第216話「木の下のまるいならび」
図書室で調べた三人は、見つけたかけらが、星座の絵のついた丸いものの一部かもしれないと考えました。
もしそうなら、木の下にある白いかけらも、丸くならんでいるのかもしれません。
その日の放課後、三人はもう一度、大きな木のところへ向かいました。
給食の時間が終わってからも、あかりちゃんの頭の中には、図書室で見た本のことが残っていました。
羽のある馬、ペガサス座。
夜空の絵。
そして、丸い板のような道具。
「ほんとうに、丸い形なのかな……」
そうつぶやくたびに、木の下の白いかけらが思い浮かびます。
そして放課後。
三人はランドセルを置いて、すぐに校庭のはしへ向かいました。
「今日は、ならび方をよく見よう」
ゆうとくんが言います。
「白いかけらが、丸くなってるかどうかだね」
はるとくんも真剣な顔です。
あかりちゃんは大きくうなずきました。
「うん。もし丸くならんでたら、図書室で見たこととつながるかも」
三人は大きな木のうしろへ回りました。
木の根もとのくぼみは、朝より少し暗く見えます。
夕方の光が枝のあいだからさしこんで、地面の上に長い影をつくっていました。
「ここだ」
あかりちゃんがしゃがみこみます。
三人でそっと土をどけると、白いかけらがまた少しずつ見えてきました。
細長くて、白くて、つるつるしたかけらたち。
それぞれに小さな穴があり、同じ向きにそろって並んでいます。
「やっぱり、羽みたい」
あかりちゃんが言いました。
「うん。でも今日は、形をもっと広く見よう」
はるとくんが少し後ろへ下がります。
三人は、かけらを近くで見るだけでなく、少しはなれた場所からも見てみました。
右から。
左から。
木の幹の近くから。
少ししゃがんだ高さから。
「あっ」
最初に気づいたのは、ゆうとくんでした。
「どうしたの?」
あかりちゃんが聞きます。
「これ、まっすぐじゃない」
ゆうとくんは、白いかけらのならびを指でたどりました。
「少しずつ曲がってる」
三人でよく見ると、たしかにそうでした。
白いかけらは、ただ横に広がっているのではなく、ゆるやかに弧をえがくように並んでいたのです。
「ほんとだ……」
あかりちゃんが目を丸くします。
「こっちも」
はるとくんが反対側を見ました。
「反対のほうも、同じように曲がってる」
木の根もとの左右に見える白いかけらは、まるで大きな丸のふちにそって並んでいるみたいでした。
「やっぱり丸いんだ」
あかりちゃんが、うれしそうに言いました。
「うん。ぜんぶでひとつの円になってるのかも」
ゆうとくんが答えます。
三人は胸をどきどきさせながら、さらに土を少しだけどけてみました。
白いかけらの外側をたどるように見ていくと、ところどころに小さなすきまがあります。
そこにはまだ何も見えていません。
「ここ、ぬけてる」
はるとくんが言いました。
「ほんとだ。かけらがない場所だ」
あかりちゃんが答えます。
「じゃあ、木の下だけで全部じゃないのかも」
ゆうとくんが静かに言いました。
「なくなってる部分があるんだ」
三人は、その言葉の意味を考えました。
月のかけらは水道の近く。
青い夜空のかけらは植えこみの下。
そして、白い羽のようなかけらは木の根もと。
もし全部がひとつの丸い板だったなら、ばらばらになって別の場所へ動いていてもおかしくありません。
「じゃあ、まだ見つかってないかけらがあるんだね」
あかりちゃんが言います。
「うん。しかも、丸のまんなかの部分も」
はるとくんが木の根もとの中心を見つめました。
たしかに、今見えているのは、丸のふちのようなならびだけです。
まんなかに何が描かれていたのかは、まだわかりません。
そのとき、夕方の光が少しだけ強くさしこみました。
白いかけらの細い線が、いっせいにきらっと光ります。
「わっ……」
三人は思わず息をのみました。
光った線は、ただの羽には見えませんでした。
まるいふちにそって、やわらかな飾りが広がっているようにも見えます。
「羽っていうより、かざりみたい」
あかりちゃんがつぶやきました。
「たしかに」
はるとくんがうなずきます。
「円のまわりについてる、ふわっとしたもようみたい」
「じゃあ、真ん中に本当の絵があるのかな」
ゆうとくんが言いました。
三人は木の根もとの中心を見ました。
そこはまだ土におおわれていて、何も見えません。
「少しだけ、まんなかも見てみようか」
あかりちゃんが言いました。
三人はうなずいて、真ん中あたりの土をそっと指でどけました。
白いかけらをこわさないように、ほんの少しだけ。
すると――
「あっ!」
土の中から、今度は白でも青でもない色が見えました。
「茶色……?」
はるとくんが顔を近づけます。
「いや、金色っぽい」
ゆうとくんが小さな声で言いました。
そこには、うすく光るような黄色い線が、ほんの少しだけ見えていました。
土にまみれているのに、夕方の光を受けると、かすかに明るく見えます。
「また別のかけらだ」
あかりちゃんが言いました。
「真ん中の部分かも」
はるとくんが続けます。
三人は、もう少しだけ見たくなりました。
でも、ここで急いで土をどけるのは危ない気もします。
「今日は、この場所だけ覚えておこう」
ゆうとくんが言いました。
「白いかけらのならびと、真ん中の金色っぽいところ」
「うん。明るいときにもっとよく見たほうがいいかも」
はるとくんも言います。
あかりちゃんは少し名残おしそうでしたが、うなずきました。
「わかった。つぎは朝かな」
三人は、どけた土をやさしくもどしました。
白いかけらも、金色っぽい線も、少しずつ土の下にかくれていきます。
でも、その前とはちがいました。
今はもう、そこに何があるのか、少しずつ見えてきています。
「丸い板で、まわりに白いかざりがあって、夜空の絵があって……」
あかりちゃんが歩きながら言いました。
「まんなかに、まだ見つかってない大事な絵がある」
ゆうとくんが答えます。
「それが何か、だね」
はるとくんがしずかに言いました。
三人は校門のほうへ向かいながら、何度もふり返りました。
大きな木は夕方の光の中で、いつもと同じように立っています。
けれどその足もとには、まるい夜空のひみつが、まだ土の下でしずかに眠っているのでした。
白いかけらのならびは、まっすぐではなく、ゆるやかな円をえがいていました。
そのことから、三人は、見つけたかけらがやはり丸い板の一部だと考えます。
そして木の根もとの中心には、まだ見ぬ金色っぽいかけらがかくれていました。




