第215話「星の本をさがして」
見つけたかけらは、夜空や星座の絵につながっているのかもしれません。
もしそうなら、どんな星の名前なのか、調べてみたくなります。
次の日の昼休み、三人は図書室へ行くことにしました。
次の日の昼休み、あかりちゃんたちは給食を食べ終わると、すぐに顔を見合わせました。
「行こうか」
あかりちゃんが言うと、ゆうとくんとはるとくんがうなずきます。
「今日は図書室だね」
「星の本、あるかな」
三人はろうかを歩いて、図書室へ向かいました。
窓の外は明るくて、校庭では元気な声が聞こえています。
でも、図書室の近くまで来ると、まわりはだんだんしずかになりました。
図書室のドアを開けると、紙のにおいと、やわらかな光が迎えてくれます。
本棚には、物語の本、図鑑、むかし話の本が、きれいに並んでいました。
「こんにちは」
あかりちゃんが小さな声で言うと、図書の先生がにっこり笑います。
「いらっしゃい。今日は何をさがすの?」
「星の本です」
ゆうとくんが答えました。
「星座の本でもいいです」
はるとくんがつけたします。
「まあ、いいわね」
図書の先生はやさしくうなずいて、奥の本棚を指さしました。
「図鑑のコーナーに、空や宇宙の本があるわよ」
「ありがとうございます」
三人は小声でお礼を言って、本棚のほうへ向かいました。
図鑑のコーナーには、青や黒の表紙の本がたくさん並んでいました。
月の本。
太陽の本。
惑星の本。
そして、星座の本。
「あった!」
あかりちゃんが目を輝かせます。
ゆうとくんが、少し大きめの星座の本を取りました。
表紙には、夜空に星がきらきら光っていて、その上に線でつないだ星座の絵がかかれています。
「これ、見てみよう」
三人は近くの机にすわって、本をそっと開きました。
最初のページには、空いっぱいの星の写真。
その次には、季節ごとの星座の紹介。
白い線でつながれた星の形の横に、いろいろな絵がのっています。
「わあ……」
あかりちゃんは思わず声をもらしました。
「きれいだね」
はるとくんも、ページをのぞきこみます。
しし座。
さそり座。
はくちょう座。
そして、ページをめくっていくと――
「あっ」
ゆうとくんが指を止めました。
そこには、大きな羽のある馬の絵がありました。
星を線でつないだ形の横に、白い羽を広げた馬が、空をかけるようにかかれています。
「これだ!」
あかりちゃんが小さく声を上げます。
「ペガサス座」
はるとくんが、ページの文字を読みました。
「やっぱりあった」
三人は顔を見合わせます。
昨日、教室で話していた“羽のある馬”が、本の中にほんとうにいたのです。
「見て、羽」
あかりちゃんが絵を指さしました。
白く広がった羽。
夜空の中を飛ぶ姿。
青いかけらと、白いかけらと、月のような絵を思い出すと、どこか似ています。
「でも」
ゆうとくんが少し考える顔で言いました。
「月はこの絵にないね」
「ほんとだ」
あかりちゃんもページを見つめました。
「空と星と馬はあるけど、月はない」
「じゃあ、ペガサスだけじゃないのかも」
はるとくんが言います。
「別の絵もまざってるのかな」
三人はもう少し本をめくってみました。
すると、別のページに、細い月が描かれた夜空の絵がありました。
そこには、星座の名前だけでなく、夜空の背景の説明もあります。
「ほら」
ゆうとくんがそのページを指さしました。
「星座の絵の後ろに、月を描くこともあるんだ」
「じゃあ、かけらの絵は、星座そのものじゃなくて……」
あかりちゃんがゆっくり言います。
「星座の絵がついた、何か」
はるとくんが続けました。
「何か?」
「うん。たとえば、看板とか、かざりとか」
三人は、しばらく考えこみました。
月の絵。
星のある青い空。
羽のような白いかけら。
それらが全部そろうなら、たしかに「夜空の絵が描かれた何か」に思えます。
「ねえ」
あかりちゃんが、本の端をおさえながら言いました。
「学校に、昔、星の絵があったのかな」
「理科の掲示とか?」
はるとくんが言います。
「でも、木の下にうまってたんだよ」
ゆうとくんが首をかしげました。
「ふつうにかざってたものなら、なんであんなところにあるんだろう」
たしかに、そのとおりです。
だれかがなくしたのか。
わざと隠したのか。
それとも、ずっと前に埋もれてしまったのか。
三人の前で、なぞは少しだけ形を見せて、またわからなくなりました。
そのとき、あかりちゃんの目に、ページのすみにある小さな絵がとまりました。
「見て」
二人がのぞきこみます。
そこには、星座早見ばんの絵がありました。
丸い板に、夜空の星が描かれていて、くるくる回して使う道具です。
「これ……」
あかりちゃんがつぶやきました。
「丸い」
「ほんとだ」
はるとくんが目を丸くします。
「かけらも、もしかしたら……」
ゆうとくんが、手で丸い形を作りました。
「もともと丸いものの一部なのかも」
三人は、はっとしました。
月のかけらも、青い空のかけらも、白い羽のかけらも、ぜんぶひとつの丸い板の上に描かれていた――
そんな想像が、急に本物らしく思えてきたのです。
「だから、かけらなんだ」
あかりちゃんが言いました。
「われたのかな」
「それとも、ばらばらになっちゃったのかも」
三人は本と顔を見比べながら、しばらく胸をどきどきさせていました。
そのとき、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴りました。
「あっ、もう時間だ」
「早いなあ」
「でも、少しわかったね」
本を閉じながら、ゆうとくんが言いました。
「ぼく、ペガサスは関係あると思う」
「うん、わたしも」
あかりちゃんは大きくうなずきました。
「それに、丸い板かもしれない」
「じゃあ、つぎは」
はるとくんが静かに言います。
「木の下のかけらが、丸くならぶかどうか見てみよう」
三人は本をもとの棚へ返して、教室へ向かいました。
ろうかを歩きながら、あかりちゃんは窓の外の空を見ました。
昼の空には、まだ星は見えません。
けれど、夜になれば、そのどこかにペガサス座も出てくるのかもしれません。
もし木の下にねむっているかけらが、本当に空の物語の一部なら。
その続きを見つけるのは、なんだか夜空のひみつをひろうことに似ている気がしました。
図書室で調べてみると、羽のある馬の星座「ペガサス座」が見つかりました。
けれど、見つけたかけらは、ただの星座の絵ではなく、何か丸いものに描かれていたのかもしれません。
三人のひみつは、少しずつ“星の道具”のような形を見せはじめています。




