三人で少しずつ、少しずつ土をよけていくと、金色の線は一本ではないとわかってきました。
くるん。
すうっ。
と、細い線が二本、三本とつながっています。
「これ、星じゃないね」
あかりちゃんが言いました。
「うん。羽でもない」
はるとくんも言います。
「何かのしるしだ」
ゆうとくんは真剣な顔で見つめています。
そのとき、木の葉のあいだから朝日がさしこんできました。
細い光が、ちょうど中心の金色の線にふれます。
すると――
きらっ。
「わっ!」
三人は同時に声を上げました。
金色の線が、朝の光を受けて一瞬だけ明るく光ったのです。
白いかけらの線とはちがう、あたたかい色の光でした。
「見えた!」
「うん!」
「今、はっきり光った!」
三人は、さらに顔を近づけます。
光った場所をよく見ると、金色の線は、丸い板のまんなかで、何かひとつの形を作っているようでした。
でも、まだ全部は見えていません。
「これ……目みたいじゃない?」
あかりちゃんが言いました。
「目?」
「うん。金色の丸があって、そのまわりに線がある感じ」
はるとくんは少し考えてから、はっとした顔をしました。
「太陽じゃない?」
「太陽?」
あかりちゃんとゆうとくんが同時に聞き返します。
「ほら、絵本とかで見る、真ん中に丸があって、まわりに線が出てる太陽」
はるとくんが指で空中に形をえがきました。
「あ……」
あかりちゃんの目が大きくなります。
たしかに、金色の線は、太陽の光みたいにも見えました。
でも、夜空の絵と太陽がいっしょにあるのは、少しふしぎです。
「でも、月と星の絵だったよね」
ゆうとくんが言いました。
「じゃあ、太陽じゃないのかな」
あかりちゃんが首をかしげます。
三人はしばらく、土の中の金色の線をじっと見つめました。
すると、ゆうとくんが小さな声で言いました。
「太陽じゃなくて……星のしるしかも」
「星のしるし?」
「うん。星そのものじゃなくて、“星に関係ある大事な印”みたいな」
あかりちゃんには、まだはっきりとはわかりません。
でも、真ん中に大事な印があって、そのまわりに夜空や羽の飾りがある――そう考えると、なんだかとても特別なものに思えてきました。
「これ、ただの絵じゃないのかも」
あかりちゃんが言いました。
「うん」
はるとくんがうなずきます。
「星を見るためのものとか、星を表すしるしとか」
「図書室で見た、星座早見ばんみたいな道具?」
ゆうとくんが言いました。
三人は顔を見合わせました。
丸い形。
夜空。
星座みたいな絵。
そして、真ん中の大事なしるし。
「ほんとにそうかもしれない」
あかりちゃんの胸が、どきどきしてきます。
そのとき、遠くから子どもたちの話し声が聞こえました。
登校してくる子が、だんだんふえてきたのです。
「もうすぐみんな来る」
はるとくんが言いました。
「今日は、ここまでだね」
ゆうとくんが名残おしそうに土の中を見ます。
三人は、見えている形を忘れないように、しっかり見つめました。
左右に広がる白い飾り。
その外側につながる夜空のかけら。
そして、まんなかの金色のしるし。
あかりちゃんは心の中で、その形をそっとなぞりました。
まだ土の下にかくれているけれど、少しずつ、ひとつの特別なものが見えてきています。
「つぎは、金色のところをもっと広く見よう」
あかりちゃんが言いました。
「うん」
「どんな形か、ちゃんと知りたい」
三人は、やさしく土をもどして立ち上がりました。
教室へ向かう途中、あかりちゃんはふり返ります。
大きな木の根もとは、もうただの土のようにしか見えません。
でもその下には、朝の光を待つ金色のひみつが、しずかにねむっているのでした。
木の根もとのまんなかには、金色の線でできたしるしのような形がありました。
それは太陽のようにも、大事な印のようにも見えます。
三人が見つけているものは、ただの絵ではなく、星に関係する特別なものなのかもしれません。




